第34話 魂の売買

 目の前で行われる光景、それは闇のオークションだった。

ベルギオの言っていた通りの魂の売買が行われていたのだ。

「あれが、魂?」

「そうだ、魂だ。我々悪魔は人間と同じように最初は一つの魂を持って生まれてくるのだ。その後、魂を増やすことによって強力な力を得られるのだ」

「ベルギオも?」

「ああ、そうだ。魂を増やす方法はいくつかあるが、一番手っ取り早いのは奪うことだろう。魂を相手から奪えば簡単に増える」

「奪われた相手はどうなるんだ・・・」

「死ぬ、だろうな。魂が一つだと確実に死ぬ。複数あれば別だが」

「・・・そうなんだ。それ以外はないのか。その・・・奪うというの以外で」

 俺は何を焦っているのだろう。なぜ別の方法、『奪う』以外はないかとベルギオに問い詰めているのだろう。

どうしてネビュラが思い浮かんだのだろう。

「契約だ。契約すればいい。あの時のように。人間と悪魔が契約して願いを叶えて代償となる魂をいただくのだ」

「た、魂を奪うのか?」

「奪うのではない。貰うのだ」

「一緒じゃないか」

「人間の私欲を満たしたのだ。その見返りを何らかの形で回収するだけだ。代償は魂となる価値に成り得るのだ」

「例えば?」

「人間の体の一部、それを失うこともあるだろう。そうだな、例えば?例えば歌を歌う女の声を貰うのだ。ライバルを蹴落としてでも舞台で歌いたいという強欲な願いを叶えれば俺はきっとその女の歌声を貰うだろう。奪うだろう」

「やっぱり奪うのか」

「人間だって何らかの形で利益を得ているのだ。悪魔に頼ってでも叶える願いだ。

それ相応の代償として奪われなければ不公平だろう?まっとうに生きている人間が」

「それは・・・確かに。普通の人間は悪魔なんかに頼らないもんなぁ」

「ふっ」

 ベルギオは俺を見て、笑っていた。

「なんだよ」

「いいや?思い出しただけだ。代償を奪った時の感触を」

「一体何の話をしているんだ」

「次は、どうやら少しは盛り上がりそうなようだ」

 1階で行われている闇のオークション会場では一つの新たな魂が競りにかけられていた。

「あの魂は、どうやら今までの魂よりかは価値が高いようだ」

 ベルギオは退屈そうに足を組みなおしていた。

「あ~らら?良いものばかり見すぎてどれもパッとしたものがなかったわねぇ~。

まぁ、それもそうよね~。、にあるんだもの」

 隣の席の女性の悪魔はあおいでいた扇子を勢いよく閉じて口元に当てていった。

「それじゃ、私はそろそろ帰るわね~?黒曜の大悪魔様、またね~?」

 ベルギオは何も反応をしなかったが、気を悪くした様子もなく女性の悪魔はその場から退場していった。


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