第28話 昔の様に
敵だらけの宴。
周囲に味方と呼べるものはいない。
ガロットに言われるがままに渋々レオを連れてこの最悪な宴に参加した。
しかも、この世で最も大嫌いな奴が今目の前にいる事実に苛立ちと殺意しか沸かなかった。
だが、それではいけないのだろう。
今、怒りのままに奴に飛び掛かればレオが危険に晒されることは確実だ。
優先すべきはレオとともに何事もなく宴を過ごすこと。
レオを守ることだけを考えるべきだ。
奴がいようと余計な真似をしてはいけない。
レオから離れないようにしなければ。
「レオ、大丈夫か?こんな危険な所に連れ出してしまってすまない。だが、必ず守る。だから、安心してくれ」
「ネビュラ?俺なら、平気だよ。それよりもネビュラの方こそ大丈夫か?」
「私、か?」
「だって、ほら?ネビュラ、緊張しているじゃないか」
――私が緊張している?
「思っていたより普通のパーティって感じ。ただ、人間じゃないってだけで。なぁ、ネビュラはどうしてあの・・・悪魔のことが苦手なんだ?」
「ベルギオのことか」
「うん。いいたくなければいわないでいいよ。ずっと敵意むき出しで憎んでいるみたいだったからさ。気になって」
「やはり覚えてないのか?レオは、ベルギオのこと」
「ベルギオのこと?俺、あいつに会ったことあるのか?今日が初めてだったと思うけれど」
「いいや、初めてではない。少なくとも2度目」
「1度目っていつ」
「1度目、その時に私はベルギオを憎悪し必ず殺すと私自身の命に誓った」
「俺、ベルギオと何かあったのか?」
「話せば長くなる」
「どうせやることもないんだし、あそこのバルコニーに行かないか?話したくないなら、無理しないでいいし。ただ、夜風に当たりたい」
「わかった。何か食事をとっていこう。せっかくの宴なのだから、何もないテーブルでは怪しまれてしまう」
「そうだな。あれって、人間も食べられるのか?」
「あのあたりの果物は人間の世界で見たことがある。私がとるもの以外は食べてはいけない。恐らく人間が食べられる代物ではない」
「あ、あの辺の果物か。あれなら、俺も知っている。林檎にバナナ・・・というかなんで果物なんてあるんだ?ここって悪魔しかいないんじゃないのか?」
「悪魔以外にも稀に人間も住んでいる。本当に稀だ」
「え?!そうなのか」
「人間といっても、まともな人間ではないだろう。なにせ、悪魔とかかわりがあるのだから」
「確かに、俺もまともな人間ではないしなぁ」
「いや?!あの、今のはそういう意味ではない!!決して違う!!レオは違う・・・違うんだ。誤解だ、その」
「ネビュラ、声大きいよ。しーっ」
「あ、すまない」
「ぷっ・・・あはは」
「レオ?」
「ネビュラの意外な一面を見た気がする」
「そう、か?」
「うん、いつも何か張りつめているみたいだったから。少しは肩の力を抜いてみるのもいいよ」
「そうだな。レオといると落ち着く」
「それはよかった」
ガロットにまた貸しを作ってしまったな。
宴は反対していたが、来てよかったかもしれない。
レオと昔の様に話せて嬉しかった。
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