第26話 悪夢の宴

壁際の人ごみの少ない場所に逃げるようにネビュラに手を引かれていった。

宴で目立ってはいけない。

それだけは互いに理解していた。

ネビュラは俺の手を強く握って放してくれない。

無駄な抵抗はせずに、連れて行かれるままについていった。

壁の花を決め込んで宴の様子を窺う。

心臓はバクバクとして落ち着かなかった。


「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます」


両手を広げて注目を集めた悪魔がいた。

皆はその悪魔に視線を向けた。

ざわついていた会場もその悪魔の言葉によってぴしゃりと静まった。


「さぁ、今宵は特別なゲスト様も来場されました。ご紹介致します。我らが黒曜族の頂点に立つ御方!!黒曜の大悪魔様です!!」


次に注目を集めたのは、紹介された悪魔だった。

他の悪魔たちは雰囲気が違う気がした。

その隣にいる悪魔も。

彼らは黙って席についていた。


「あれが、黒曜の大悪魔」

「・・・っ!!ベルギオ」


声を押し殺してはいるものの殺気だった様子でネビュラが怒りを露わにしていた。

これほど憎悪を向ける相手。

以前も同じく名前を聞いただけで凄まじかった。

どうにか俺が治めなければ。

ここには頼れるガロットもいないのだから。


「ネビュラ、今は様子を見よう」

「すまない、レオ。冷静さを失っていたようだ」


手を握りつぶされそうな痛みに耐えながら、ネビュラを諫めれば大人しく怒りを収めてくれた。


「黒曜の大悪魔様、何か一言ご挨拶頂ければ・・・あの」


主催者らしい悪魔は黒曜の大悪魔ベルギオが何も言わずに座っていることに動揺しながらおずおずと話しかけていた。

皆は黒曜の大悪魔ベルギオが話すのを待った。

だが、黒曜の大悪魔ベルギオは一向に話す気配はなかった。

少しずつざわざわとざわつきが戻ってきたころだった。

その隣に座っていた悪魔が口を開いたのだ。


「挨拶、ですか。それならばすでにすんでいるでしょう?主催者である貴方自身がしていたではありませんか。黒曜の大悪魔様がわざわざ挨拶するまでもない。違いますか?」

「生贄の大悪魔様・・・そ、そうですよね。さぁ、皆さま黒曜族の宴を楽しみましょう!」


何とも言えぬ空気の中で黒曜族の宴が始まった。


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