第24話 退屈な宴

黒曜族の宴の招待状とともに、会場の場所へとたどり着いた。

ロノには花の世話をするように命じて置いてきた。

いつもの俺ならば絶対にこのような小さな宴にはいかないだろう。

だが今回は、生贄の大悪魔ヘリオロとともに小規模な宴に参加していた。

恐らく久々に興が乗っているのであろう。

とある出来事がきっかけで浮足立っているのかもしれない。

退屈な世界を一変させるとある存在が再びこの地に舞い戻ってきたのだから。


「本当に小さな会場ですね。潰してしまいましょうか?」


ヘリオロは宴の会場を一蹴するように鼻で笑っていた。


「まだ始まってすらいない。そう急くな」

「くっくっく。それもそうですね。黒曜の大悪魔様がそうおっしゃるのであれば私めも辛抱致しましょう」


ヘリオロのいう通り、今まで参加した中でもかなり小規模の宴であった。

同族の黒曜族たちは此方に気づくなりざわざわと次々に血相を変えていた。

どうして大悪魔が参加しているんだ、と目が訴えているものから怯えた眼差しのもの。

それら全てを横目で流した。

やはり、大した宴にはならなそうだ。

退屈な宴になりそうだと周囲の光景を見ながら思った。


「お、お待ちしておりました。黒曜の大悪魔様!!」


緊張しきった様子で行く手を遮った悪魔は深々と頭を下げてきた。

それを気にぴしゃりとざわつきが静まった。

目の前の悪魔を見下ろしながら次の言葉を待った。


「貴方がこの宴の主催者ですね?ええと、名は何でしたか」


ヘリオロは懐から招待状を取り出してペシペシと紙をぞんざいに扱いながら言った。

目の前の悪魔はしどろもどろしながら慌てて答えた。


「あ、はい。この宴の主催者であるジューグと申します。黒曜の大悪魔様、生贄の大悪魔様。以後、お見知りおきを!!」

「くっくっく。挨拶はもういいでしょう。対等な存在ではないのですから覚える必要もないでしょう。それで?いつまで私と黒曜の大悪魔様を立たせておくつもりですか?」

「こ、こちらへどうぞ!!」


落ち着きなく主催者であるジューグは席を案内した。

宴の中心の特等席だ。

テーブルには食事とワインが並んでいる。

ヘリオロが空のワインに注がれたものを飲んだ。

顔を顰めて首を振りながら言った。


「退屈な宴だ」

「味も貧相、低級な宴ですね。どうします?潰してしまいますか?」

「わざわざ招待状まで送ってきたんだ。少しくらいは楽しむさ」

「この中にどれだけ貴方様に楯突こうとする愚か者がいることやら。くっくっく、それを探すのも一興、ということですか?」

「今なら大悪魔になれる可能性があるからな。退屈を紛らわせてくれるのならばそれに越したことはないさ」

「大悪魔、ですか。くっくっく。それでは、私めもこれでも生贄の大悪魔としての名を持つもの。少しは緊張感をもっておかなければならないようですね。あの主催者のように」

「あれでよく主催者が務まるものだ」

「確かに、あんなに怯えきった主催者の悪魔風情が大悪魔を招待して宴を開いているんですからさぞ楽しいものでなければならないというのに、今の所滅びの未来しか用意されてませんね」


ヘリオロはもう一口ワインを飲んで、笑みを浮かべた。

味は最悪だ。

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