第23話 宴の準備
近々開催される小さな宴の主催者、ジューグははりきっていた。
「さぁさぁ、皆さんしっかりと働きなさい」
同族の黒曜族へと招待状を送り終えている。
さすがに全員に配るのは無理だが、それでも参加者が多ければ多いほどいい。
「黒曜の大悪魔様がお越しになるかもしれないんです、今回は失敗なんて許されませんよ」
そう、黒曜族のトップ。
黒曜の大悪魔様が来賓してくだされば、私の名がこの魔界に広まる。
そうすれば、もっと有名になれる。
美味しい話が舞い込んでくるかもしれない。
従業員の悪魔たちも、その言葉を聞いていつも以上にきびきびと動いていた。
◆
「おや、こんなところにいらしたのですね。黒曜の大悪魔様」
「あれー、珍しい悪魔がきたよー。ベルギオー?」
ロノはベルギオの元へとかけつけていった。
「くっくっく、お久しぶりですね。生贄の大悪魔へリオロです。こちらをお渡ししにきました」
「なにそれ、紙きれ?」
「招待状ですよ。かなり安っぽいものですがね」
「招待状?なんのー?」
ロノはベルギオの代わりにヘリオロと会話をした。
ベルギオは特に興味がないのか、何も話さずに分厚い本を読み続けていた。
「黒曜族の宴ですよ、少年。君がいけば間違いなく殺されるでしょうがね、くっくっく」
「うわー、行きたくないー」
「かなり小規模なものですがね。こんなものを黒曜の大悪魔様に渡すだなんて無礼極まりないと思いませんか?」
「貴様のことだ。わざわざそれを持ってきた、ということは何か理由があるのだろう?」
ベルギオは読んでいた本を閉じて、ヘリオロへと視線を移した。
「最近、貴方様に対してのデモ活動をしている集団があるとの噂を聞きつけましてね。どうですか?たまにはご参加してみませんか?こういった小規模な貧相な宴に」
「だめだよ、ベルギオ」
「少年が心配するのもわかりますよ。こんな宴に参加したら、黒曜の大悪魔様の名に傷がつくかもしれませんからね」
「うーん・・・それもあるけどー、ねー。ベルギオ、いっちゃだめ!ね、わかった?」
ロノはベルギオを必死に止めていた。
「そうだな、貴様の言う通りそういった集団があるのかもしれない」
「私が潰してきてもいいですよ?」
「いや、その必要はない。招待状をよこせ」
「くっくっく、これは面白いものが見れそうですね」
「貴様は大人しく見ていろ」
「くっくっくっく!では、特等席で拝見させていただきますね」
「えー、ベルギオいくの?!だめだっていっているのに!」
ロノは、ベルギオの足にからみついて、行かないように止めていた。
「少年、あまり黒曜の大悪魔様の邪魔をされては捨てられてしまいますよ」
「・・・ベルギオはそんなことしないもん」
ふてくされたようにロノは言った。
「ロノ、手を離せ」
「・・・やだ、おいていかないで」
「ロノ、頼みがある」
「え?」
ベルギオは膝をついて、足にしがみつくロノの頭に手を置いていった。
「花の世話だ。俺のお気に入りの場所だからな。お前にしか頼めないものだ」
「ほんと・・・!わかった、まっかせてよ!!」
ロノは手を離して、嬉しそうにはねまわっていた。
「いきましょうか。黒曜の大悪魔様。ですが、意外でしたね。少年にあんなことをいうだなんて。他の同族が聞いたら妬きますよ」
「あのまま引きずって歩くのも面倒だったからな。それよりも、退屈な宴でなければいいが」
「くっくっく、さぁてどうでしょうかねえ?もしそうでしたら、潰してしまえばいいんです」
ヘリオロはこれから何が起こるのか楽しみで仕方がなかった。
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