第2章 黒曜族の宴

第21話 魔界の番人の提案

忠魔の大悪魔ガビがこの屋敷に現れた騒動以来数日が過ぎていた。

特に誰かが襲撃ををしてくることはなかった。

今日もガロットがこの屋敷にやってきた。


「よぉー、辛気くせー顔をしてどうしたよ」


部屋の入口の前で、手をぶらぶらとふって入ってきた。


「・・・ガロットか。レオはどうした?」

「入口の前で待っててもらってるぜ。何かあれば、この部屋にすぐ入ってくるさ。まっ、お前さんも少しは落ち着いたみてーだな。だが、これからどうすんだ?火を放ったっていう悪魔といい、奴んとこの大悪魔といい。これから先、必ずまたあの人間が狙われんのは明白だぜ」

「絶対にそれはさせない」

「あのなぁ・・・」


力強くネビュラは言うが、ガロットは呆れた様にいった。


「それができてねーから、今こんなことになってんだろーが。まずは、何か対策をしねーといけねー。それが、今のお前にはあるってことか?」

「・・・・・・」

「その様子じゃ何もねーんだろ?お前さんには頼りになる味方もいねえ。むしろ、敵だらけじゃねーか」

「どうすればいい、私は」

「そうだなー、まずはこの屋敷の外の世界をあの人間にも知っておいてもらった方がいいと思うぜ。あとは欲を言うなら、仲間探し・・・まっ、それは無理難題だろうが」

「屋敷の外だと?危険すぎる」


ネビュラはガロットの出した提案を否定した。


「そういうだろうと思ったぜ。ほれ!」

「っ?なんだこれは・・・指輪か」


ガロットが何かを投げて渡す。

ネビュラは受け取った赤い宝石の入った指輪を不思議そうに眺めた。


「人間だと感知されない指輪だ。そいつをレオに渡して一緒にいってきな。もちろん、お前さんも不死の大悪魔様だとばれにくい恰好でな。ただでさえ、敵が多いお前さんだが、一度ここへいってみるのもいいんじゃねーかと思ってな」


ガロットがそう言って、私へ渡してきたのは一枚の紙きれだった。


「黒曜族の宴だ。っつっても、かなり小規模だがな」

「!ふざけているのか、わざわざあんな場所にいくなど!!」


ネビュラは立ち上がってガロットの首元を掴んだ。


「おいおい、ふざけてねーぜ?お前さんが大っ嫌いな同族のパーティ。今までまともに参加したことねーんだろ。これから戦うかもしれねー連中の顔ぶれ見とくのもいいだろ。それに、もしかしたら気の合う奴も見つかるかもしんねーし?ま、危険っつっても黒曜族のVIP連中はこんなちんけなパーティ参加しねーから平気なはずだ。まぁ、要するにこのパーティに参加する連中程度なら、最悪お前さんだけでも何とかなるっつー話」

「・・・・・・」

「っつっても、騒動は起こすなよ?小さなパーティだといっても、時々やべー悪魔とか身分隠して潜伏している奴がいるからな」

「お前はこないのか?」

「俺様がいったら目立つだろーが。今までこういった集まりごとに参加してこなかった不死の大悪魔様がまさかこんなちっちぇえ祭りに参加するだなんて誰も思わねーだろ?」

「奴はこないだろうな?」

「奴?」


名前を出すことさえ嫌だが、万が一にもということを考えて確認をした。


「ああ、黒曜の大悪魔様か」

「!!!その名を呼ぶな!」

「おいおい、名前をだしただけでそれはやめておいたほうがいいぜ。世間じゃ、黒曜の大悪魔様・・・いんやベルギオ様こそが俺様たち黒曜族の現在の頂点に立つお方なんだからな」

「ガロット貴様・・・!」


首元を掴む力を強めようが、ガロットは慄きもせず通常通り平然とした顔で話し続ける。


「逆に言えばだ。お前さんは黒曜族の底辺。そこんとこはお前さんが一番よく知ってんだろ?ついでにいうと、例え小さな宴だろうが、お前さんが見つかってもレオがバレてもただではすまねえかもしんねえな。下手すりゃあの人間がまた怪我をしたり、狙われる可能性も少なからずあるはずさ。まぁ、そこはお前次第。お前さんは魔界を知らなすぎる。いや、今まで同族から逃げ続けた結果が今のざま。つまり、お前が悪い」

「・・・・・・」


言い返すこともできずにいた。


「・・・この指輪本当に大丈夫なんだろうな」

「ああ、俺様の知り合いに無理いって作らせた一品だ。実験済みだぜ。多少のコネは使ったがな」


指輪の赤い宝石に反射して映った顔は、浮かない顔をしていた。




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