第16話 依頼の失敗

計画は順調に進んでいたはずだった。

花畑に火を放って、そちらに気を引かせる。

そのすきに、人間を捕まえる手はずだった。

女の悪魔が不死の大悪魔を呼びに行ったはずなのに、どうして奴がすぐにあの場所へ来たのか。


「くそがっ。最悪だ、顔は見られた。間違いなくいつかはばれる。依頼も失敗!どうすればいいんだ!」

「よぉー、見ねー顔だな。誰だお前ー?」

「あ?今それどころじゃねーんだよ!!」

「じゃあ、わりぃけどよー。ちょっとだけ時間くれや?」

「無理だっつってんだろ!」


真正面で立ち止まっている奴の顔を見た。


「!!なんであんたがここにいんだよ!魔界の番人様までお出ましとかきいてねーぞ!」

「いやー、俺様だってよー。友のもとに遊びに向かったらよー?知らない奴が敷地内で刃物持って、血相変えて走ってんだぜ?逃げてるのほうがしっくりくるか?声かけずにいらんねーだろー?」


こちらの焦りとは裏腹な、余裕たっぷりな抑揚で話す魔界の番人。

大悪魔ではないとはいえ、実力は相手の方が上だった。

こいつは大悪魔になろうとすればすぐにでもなれる悪魔だった。


「・・・見逃してくれ」

「その様子じゃ、誰かが裏にはいるってことだなー?」

「そうだ、頼まれたんだ!大悪魔に!だから」

「大悪魔ねー?」

「依頼人の大悪魔の名を教えるから!!」

「いや、だいたい察しはつくから教えてくんないでいいわー。というか、俺様巻き込まれるのごめんだわ。そこのしがらみはー・・・そうだな。あくまで、中立でいるって決めてんだわ」


名を教えていないのに、魔界の番人は誰だか理解した上でいっているような口ぶりだった。


「それじゃ」

「まぁせいぜい、これからの余生を楽しめよー」


魔界の番人は見逃してくれた。

俺はそのまま不死の大悪魔の屋敷から逃げ出した。


「手を出してきたってことはー、俺様も巻き込まれるの前提じゃねーかー。勘弁してほしいぜー。中立でいたいが、そうもいかねーかなー?」


魔界の番人は赤い花園でひとりごちた。

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