第14話 依頼主は大悪魔

魔界の悪魔から、依頼を受けて対価として『魂』をもらう悪魔が世の中にはいる。

俺もその中の一人だ。

俺はとある依頼主から受けた仕事の真っただ中だ。

美味しい餌には危険が伴うが、それだけ魅力的な対価が受け取れるのだと思えば今までやってきた仕事なんて安いものだ。

そんじょそこらの悪魔の依頼ではない。

依頼主はなんとかの有名な大悪魔かららしい。

黒曜の大悪魔ベルギオ。

黒曜族の現在のトップとでもいうべき存在。

直接会って依頼を引き受けたわけではない。

そいつの側近の大悪魔から内容は知らされた。




俺は今とある大悪魔の根城に侵入が成功して潜伏中だ。

厨房にはコックの悪魔、部屋の掃除に動き回るメイドの女悪魔。

こいつら程度なら俺の力で余裕で勝てる。

だが、極力ばれないように行動したい。

ターゲットはこいつらではない。


「・・・それにしても、やけに警備が薄い」


大悪魔にしては、根城の警備が薄すぎる気がした。

罠かと一瞬警戒したが、そうではないことを思い出し安堵した。


「・・・ッチ、不死の大悪魔も一緒か」


視界にはここの家主の大悪魔が映った。

白く異様な色の男。


「なるほど、あれがターゲット」


今回の依頼はあの白い大悪魔を暗殺するだとかそんな地獄のようなものではない。

依頼の内容を教えてくれた側近の大悪魔の言葉を思い出した。


≪いいか?アンタは同族喰らいの大悪魔と一緒にいるっていう人間を捕まえてここへ連れてきな≫


上から目線な腹の立つ女の大悪魔の顔を思い出した。

『不死の大悪魔』、『同族喰らいの大悪魔』。

二つの大悪魔の名をもつ『二大悪魔』。

真正面から戦えば間違いなく負けるだろう。

下手をすれば、死ぬ。

ただの悪魔である俺が、大悪魔に喧嘩を売るには早すぎるのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る