第13話 報告と行動

急がなければ。

あの方の元に。

早く、早く急げ急げ!

誰よりも先に、アタシが一番にあの方の元へ!


「べ、ベルギオ様!」


青の庭園へと続く扉を勢いよく開き入る。

庭園内には椅子に座った黒曜の大悪魔と人間の少年がいた。


「えー、なになにー?」

「ベルギオ様!大変です!」

「何がー?」


人間の少年が代わりに答えた。


「お前に用などない!ベルギオ様、聞いてください!」


黒曜の大悪魔は、青色のワインをゆらゆらと傾けて何も言わずにこちらへと目線を上げた。

視線が交わった瞬間、心拍数が上がった。


「同族喰らいの大悪魔の元に人間がいるようです!」

「人間?それって僕のお友達ってこと!わー、すごいねー!」


黒曜の大悪魔は、再び目線をワインの元へと戻した。

青の庭園に報告をしにきた、側近の忠魔の大悪魔ガビは焦りながらいった。

興味をなくされてしまっては困る。

もっと己の存在を認識してもらうためにも、ガビは勝手に報告を続ける。


「て、偵察に行かせたところ、何日もその人間が屋敷に滞在しているようです」

「食べちゃったんじゃない?」


人間の少年は無邪気に笑っていった。


「そ、それがその人間と一緒に暮らしているということでして」

「え!それって僕と一緒だね!ベルギオと暮らしてるし」


ガビは人間の少年に殺気を向けた。


「ベルギオ様だ!様をつけろ人間!ベルギオ様の寛大な処置のおかげで生きていることを感謝しろ!人間風情が!!」

「えー、ベルギオ怖い助けてよ?」

「口を閉じろ、ロノ」


黒曜の大悪魔が最適解の答えを一言いった。


「うー・・・やだよ。ベルギオ」


人間の少年、ロノはベルギオの横に隠れて忠魔の大悪魔ガビに対して、べーっと舌をだした。

恐れるどころか挑発行為をするとは。


「このっ!ベルギオ様から離れろ!」

「それで?」

「!ベ、ベルギオ様!!!」


ようやく返事をしてくれたことに、認識してくれたことに感動をしたガビは熱に浮かされた様に両手を合わせていた。


「あの、それで・・・とは?」


ガビは先ほどの言葉を反芻していった。


「そのままの意味だ。魔界の番人が以前から人間を黒曜族の恥さらしの元へ連れていっては、人間界に帰しているのくらいは知っているさ」

「つまりー、ベルギオはまたそれをやっているんじゃないの?っていいたんでしょ!」

「その人間をここへ連れてこい」

「あれ、違うの?」


ロノは、不満そうにベルギオに抗議をした。


「どうした、できないのか?報告はできても、行動はできないと?」


ここで行動しなければ、間違いなくアタシは終わる。


「すぐに!その人間を連れてまいります」

「いってらっしゃい、おばさん」

「あとで絶対に殺す!それでは、ベルギオ様またのちほど・・・」


忠魔の大悪魔ガビは、人間の少年ロノをあとで殺ると決意して青の庭園をあとした。


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