第9話 赤い花
ガロットと二人で大悪魔の屋敷内を歩いていた。
もちろん駄々をこねるように、過保護な大悪魔に何度も一緒にいくといわれたが。
◆
数十分前。
「お前さんはこいつと一緒にいる時間を増やしたいのならば、まずはこいつのためにもやることやらねーといけねーぜー。悪魔と人間じゃ、住む世界がそもそもちげーんだからよー」
「・・・」
不満そうに黙り込む大悪魔。
「その間はちゃんと俺様がお守しとくからよー。屋敷外にはでねー」
「本当か?」
ガロットが説得をしていた。
「信用ねーなー。長い付き合いだろう?俺様だって、わざわざ厄介ごとに巻き込まれに外に連れてかねーよ。こいつのためを思うんならさっさとやることしてこい、わかったかー?」
「・・・わかった」
渋々といった様子で大悪魔は頷いた。
なかなか納得せずにいたが、ガロットのおかげでようやく何かやるべきことをしにいった。
◆
「いやー、驚いたぜー。人間一人いるだけでああも変わっちまうんだもんな―」
「え?そうなのか」
「そうよー、普段のあいつはぜってーありえねー姿だからなー」
普段が過保護くらいのイメージしかない俺にとっては首をかしげるしかなかった。
「ま、お前さんはあいつの普段を知らないからなー。知らない方がいいっつうかなー」
ガロットはもったいぶった言い方をする。
「あの大悪魔・・・ええと、ネビュラは普段はどうなんだ」
興味本位で聞いた。
「知りたいか?」
「え?」
ガロットは冗談交じりではない、冷めた声でいった。
心臓がどくどくいうのはなぜだろう。
「本気であいつのこと知りたいか?」
「・・・そういわれると」
「教えてやるとするなら、一つだけ」
「・・・」
思わずごくりと唾を飲み込んだ。
人差し指をたてて一を作るガロットは、表情は真剣だった。
「本人に聞くのが一番いい。ってことでー」
「ええ?教えてくれないのか」
「あったりまえよー、勝手に話してあいつにぶっ飛ばされるのは勘弁だぜー」
「確かにやりかねない雰囲気はあるけれど・・・」
「だろー?あいつお前さんには優しいけれど、俺様にはそんなことねーからよー」
「なぁ、その・・・大悪魔ってすごいのか?」
「そりゃすごいぜー。まぁ、何も知らない人間からしてみれば何が?って感じろうがな。俺様よりも強いだろうなー、本気で殺りあったことそんなにねーけどよー」
「何回かはあるのか・・・」
「まぁなー、喧嘩するほど仲がいいって言葉あるだろ?それよー」
全然想像できない話だった。
「ガロットとあいつは仲がいいってことであってるよな?」
「今のところなー、良好な関係築けてるはずだぜー。あんまお前さんにちょっかいだすと関係が崩れるのもすぐだろうがなー」
「そうだ。ずっと気になってたんだそれ」
「んー?どしたー」
「どうしてあの大悪魔は俺にそんなに過保護なんだ?」
「なんでっていわれてもなー、俺様も金髪の人間でレオという名前の奴がいたら絶対に傷つけずにあいつのところに連れてこいくらいしか言われた事ねーぜー。どこで知り合ったとか、なんでなのかとかはさっぱりだぜー」
「そうなのか」
俺を探していた?
謎は深まるばかりだった。
「ま、なんにせよお前さんがあいつにとっては大切らしいなー?俺様は、これからのことが心配だぜー」
「ガロット、色々教えてほしいことは山ほどあるけれど・・・ここは魔界だよな?」
「そうよ、魔界よ」
「なら、人間界もあるのか」
「おうよー、あるぜー」
「帰る方法もあるのか?」
「まぁ、あるぜー。教えてやんないがな―」
「え」
教えてくれると思ったが、ガロットは教えてくれなかった。
「当たり前よー、教えたらあいつが真っ先に俺を殺りにくるぜ」
「・・・そういうことか」
なぜか納得できてしまう理由だ。
「俺様だって命は惜しいんだぜ。悪いが、その件は諦めてくれや。今は、殺されないだけまし。生きて屋敷内限定だが、自由に歩き回れるだけでもありがたいことなんだぜ」
「ありがたいのか?」
「魔界に人間はイレギュラーなんだぜ。無事で済む方が稀だぜー」
ガロットもあの大悪魔も害がないから忘れていたが、最初に出会った悪魔を思い出した。
これでもかなり優遇されているんだ、と。
ガロットの言う通り、生きて歩き回れているだけでもかなり運がいいのだろう。
おまけに保護?してくれているのだから。
全員が全員ガロットたちのような悪魔ではないんだと緊張しなおした。
「お?ちょっとは危機感持ってくれたみたいで、俺様は安心したぜー」
「・・・あれ、花?」
廊下を歩いて扉の開いた部屋を通り過ぎたが、花が見えた。
赤い花。
花瓶に一凛刺さっているのが見えてなぜかそれが気になってしまったのだ。
「花?ああ、あいつが一生懸命育てているやつか」
「魔界にも花はあるんだな」
「咲かせるのはかなり難しいらしいがなー。魔界じゃ」
ガロットとともに、花がある部屋に入った。
「そうなのか?でも、この花は綺麗に咲いているみたいだけど」
「ここまで立派な花を育てるとは、可愛い趣味も持ってるみてーだなー」
「この花、名前はあるのか?」
「花なんてパッと見てわからねーぜー。あいつに聞くといい」
「そうか」
結局花の名前は分からず仕舞いで部屋をあとにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます