第3話 夢なら覚めてくれ
「っー、ここは?」
目を覚ませば、冷たいアスファルトの上に寝そべっていた。
硬い地面で寝ていたせいか体が痛い。
路地裏で寝ていた?
そんなはずない。
先ほどまで自室で・・・。
「ケー、マジー」
「マジィー、マジィー」
「マジマジ!」
「っ」
その声に慌てて身を隠すが正解だったようだ。
必死に声をださないように両手で抑えた。
「コレ、ハズレ」
「ハズー」
「ハズレー、ハズレー」
化け物がいた。
失神しなかっただけでも、大したものだ。
壁の物陰にへたりと座り込んで、カタカタと震えるしかない。
「・・・っ」
息を殺して、あの化け物が通り過ぎるのを待つ。
「いった、か?」
そっと用心深く様子を窺った。
つもりだった。
「オイ」
「オマエ」
「ナンダカウマソウダナ」
「うわー?!」
目の前には、行ったと思った化け物がいた。
思わず悲鳴をあげて、蹴り飛ばしていた。
「グォワ?!」
「ウワー?!」
「グワー?!」
「・・・!」
逃げなきゃ死ぬ。
だから、必死に走り出した。
足が痺れたように麻痺していたが、体に鞭をふるって頑張った。
息切れが早く感じるのは全力で走っているせいだ。
きっと、振り向けば死ぬ。
「アイツツカマエロ!」
「オエ!」
「オエオエ!」
だって、真後ろからあいつらの足音がするから。
走るのが早い。
このままではいずれ追いつかれる。
体力も限界だ。
「ヨシ!」
「ツカマエ・・・」
「オワリダ!」
「っ、つかまっ?!」
気配がして振り向いた時にはあいつらに捕まる寸前だった。
もうだめだ。
そう思った時だった。
「よぉ、おめーら!なーに面白いことしてんだー?」
すとん。
どこから現れたのか、あいつらからかばう様に新たな人物が現れた。
俺とあいつらの間に降り立った男もまた人間ではなかった。
「ソレ、ヨコセ」
「オレタチノ」
「エモノダ」
「へー、そうなのか?じゃあ、俺と交渉しないかおめーら?この『魂』やるからこいつは俺に譲ってくれよ?」
そういって、男は光輝く何かを3つ取り出した。
「こいつ1つの『魂』じゃ、おめーら喧嘩になるだろ?だったら、この3つの魂をいただいた方が利口だと思わねーか?」
「ム、タシカニ」
「ドウスル、ドウスル」
「ウーン」
何がなんだかわからないが、かばってくれているようだ。
初対面のはずだが。
「イイヨ」
「ワカッタ、ワカッタ」
「コーショー、セーリツ」
「ガハハハ、話がわかるやつで助かるぜ。ほれ、持っていきな」
「オマエダッタカラ、ダ」
「ソウダ、ソウダ」
「オマエジャナカッタラ、ソイツクッテタ!」
手をひらひらとふりながら、目の前の男はあいつらを追っ払ってくれた。
「あんた、何者・・・どうして、俺を助けてくれたんだ」
「何者か?俺を知らないのかー、ガハハハハ!」
「?!何がおかしい」
男は豪快に笑った。
「いや、悪い。悪気はねーんだ。何者か?は俺もお前に聞きたいがなぁ?それと、助けてやった、ねぇ?」
「・・・さっきのやつらといい、あんたといい。人間ではないやつばかり。それに、ここはどこだ?」
「人間でないやつばかり?そんなの当たり前さ、だってここは魔界だぜー?人間界ならともかく、だ」
「な、なんだ?ま、魔界?人間界?」
さきほどの話が通じなさそうな化け物よりは、あきらかに人間ではないが話は通じそうな奴だったため、警戒心が薄れてしまったのかもしれない。
「魔界にお前さんみてーな人間がいるほうがおかしいんだぜ?魔界には悪魔、人間界には人間が。それが普通の世の中。なのに、どうして人間界でなく魔界にお前さんはいるんだ?もしかして、迷子か?」
「気が付いたら、ここにいた」
「ってことは、迷子だな。ガハハハハ」
「わ、笑うな!」
「いやー、悪い悪い。さっきまであんなに血相変えて逃げていたくせに俺様には随分と普通に接するもんで・・・つい、な?ガハハッハア!・・・あーあ、ふぅ。いっておくが俺もあいつらと同じ悪魔だからな?」
「っ!」
「そんなビビんなって。とってくいやしねーさ。でも、そう簡単に悪魔を信用しちゃいけねーぜ?俺様みたいなやつの方が稀な世界だからな。んー、まーとりあえず。ここだと落ち着いて話もできねーし、いったん安全そうな場所に避難するか」
「・・・そ、そうだな」
「俺様のことあんま信用しすぎんなよ?」
「わ、わかってる!でも、今はお前しか頼りになるやつがいないんだ!」
「元気なこってー、あいつの前でもそのくらいの威勢があれば合格点だが・・・行ってみればいいか」
「?って、おい!放せ、この悪魔!」
「悪魔だが、名はあるぜ?っとー、自己紹介がまだだったか?俺様はガロット。魔界ではこう呼ばれてる。『
「魔界の番人?大悪魔?・・・ガロットって呼べばいいのか?」
「ん?ああ、別に何でもいいぜー?呼び方なんて、俺様はそんなにこだわてねーほうだからな。人間、っと呼び続けるのはちょっとばかし面倒ごとが増えるから名を教えてくれやー?」
「名前?・・・レオ」
本名を名乗るのは抵抗があった。
なぜなら、悪魔といえば自分の持っている知識だとぽんぽんと名乗るのは得策ではないと思ったからだ。
あだ名なら平気だろうという咄嗟に思いついた安直な考えだ。
「レオ?へー、こりゃ当たりの可能性が高まってきやがったぜ。面倒だから返してやりてーが・・・あいつのいってたやつと合致するからなー・・・」
「何をぶつぶついってるんだ?」
「んあ?俺様の独り言よ。やっぱり担いだ方がいいな」
お姫様抱っこから、肩に担ぎ直された。
「・・・」
「さっきのよりましだろ?一応これでも人間の羞恥心とかくらいは理解あるつもりなんだが?さっきのほうがお好みか?」
「いや、このままで」
「ちーっとばかし苦しいだろうが、少しの辛抱よ。死ぬよりましだと思えって」
「何もいってないだろ?」
「表情が物語っていたものでな」
「・・・」
「んじゃ、行くぜ?」
「どこに行くんだ?」
「『
「不死の大悪魔?」
どこかで聞いたような?
「んじゃ、行くぜ。口閉じてろよ」
「んぐわ?!」
「舌噛むぞー」
「いきなり・・・!」
「ガハハハ、面白いな人間は。っと、レオだったか?こりゃ、いい。飽きないぜー。よし、決めたぜ」
「何を?」
「もしも、あいつの求めている奴じゃなかったら俺様が引き取ってやるぜ」
「人をもののように・・・」
「まだ、扱いとしては優遇されてんだぜ?死ぬよりましだろ?」
「・・・ぐ」
「まぁ、安心しな。悪いようにしねーって」
悪魔なんて信用できない。
そう思いなおした。
そして、これから俺はどこに連れていかれるんだ。
不安で胸がいっぱいだった。
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