第7話 支度に時間がかかるんだな!

(髪の長い女子って、髪の毛セットするだけでもすっげー支度に時間がかかるんだな!)


 俺は男だから、髪の毛のセットに時間がかかるなんてことは無い。朝からドライヤーでセットして貰ってる雪の姿を見て、寝癖が付いても、水で濡らせばすぐに元通りになる自分とは 違うんだなと思った。


 何故か、ボーッと髪の毛をセットしてる雪を眺めていたが、時間がかかりそうなので、俺は雪を待たずに先に食べ始めることにした。


「ママありがとうね」


「雪は女の子だから身だしなみは大事よ!」


「まだ終わらないの?」


「あと少しよ。はい、お終い!」


「ママありがとう」



「もうお腹ペコペコだよ! お腹空いちゃったー!」


 雪がご飯を食べに隣にやってきた。


「ねぇねぇ一輝、私髪の毛長いから、毎朝髪の毛セットしなきゃいけないみたいなんだけど……」くるくるドライヤー何か無縁だったんだけどさ、これからは練習しなきゃいけないよね」


「そうだな……でも、母さんいるから、色々教えて貰えば良いんじゃんか」


「そうなんだけどね」


 身支度もご飯も終わると、学校に行く時間になったので、母さんから弁当箱を受け取る。


「ママ、弁当箱が小さいんだけど? 何かいつもと違くない?」


「え、雪が、小さいサイズの弁当箱じゃなきゃ嫌だって言って、これにするって選んだ弁当箱じゃないの。」


「え、そっかぁ、何にも思い出せないけど、私って足りるのかな」


「雪は女の子なんだから足りるじゃないの?」


「あはは、そうだよね! 私女の子だもんね」


「全く、しっかりしてよね」


「ふんふん、大丈夫だってば! あ、そうだっ

 たトイレ行ってなかったよお……行かなきゃ」


「雪、ちょっと待って……トイレットペーパ使い切っちゃったから、新しいの持ってくるね」


「大丈夫だってば……すぐ終わるし、いつも使わないじゃん!」


「あらヤダ! 女の子なのに使ってないの? 使わなきゃダメじゃない! すぐトイレットペーパー持ってくるから、終わったらちゃんとお股拭きなさい! 痒くなっても知らないんだからね!」


「えぇー! いちいち拭くの?」


「そうよー! はい、これトイレットペーパーね」


「うぇー」


「何でうぇーなのよ? 全くしっかりしてよね……私の娘なんだから」


 雪は昨日まで男だったから、トイレのやり方を知らなかった。今初めて、女の子はトイレのやり方が違うんだと知った。


 もしも、トイレットペーパーが切れてなかったらどうしていたんだろうか……俺は……私は……拭かないでいたかもしれない!


 しかも、正直トイレの行為全てが恥ずかしくて、緊張してしまい、拭く時直視出来なかったから、ちゃんと拭けたか分からない。とりあえず、鼻血を出さないように必死だった。


 ✩


「雪、ちゃんと拭いたの? 小さい子じゃないんだから、娘に確認なんか普通しないわよ!」


「う、うん」


「はぁー、もうこれからはちゃんとしなさいね。男の子じゃないんだからね! お嫁に行けなくなるわよ!」


「私まだお嫁に行かないもん!」


「まだ行かないわね……行くのは学校ね。時間は大丈夫?」


「げっ、やばい! 一輝、何で時間教えてくんないの? 早く行くよ」


「雪、待ってくれ……俺いま、寝てた……」


「何でソファーで寝てんのよ! 全くもう!」


 雪のトイレ待ちしてあげていたのに、何故か寝てしまったことに怒られた。

 

(それにしても女ってトイレまで大変だな)


「ママ行ってきます」


「雪、ハンカチとティッシュよ! 忘れないで持っていきなさい!」


「ありがとう!」


「母さん行ってきます」


「一輝はハンカチとティッシュ持った?」


「別に要らねーよ!」


「雪のついでに持ってきてあげたわよ! はい、身だしなみだからね」


「ありがとう……でも、ついでかよ!」


 二人はようやく学校へ向かった。



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