第3話 家にはお姉ちゃんがいるのよ

 一階へ行き、階段を降りてすぐの所にある扉を開けると、そこにはリビングダイニングがある。


 入口付近がリビングになっていて、その奥にキッチンがある。毎朝母さんは、そこで父さんと俺達二人の、三人分のお弁当を作ってくれていた。


 俺がキッチンへ向かおうと、階段の入口付近の扉を開けると、キッチンからは、軽快なリズムを刻んだ包丁の音が聞こえ、いい匂いが漂ってくるでは無いか……。


(……美味しそうな匂い。お腹空いてきた!)


 もう少し奥までキッチンに近づくと、何時も通り、鼻歌交じりで弁当を作っている、母さんのエプロン姿を発見。


 俺は母さんに兄貴が女の子になってしまった事実をを伝える為、急いでキッチで作業している母さんの隣りまで向ったが、声をかけようとした瞬間、何故か緊張して声が上手く出せなくなってしまった……。


(やっべぇ、母さんに話さなきゃ駄目なのに)


 すると、カウンターキッチンの上に弁当箱が三つ並んでおり、一つだけピンク色で小さな可愛い弁当箱が置いてあるのが目に入ってきた。。


(あれ、今日は何でピンク色の弁当箱が?)


 何時も通り、母さんは、父さんと、兄貴と俺の三人分の弁当を作ってくれている筈なのだが……。


 俺は、何故一つだけ女の子の弁当箱なんだろと、頭ん中に繰り返し疑問を抱いたが、母さんに未だ声が掛けられずにいるせいで、時間だけが経過して行った。


(何してんだよ……早く母さんに話さないと)


 突然緊張してしまい声が出せなくなっていたけれど、俺は、勇気を出して目の前にいる母さんに声をかける。


「おはよう母さん。ちょっと兄貴の事で話があるんだけど、良いかな?」


「おはよう。あんた寝ぼけてんの? 家には一輝あんたと、 お姉ちゃんの雪がいるんじゃない! 何時からあんたにお兄ちゃんが出来たのよ。熱でもあるんじゃないでしょうね?」


「母さん、んなわけねーだろ! ってか、この家にずーっと兄貴いたじゃんか?」


「あら、やっぱり今日のあんた寝ぼけてんじゃないの? この家には、お姉ちゃんの雪がいるんじゃない、朝から、ボケ噛ましてないで、雪も起こしてきてくれる?」


「……うん……」


 おかしな事に、俺が兄貴の事を聞いたら、母さんの口からは、この家には、お姉ちゃんの雪がいるという回答で、俺が寝ぼけてるんだと言われてしまった。


 とりあえず、この状況がよく理解できないまま、その事実を伝えに、二階の兄貴の部屋へと足を運び階段を登る。


 トントン……


「はーい、一輝でしょ? 私の部屋に入って大丈夫よ。」


 兄貴は、女の子の口調で話すようになっていた。

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