第3話 教授が最期に想う事
太陽系以外の惑星がお金になった直後、教育委員会が動きだした。
最初は、小さな子供が星の歌を歌っていたのを親が聞いた事が発端らしい。
親は星(お金)の歌を歌うなんて、まるで守銭奴みたいだと思った。
授業で習ったらしいという事を聞くと、すぐに苦情を入れた。
よくよく考えてみると、星に対してポジティブな曲や作品が多かった。
これは素晴らしい事だったと思う。
教授は宇宙学科から宇宙金融学科に変わる準備に追われていた。
教授は面接をしていた。
宇宙学科に入る学生と宇宙金融学科に入る学生は異なった種類の人間だった。
何せ志望動機が、星(本来の意味)の話をせず、お金の話をする学生ばっかりだ。
そのうちに、教育委員会は星の歌、文学、作品などを子供に与えないようにした。
私はそれを知り、学生に聞いてみる事にした。
「何故昔の人は、星になりたいと思ったか分かるかい?」
『それは、星になったら食べるのに一生困らないからだと思います。』
これは、ジョークではない。
私にとっては深刻な事態だった。
地球人は、星に対しての美的感覚がなくなってしまったのだ。
私は自問自答する。
私は、古い人間なのだろうか?
古い感覚を持つことは悪い事なんだろうか?
次には何が起こるんだろうか?
何を失うんだろうか?
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メモはここで終わっている。
教授は精神を病んでしまった。
だが、メモに書いてあることは妄言じゃない。
現実だった。
『おじいちゃん、何書いてるの?』
「・・・つまらないものだよ。」
教授は、メモをしまった。
『ふーん、それより外を見てよ。』
そう言われて、私は外を見た。
その時、一筋の流れ星が現れては消えていった。
『あれなーに?』
「あれは、流れ星だ。」
『綺麗だね!』
「・・・ああ、そうだな。」
私は想う。
さいごの最期に。
流れ星は去っていく。
夜が深まっていく。
教授が最期に想う事 葉月煉瓦 @renga_suugaku
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