第20話 もったいない

 もったいないという人がいる

 物好きだという人がいる


 なるほど

 確かにぼくは世間でいうところの『エリート』な経歴を持っているのかもしれない

 それを活かせば、そうだね

 キレイな場所で高い報酬を得られるのはわかっている

 でもそこは、ぼくがいたい場所ではなかった

 だからぼくはそこを出るチケットを手にいれるため

 ありとあらゆる手をつくした

 自分がほんとうにいたいと思う場所に行くために


 そうして念願叶ったとき

 出会った仲間に『もったいない』といわれて

 なんだかすこし、さみしく感じたんだ


 もったいないってなんだろう

 物好きってなんだろう


 自分のやりたいことがわかっていて

 自分がいたい場所もわかっている

 そこに行くチケットをようやく手にいれたんだ

 社会的な地位が落ちるからって

 給料もさがるからって

 そのチケットをつかわないほうが

 ぼくにとってはよほど

 もったいないことだった


 価値観のちがいといってしまえばそれまでなんだけど


 やっぱりすこし

 ほんのすこし

 ぼくはさみしくなった


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