第6話 やっと彼と進展が?
私たちは北條君に謝り倒しました。
誤解で命を取りかけたんですから当然です。
巨乳に関しては土下座しました。
そうしたら北條君、許してくれたんです。
やっぱり良い人です。
また惚れ直してしまいました。
北條君は交換条件って言ってたんですが、どのみちオーヴァードだと分かった時点で教えておかないといけないことなので。
オーヴァードについて知ってもらうために、私たちはこの田舎町の支部に北條君を連れて行きました。
当たり前ですけど、実はオーヴァードだったと判明した一般の人は、UGNは勧誘しますし、大まかな基礎知識を無償で教えることになってます。
だって、世の中にはオーヴァードの力を悪用する組織(ファルスハーツだとか、ギルドだとか……)が多数存在しますし、そういう組織の存在を知らないと、後で利用されてとんでもないことになるかもしれません。
警戒心を持ってもらうためにも、知っておいてもらわないと。
だから当然の流れでした。
で、支部についてから、誰が教えるか、という話になったんですけど……
「私がやります!!」
三人で相談してて、真っ先に手を上げました。
こんなチャンス、逃してなるものですか!
北條君と一対一で会話して、仲良くなるチャンス!
それに。
特に巨乳、あなたには任せられません!
そのおっぱいで誘惑して、北條君を自分の手下にするつもりに違いありませんから!
しかし。
……誰も異議を唱えてはきませんでした。
容疑者が消えたので、一から調査しなおさなければならず、そっちの方がありがたい、ってことでした。
「まぁ、それが妥当かも。私も、ブラックリザードも、そっちにかかるより調査の方にかかった方が効率良いわよ。きっと」
「そうだね。キミがやるのがいいと思う。僕らは調査頑張るからさ」
で、目出度く私が北條君の教育係になることが出来たのです。
正直、調査任務で評判が悪い彼らに任せるのは不安なこともありましたけど、ここでこの役目を他人に任せる気はありませんでした。
私が彼らを超える調査が出来るという自信があったわけでは無いですし、何より……
きっと、後で後悔するという予感があったんです。ここで譲ってしまったら……!!
ごめんなさい。でも、譲れないんです。
その後、二人きりで会議室での講習会をはじめました。
楽しかったし、嬉しかった……
こういう風に、彼と会話したかったんです。
1年越しの夢が叶いつつありました。
仕事なのに、個人的満足感を満たしているという後ろめたさはありました。
でも、やってること自体は誰かがやらなかきゃいけないことだし、このくらいなら許される。
そう言い訳しながら、仕事をこなしました。
ですから。
講習会が全部終わった後に、北條君が、自分もシャドウストーカー討伐に加わりたい、って言ってきたときは
「ゴメン。それは無理」
キッパリと言いました。
だって北條君、まだシンドロームすら分からないんです。
そりゃ好きですよ?一緒にだって居たいです。
でも、それとこれとは別なんです。
危ないですし、それに、この件は絶対に解決しなきゃいけないことですから。
戦力にならない人を入れるわけにはいかないから。
「北條君、まだ自分のシンドロームもはっきりしてないよね?その状況で、私たちと一緒に行動しても、足手まといってどころじゃないわ」
「気持ちは分かるけど、ここは私たちに任せて。絶対解決するから」
だいぶ、冷たく言ったと思います。
答えは決まってることだから、諦めてもらわないといけないと思ったから。
……これで嫌われたらどうしよう。
そう、頭の片隅で思いました。
北條君はそんな聞き分けのない人じゃないと信じては居ましたが。
ここで譲ってしまうと、そんなの私じゃなくなってしまいます。
今は田舎の飼い殺し支部勤めですけど、元々はちゃんとしたエリートエージェントだったんです。
だから仕事には真摯に取り組まないと。
そこを自分で否定してしまったら、それはもう私じゃありません。
譲れないんです。ごめんなさい。
北條君の気持ちは分かるけど……
お姉さんの親友を、もう一人のお姉さんって言っても良い女性を殺されたんですからね。
自分の手で犯人を倒したいって思うのは当然ですよ。
本当に、ごめんなさい。
私に冷たく断られた北條君は、悔しそうでした。
そりゃそうですよね。でも、これは仕方ないんです。
でも、北條君は私たちに恨みがましい目を全然向けなかった。
自分の弱さを、自分に怒って、悔しがってるみたいでした。
……キュンキュンしました。
申し訳なかったですが。
自分の力の足りなさを怒るなんて、グッときちゃいます。
男の子だから、自分の弱さを指摘されるのが屈辱的なんですね。
なんて可愛いんでしょうか。
許されるなら、私が北條君を育ててあげたい。
強いオーヴァードにしてあげたい……。
ああ……可愛い……好き。
慰めて、励まして、鍛えてあげたいな……!
抱き着いて頬にキスの雨を降らせてあげたいくらいキュンキュンきました。
思わずうっとりと見つめそうになり、慌てて心を引き締めたとき。
多分、北條君は悔しさを抑えられなかったのか。
目の前の机を拳で叩いてしまったんです。
会議室に置かれてる、それなりに大きな机。
すると。
叩いたところから、炎が吹き上がり、燃え始めました。
あっけにとられてしまいました。
机は木製です。
確かに燃えるものです。
……それがエフェクトによるものだと気づいたのは、北條君の叩いた右手が赤く輝いていることに気づいたときでした。
「……サラマンダーのシンドローム……」
思わず呟いてしまいます。
木は燃えるものです。
でも、それをちょっと叩いただけで、瞬時に発火させるなんて……
並の威力じゃ無いです。
「姉さん!消火器!」
「わかったわ!」
ブラックリザードに言われて、巨乳が消火器を持ってきて消火しました。
危うく火事の危機であったことを忘れてしまうような驚きでした。
火事の危機が完全に去った後、私は興奮して北條君に言ってあげました。
「……北條君はサラマンダーのシンドロームのオーヴァードだったんだね……!」
サラマンダーは熱を操るシンドロームで、発症者は炎や氷を操れるようになります。
無論個人差があり、両方操れる人や、炎、氷、片方しか扱えない人。様々です。
北條君はどういうタイプなのでしょうか。
「サラマンダー?」
「熱を操るシンドローム!しかもさっきの机の燃えっぷりを見る限り、相当強いよ!すごい!」
すごい!
無訓練でこの威力なら、訓練を積めば実戦に立てるかも!
このとき、私はその可能性が繋がったことを喜んでいました。
この支部はただでさえ手が足りません。
応援は来てもらってますが、戦力が増えるなら悪い事では無いはずです。
それに何より。
「……これでもダメか?強いんだろ?俺……?」
本人がやる気です。
ええ。私が北條君を鍛えて、一緒に戦えるようにしてあげるから!
大好きな男の子でも、私、手を抜かないからね!?
覚悟してね!北條君!
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