第7話 彼の興味
北條君はどうも、サラマンダーのピュアブリードらしい。
検査の結果、それが分かったので。
私は、運命を感じて震えていました。
私はバロールのピュアブリード。
北條君はサラマンダーのピュアブリード。
お揃い!
これはもう、運命の人です。
それ以外無いです。
「北條君、サラマンダーのピュアブリードだよ」
私の感動を少しでも共有して欲しくて。
私はそれを伝えました。
「ピュアブリード……水無月と一緒だな」
でも、彼のリアクションは薄めでした。
……まぁ、まだそんな関係じゃ無いから、大喜びなんてありえないのは分かってますけど。
私が勝手に盛り上がってるだけで。
でも、私がピュアブリードなのは覚えていてくれたんですよね?
それだけでも嬉しいです。
気を取り直して、二人とも体操着に着替えることに。
制服のままで戦闘訓練も何もありませんからね。
体操着は学校のやつです。折角だから。
更衣室で服を脱ぎながら、一般では体操着姿の女子ってのは男子は見たがるもののはずだけど、北條君はどうなのかな?と考えました。
性欲が無いってことは無いと思うんですよ。パソコン、スパイウェアで調べましたもん。
ちゃんと健全な男子らしく、エッチなサイトを見てましたよ。
でも、普段の彼、寝てばかりでクラスの女子を目で追いかけたりしてないんですよね。
……現実の女の子に興味が無いとか?
そういえば、好きなエッチな媒体って、北條君、漫画か小説でしたっけ。
エッチビデオだとか、エッチアニメだとかは見てませんでした。
もっぱら、フリーのエッチ小説か、エッチ漫画を見てたんです。
お金の支払いの問題なのかな、と思ったんですが、ひょっとしたら違うのかも……
だったら、嫌だな。
でも、まさか聞いて確かめるわけにもいかないし……
体操着の半袖短パンに着替えたので、姿見で自分の姿を確かめます。
自分で言うのもなんですけど、やっぱりけっこー絞まってますよ。
胸はまぁ、誇るほどは無いんですけど。
髪の毛の手入れも怠ってませんし。
悪くないと思うんですけどね。
色々なポーズをとってみて、自分を確認しながら。
この訓練で私に興味を持ってもらえないかなと思いました。
体育は男女別なので、こうして北條君と体操着姿で向かい合うのはドキドキします。
北條君は上半身半袖、下半身学校指定ジャージで。
冬場に暑くなってくると移行するスタイルですね。
下も脱ぐわけにはいかないから、上だけジャージ脱ぐ、みたいな。
肩幅の広さが良く見えて、ちょっとドキッとしました。
骨格太いってステキですよね。
まぁ、顔には出さないように努力はしました。
真面目にやんないとですし。
「じゃあ、まずエフェクトの扱い方から訓練しようか」
二人での訓練をはじめました。
まずはエフェクトを安定して出せるようにする訓練。
これに丸一日費やしました。
北條君、エフェクトの出力は凄いんですが……
続く、レネゲイドコントロール攻撃。通称RC攻撃の訓練で問題勃発。
北條君、RC攻撃がド下手だったんです。
到底実戦に使うのは無理。そんなレベル。
それでも北條君、何度も食らいついて来ましたけど。
その頑張る姿に萌えてしまいましたけど。
無理なものは無理なので。
代わりに、白兵戦を薦めたんです。
北條君、素手での殴り合いの方が得意そうでしたしね。
白兵武器をエフェクトで作り出すのは、RC攻撃とはまた違うので。
そしたらこれが大ハマリ。
元々センスあったんですね。
あっという間に私に迫る勢いで技量を伸ばしてくれました。
凄いよ!
私もだんだん本気になって、魔眼槍(魔眼をエフェクトで変形させた槍)で、遠慮なく攻撃したんですが、どんどん伸びてるのが伝わってきて……
嬉しかったです。
私が育てた北條君が、こんなに強くなってくれた……!
そしてとうとう、私から一本とってくれました。
おなかに一発。しかも寸止め。
貰った瞬間、キュンとしてしまいました。
女の子は殴りたくないってことですね?
どこまで好きにさせる気ですか!
育てた側として、大いに嬉しいです。
私は休憩と言いつつ、タオルを取りに行き。
2つとってきて、片方を彼に渡しました。
そして、彼の前で三角座りします。
私に興味を持ってもらいたいので、なるべく可愛く見えるように意識して。
すると。
「……なぁ、ちょっと聞いていい?」
北條君が私に話しかけてきます。
何でしょうか?
彼氏の有無……じゃないですよね。
いきなりそんな質問来るような状況じゃ無いですし。いくらなんでも。
……無論、そうだったら「いないよ」の一択ですけど。
しかし、北條君の質問は、ちょっと予想を超えてました。
「水無月って、そんだけ優秀なのに、なんでこんな田舎町に配属されてんの?」
ものすごく真剣な顔で、私にとっては苦いことを聞いてきたんです。
でも、これって、私に興味を持ってもらえたってことですよね?
私と一緒に訓練して、私を知ったら現状と実力が見合ってないって思ったってことですよね?
どうでもいい相手にそんな質問するわけないですし。
苦い質問でしたけど、私の心は決まっていました。
「……痛いところを突いてくるね。北條君は」
私は苦笑して、そう言いました。
「……ゴメン。でも、どうしても聞いておきたかったんだ」
「結構苦い記憶なんだよ?」
顔を自分の膝に押し付けて。
私はポツリとそう言いました。
「絶対嫌だったら無理強いはしないけど、できれば知りたい」
ああ、この人、軽い気持ちで聞いてない。
多分、私がどういう理由で左遷されたのか知りたいんだ。
組んで戦うことを意識してるからこそ、私を知りたいんだね……
話すことはもう決めてましたけど、そういう彼の思いが嬉しかったです。
「分かった。話してあげる」
そして話しました。
私の過去のやらかしを。
自分が、感情で先走って、やってはならないことをやってしまい、チームの信頼を失って飛ばされたってことを。
同情してもらおうなんて思ってませんよ。
真剣に聞いてくれた北條君に、同じように真剣に答えただけです。
そして、全ての話を聞き終えた北條君は、
「そっか……エリートチームって大変なんだな……」
そう言ってくれたんです。それが彼の気遣いなんでしょう。
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