第3話 再び来てしまった

「……ジャームによる、殺人事件、ですか」


支部に出向いて、秋月支部長よりそう伝えられました。


「……困った。俺、戦えないし……どうしたら……お姉ちゃん……助けて」


いいトシこいて、支部長と言う地位まで貰ってるのに、肝心なときにお姉ちゃんに頼るような真似はやめて欲しいですね。

私は、頭を抱えているこの茶色のスーツ姿の中年のオジサンを見て、本当に駄目な人だと思いました。


私がしっかりするしかありません。


渡された資料を読みます。

そして驚きました。


被害者は大林杏子。

町内の高校に通う高校三年生。

友人は多く、生徒会にも誘われるほどの人望がある女生徒。

運動が苦手では無いが、部活の類いには所属していない。


大林杏子……!!


知ってます。

だって、北條君のお姉さんの、お義姉さんの親友ですもん!


彼女についてはだいぶ調べましたよ。

ひょっとしたら恋のライバルになるかもしれないって思ったんで。


ヘアスタイルは女っぽいロングで、ウェーブかかってるのがちょっとエッチで。

顔つきはちょっと猫っぽく。

スタイルが良くて、あと巨乳。

ここでだいぶ警戒した思い出が。

彼女が恋のライバルになったら相当強敵になりそうだなって思ってました。


でも、調べてみたら北條君のこと、弟くらいしか思ってなくて。

北條君も、自分のお姉さんの親友ですから、もう一人のお姉ちゃんとしか見て無いんだな、って分かって。

仲良しでしたけど、警戒しなくていいなと思ったんです。


そんな彼女が、殺された……。

ひょっとしたら、私の年上の頼れるお姉さんになってくれるかもしれない人だったのに。

辛かったです。良く調べて、知ってる人が殺されたんですから。

そして北條君、可哀想……!


私が、この事件を絶対に解決してあげるから!


読み進めます。



遺体発見の状況。


・衆人環視の中、一瞬の空白を狙ったかのように、突如遺棄されている。


・遺体の損傷は激しく、めった刺しの上、上半身と下半身が切り離されていた。解剖の結果、死因はめった刺しの傷の方で、胴体切断は死亡してから行われた模様。


・膣内を洗浄した形跡がある、



……胸が悪くなります。

こればかりは慣れません。


この仕事をずっとやってきて、こういう悲惨な状況はさんざん見て来てるのですけど。


空白を狙って、突如遺棄ってことは、犯人は遺体を携帯できるほど小さく出来るエフェクトを持っているか、遺棄する時間を拡大できるエフェクトを持っているか……

他にも候補あるかもしれませんが、モルフェウス、バロールあたりが怪しいですね。


あと、膣内洗浄したってことは、犯人は男ってことでしょうか?

あまり、気分のいいものではありませんけど。

女の子として、徹底的に踏みにじられたうえ、殺されたんです。許せません。

大林さん……私が絶対に犯人を見つけて、倒しますから。

待っていてください。


私は資料を熟読したあと、支部長に提案します。


「秋月支部長。応援を呼びましょう。私たちだけで、この規模の事件は解決できません」


「で、でも、応援なんて呼んだら無能のレッテルが……!!」


「そんな心配してる場合ですか!!」


この人は!

何が大事なのか分かって無いんだから!!




本部に連絡を入れ、至急応援を手配してもらえることになりました。


そして、手配されたのが……


「ヴィーヴル&ブラックリザード……通称・泉姉弟……」


支部の大画面モニタに、一人のボブカットの若い女の画像と、黒いトカゲの画像が映し出されています。

本部が応援として手配した、二人のUGNエージェントです。


ヴィーヴル・本名泉真。両親ともにオーヴァードで、UGN職員。彼女自身は大学生のときにこの世界を知り、才能を最大限に活かせるのがここだと悟りUGNに身を投じる。キュマイラ/エグザイル/ノイマンのトライブリード。

ブラックリザード・本名不明。ヴィーヴルの弟を自称している。ソラリス/オルクスのクロスブリード。ハンドリングの黒色トカゲの姿でのみ活動しており、本体の姿も不明。


……荒事には一級、って言われてる方たちですね。

ただ。


薄皮を張り合わせるような繊細な作業を、わりと乱雑にやるという悪癖があって、荒事にはすごく重宝されてるらしいんですが、調査や捜査だと評判悪いとか聞いてるんですけど。


この人たちしか居なかったんでしょうか?


……まぁ、文句言ったら「だったら応援ナシでいいか?」なんて言われるかもですし。

至らないところは私が全力で頑張ればいいんです。


文句ばかり言っても仕方ありません。




数日後、彼女らが支部にやってきました。


紺のスーツに身を包んだ、ボブカットで長身の、おっぱいの大きなモデル体型の美人がヴィーヴルこと泉真。

その肩に乗ってる、黒いトカゲがブラックリザード。


「よろしくお願いするわね」


「短い間になると思うけど、よろしく」


巨乳は基本敵ですが、私は差し出されたヴィーヴルの手を握り返し。


「こちらこそよろしくお願いします。一刻も早く事件を解決しましょう。頼りにしてますから」


私はそう笑顔で、感謝と、協力を誓ったのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る