第2話 上手くいかない
そして、1年が経過しました。
その間、毎日挨拶するところからはじめましたが、彼が食いついてくれません。
私の計画はこうでした。
毎日挨拶をする。
↓
やがて会話するようになる。
↓
私と打ち解ける。
↓
彼から告白されて恋がはじまる。
↓
高校卒業と同時に結婚して、彼の家族の一員になる。
なのに、段階1で躓いて、挨拶から先に進んでくれません。
何でなのでしょうか?
こっちは、毎日毎日北條君のことを見続け過ぎて、もう頭がおかしくなりそうなほど好きになってるっていうのに。
顔が好きなのは元からですけど、声から汗の匂いから、全部好きになってしまいました。
どうしてくれるんですか!?
今日も帰宅して、机の前で悩んでいました。
何がいけないんでしょうか?
やっぱり、見た目でしょうか?
第一印象、馬鹿にできませんものね。
私の場合、そうだったわけですし。
でも、私、多分そんなに見た目悪くないですよ!?
自分で言うのもなんですが、目はパッチリしてて気に入ってますし。
戦闘員ずっとやってて、今も訓練欠かして無いから体型悪くないですし。
胸のサイズは普通ですけどね!北條君は巨乳好きみたいですけど!
眼鏡ですか?この丸眼鏡がいかんのですか?
それとも、三つ編み?
とはいえ、だからといって北條君がどんな髪型が好きかとか、どんな眼鏡ならOKなのかとか。
それは分かりませんから意味のないことなんですが。
分かってるのは、北條君の検索ワードは「巨乳」「中出し」「妹」の三種だってことだけですし。
そんなの、参考にならないですよね。
あぁ、でも。巨乳に関しては別ですか。
それは見た目と関係しますものね。
まぁ、私の場合、即対応ってわけにはいかないんですけど。
バロールのピュアブリードの私では。
バロール/エグザイルのクロスブリードなら、その辺ワンチャンあったんですけどね!
自分のシンドロームを恨みます。
まさか豊胸手術を受けるわけにもいかないし(無論受けたくないです。念のため)揉んで大きくなることを願うしか無いんでしょうか?
そうして、今日も少しでも大きくなればという思いをこめて自分で揉みます。
それか……
もう一個の可能性について考えてしまい、手が止まりました。
北條君、まだあの夢見てるんでしょうか?
夢の内容は詳しくは分かりませんでしたけど、酷い夢をよく見るみたいなんです。北條君。
そのときのことを、お義姉さんともお話してて、どうも、あの事件に関わる夢みたい。
夢の話をするとき、亡くなったお義兄さんの話をしてましたから。
お気の毒、なんて言葉じゃ片づけられませんよ。
私だって、裁判というものが、正義の実現じゃ無くて、秩序の維持のためにあることくらい分かってます。
でも、それで割り切れて、全部解決できるほど、世の中単純でも無いですよね。
そんなことに苦しめられているときに、果たして女の子に目が向くでしょうか?
厳しいのかもしれません。
盗聴で北條君とお義姉さんのお話を聞いたとき、私は気の毒で胸が締め付けられました。
今すぐ、彼のところに出向いて行って、全て受け止めてあげたかったです。
でも。
「何でそのことを知ってるの?」
「盗聴したの」
……ありえません。
いや、私の中では普通の事ですけど、一般的にはありえないです。ドン引きってもんじゃないです。
言えませんよ。
私が北條君の妻になろうと決意する前に、盗聴ハッキングその他で情報を集めたのは、墓穴まで持っていくつもりですよ。
必要だからやったんですけど、言いません。例え愛する人にでも。
北條君を癒せるのは、おそらく赤の他人の共感だと思うんです。
だから、その意味でも北條君の彼女になりたいんです。
彼女になれば、彼の事を受け止めてあげられるし、癒してもあげられると思うから。
でも、彼のそんな状態が、恋を妨げている可能性があるなら、難しいですよね。
……どうしましょう。本当に。
もう、計画は諦めて、恥も外聞もなく、毎日北條君に「好き」って言いましょうか?
毎日言い続ければ、そのうち洗脳されてきて「俺も好きかもしれない」って思ってくれるかもしれませんし。
でも、そんなやり方だと……
北條君の家族に、すんなりなれないのではないかなと思うんですよね……
ご家族に「ごり押しして弟の彼女になった、変な女がやってきた」って思われちゃうかもしれませんし。
だからその意味でも、北條君に選ばれて、って形式にはこだわりたいんですが。
ホント、どうしましょう……?
答えが、出ません。
次の日の昼休み。
私のUGNの特別製スマホに、支部長からメールが届きました。
ちょうど、日課の北條君見守りが一段落したところでした。
目を通します。
前は「現役女子高生に酌をしてもらいたいから、今から支部に来れないか?」とかいう、ふざけた内容だったんで、上にセクハラで通報してやりましたが。
また同じようなものでは無いですよね?
しかしそれは、あまりにも唐突過ぎて、目を疑いました。
予想していない内容でした。
『帰れ』
これ、何か起きたときのお決まり文面なんですよね。
ここ、何もないのが唯一の取り柄だったはずなのに……!
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