第6話
翌朝、昼前には目が覚めていた。
いつも同僚と深酒をした時は、
頭がガンガンしてとても朝から動ける状態じゃないのに。
やはり良いお酒だったからだろうか。
それとも久しぶりのサトルの家で、多少なりとも緊張していたからだろうか。
貸して貰った布団を畳み終え、キッチンへ向かうと、
丁度おばさんがお昼ご飯を用意してくれていた。
「昨日は遅くまで付き合ってもらったみたいで悪いわね」
おばさんは昨日よりも少し元気そうだ。
「いえ。久しぶりに楽しいお酒が飲めました」
俺は昨日夕飯を食べた際に座ったのと同じ席へと着いた。
「良いお酒は悪酔いしないからね」
「あ・・・そうみたいですね」
どうやらおじさんの秘密はおばさんにはお見通しの様だ。
お昼ご飯のお味噌汁がテーブルに揃う頃になると、
おじさんが2階から降りてきていた。
「いただきます」
昨日と変わらず、美味しいご飯にありついていると、おじさんが俺に話し掛けた。
「サトシ君。食べ終わったらちょっと2階に来てくれないかな」
「あ、はい」
気持ち急いでご飯を食べ終え、食器を片付けた後、
おじさんと一緒に2階へ上がった。
おじさんはサトルの部屋へと俺を導いた。
「少しずつだけど整理を始めてね」
サトルの部屋は元々キレイに整頓されていたのか、そこまで物は多くなかった。
2つのダンボールが部屋の隅にあり、それぞれ物が丁寧に梱包されている。
要るものと、要らないものだろうか。
「これなんだけどね」
おじさんは机の脚元から、小ぶりなキャスター付き収納デスクを出してきた。
「番号式の鍵が掛かっているんだけれど、開かないんだ。
どうもサトルが番号を変えたみたいで」
見ると、最上段の一番小さな引き出し部分に4桁のダイヤル式の鍵が掛かっている。
「私が仕事で使っていたのをサトルにあげたんだ。
大切に使ってくれていたみたいだから、私がまた使おうと思ったんだけど、
この引き出しだけ開かなくてね」
「誕生日とかじゃなかったんですか?」
「勿論入れてみたよ。でもね、どうも違うみたいなんだ。
サトシ君ならもしかしたら判るかなと思ってね」
思いつく番号でダイヤルを回してみるが、手応えは全くない。
俺の誕生日、サトルの誕生日、勿論サキエの誕生日も入れてみたが、ダメだった。
「サトシ君でも判らないか・・・」
「すみません。役に立てなくて」
「いや、良いんだ。気長に色んな数字を試してみる事にするよ」
「あの、もう少し考えてみて良いですか?」
「あぁ、良いよ。サトシ君は明日までうちにいるんだよね?」
「はい。明日の昼過ぎには東京に帰ろうかと」
「それまでに開くと良いんだけどなぁ」
そう言うとおじさんは2つあるダンボールのうち、
1つを持って1階へと降りていった。
改めて部屋を見渡してみる。
何となく見覚えがあるものが置いてあったりする。
昔はよく、サトルの部屋で遊んだなぁと少し懐かしくもなった。
勉強机の上には、少し色褪せた写真が飾ってあった。
俺、サトル、そしてサキエが仲良く3人、笑顔で写っている。
この時が一番楽しかったのかもしれないな・・・。
そう思うとまた心が締め付けられる気がした。
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