第33話 明日に備えて


 サンドラ様とお近づきになるに於いて気を付けれなければいけないことは、サンドラ様ルートにおけるライバルキャラの存在です。

 王女に見せかけたサンドラ様ルートのライバルキャラになりますので、そのお相手はやはり女性となります。ここで、実はライバルキャラすら男性だった場合、本格的にゲームの内容が変わっていたことでしょう。

 それはそれでもしかしたら好感を持っていたのかもしれませんが、わたくしの限って言えばちゃんとライバルキャラが女性で助かりました。


 とはいえ、いままでの流れから言ってライバルキャラの女性と仲良しになりますわ! とか考えて行動してしまえばどんなしっぺ返しが来るか分かりません。

 ここは当初の予定通り、サンドラ様とも、そしてライバルキャラとも密な関係を持つことなく無難に終わらせることが重要と言えるでしょう!!


「お嬢様……、やはり御加減が優れませんか……?」


「大丈夫よ……」


 ダンスパーティーから戻ってきたわたくしがベッドに倒れ込んでしまったことがニクラの心配を突き刺してしまったようです。

 ですが、少しだけ許してください。せっかく楽園に来たと思っていたのにまさかのサンドラ様の登場と、そしてなぜかお城への招待。断るわけにも参りませんので、しっかりと受けてきましたが……。


「サンドラ王女には、私どものほうでお断りの文を……」


「問題ないわ、ニクラ。少しだけ、ええ、少しだけ明日に向けて英気を養っていただけだから」


「お嬢様がそう仰られるのでしたら」


 普段であればわたくしを一人にしてくれるニクラも、今日ばかりは離れようとはいたしません。そもそも、この国に来た経緯が経緯ですので、彼女の心配も最高潮に達しているのかもしれませんね。

 わたくしが気分が優れないのは本当ですが、少々ベクトルが違った方向に落ち込んでいるためにニクラを安心させてあげられないことは申し訳ないとは思いますが、説明するわけにもいきませんので彼女には耐え忍んでいただくことといたしましょう。


「それよりも、明日のドレスの準備はよろしくね」


「は、はい! お任せください!」


 庶民の旅行ではないので、多少のドレスは持ち込んでおりましたが、さすがに王族と直接相まみえるとなれば、それ相応の恰好が必要となります。

 サンドラ様に招待されたことは帰りの馬車のなかで伝えておりますので、すでに使用人たちが動いてくださっているはずですが……。


 それにしても、頼みますから興味を引かず、ですが失礼にもあたらない。そんな絶妙な具合をついてきてくださいね……。かなりの我儘は承知ですが。

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