第17話 一度振り返るといたしましょう
冷静になりましょう。
どんな時でも自分を見失わなかったものが勝者となるのです。
慌ててしまえば、終了です。そこに先があるとは思ってはいけません。
大丈夫。
大丈夫ですよ。
落ち着いていままでの事柄をまとめてみましょう。
きっと、そこまでひどい結果にはなっていないのですから。
・許嫁であるアルバーノ・ルークスに好かれてしまった。
・弟君であるダンテ・ルークスに唇を奪われそうになってしまった。
・ダンテの許嫁であるアメリータ・タロッツィにライバル宣言をされてしまった。
・ローザ・スピッツィキーノに嫌われてしまった。
・ローザの許嫁であるオズヴァルド・シモンチェッリに関心を持たれてしまった。
よろしい。
なんでじゃ、くそったれェエ!!
俺は! 女の子と! 仲良く! なりたいの!! 男なんてどうでも良いんだよ、馬鹿じゃねえの!?
アルバートとだけそこそこ仲良く関係を保ち続けた上で主人公に彼をどうぞとお譲りして、表面上はあくまでも可哀そうな御令嬢として多少の腫物扱いを受けながらも素晴らしい余生を過ごしたい! できればその時にせめて友達としてで良いから可愛い女の子たちに囲まれたい!
それだけなんだよ!
それだけなんだよ!?
今のところ三人中三人男に好かれて、二人中二人女に嫌われているじゃねえか! なんだよ、この打率は十割か!? 伝説のバッターか!?
どうしてだ。どうして、男たちはこれほど簡単に靡いてくる? どうして、これほど女性は俺を嫌う?
これがゲームの世界だからか? まさか、俺が主人公補正を受けているとでもいうのか。……。いや、それはない。
いくら自暴自棄になっているとはいえ、その考えだけは持ってはいけない。
主人公補正。
聞こえは良いけれど、それはつまりすべての努力も苦労も無に帰す言葉だ。そこにある何もを見もせず聞きもせずあるとも思わず、すべてをそれだけで説明してしまおうとする外野の嫉妬だ。
今回の結果にだって、きっとなにか原因がある。そして、原因があるというのであればそこは変えられる。
落ち着くのです。
まだ動き始めてやっと数か月程度。ゲームの開始である学園入学ですらまだ遠い未来の話。
たったそれだけの行動結果が駄目だった程度で何だと言うのです。この程度をやりきったと、努力の結果だと言ってしまおうものなら、彼女に、俺の妹に何と言われるか分かったのものではありません。
知っているはずです。わたくしは、見ていたはずです。主人公補正なんて言ってはならないのです。彼女の努力を、彼女がどれだけのことを積み重ねてあの今を手に入れていたのかを。
まずは男性側の問題を考えてみましょう。
どうして、男性に好かれてしまうのか。……、文字にすると叩かれてしまう悩みですね。
勿論、いままでのルイーザとの差も大きな要因でしょう。ギャップとは人を魅了するものなはずです。
ですが、それだけではないはず。以前、こんな話を聞いたことがあります。パソコンゲームでは、女性が操る女キャラよりも男性が操る女キャラのほうがモテてしまう、と。
それはつまり、男性が希望する女性の良い部分だけをまねているから。本当の女性が分からないからこそ女性の嫌な部分を意識的にしろ、無意識的にしろ避けてしまうから。
いまのわたくしも、もしかしたらその傾向があるかもしれません。特に、彼らが暮らす世界は貴族の世界。それこそ、御令嬢の皆さまは狩人といったところ。どれだけ位の高い男性を射止めるかを幼き頃より叩き込まれてきているのです。
そんななかで、わたくしのようなズレている女性が魅力的、いえ、好奇心を刺激する存在になっている可能性は非常に高い。
では、どうするか。
わたくしも彼女たちのようにアルバーノ様へ媚びる女へと成れば良い? いえ、できればこの作戦は最終手段にとっておきたいものです。なにせ、…………、男に媚びるのは、ちょっと……。
これ以上関わりを持たないようにする?
確かに効果的な手かもしれませんが、そうするとわたくしのお友達をつくろう作戦に支障が出てしまい兼ねません。オズヴァルド様の例もあります、男性側だけを避けようとしても向こうからやってくる場合もあります。そこを無視しては二の舞にしかならないはず。
かつて、わたくしはバッドエンドばかりをクリアしておりました。
それはつまり、男性たちに嫌われる選択肢を取り続けてきたということ。多少の性格の変動はあろうとも、彼らの本質は同じように思えます。で、あればわたくしの知識はきっと役に立つはず。
惜しむらくは、ネット情報をもとにほとんどが作業のように選択していたために若干怪しさは残るのですけれど……。
ここで注意すべきはライバルキャラ。つまり、女性の皆さまです。
嫌われる選択肢を取るだけなら簡単ですが、その対応を彼女たちに見られてはいけません。誰だって自分の好きな男性に嫌われていく女性を好きになるはずがありませんものね。
彼女たちがそばに居るときは、男性に好かれない程度に、ですが失礼にならない無難な態度を取りつつ、その上で二人っきりになったら思いっきり嫌われる。
……。
見えましたわね……!
わたくしの取るべき道が!!
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