第2話 ふしぎな掲示板

「登録制とかじゃないんだな...」

俺、厨二斗哉ちゅうじとうやはカリスが見つけたURLから、噂の掲示板『リトルスター』に触れていた。


「そもそも、どうやって見つけたんだ?」

「なんか気がついたら辿り着いてました...」

「なんじゃそれ」

この二次元白髪赤目のAIはこんなもんだ。


リトルスターはパッと見、普通のネット掲示板と何も変わりはない。

ただ不思議なのは、

『スレッドが1つしかない』

『誰も書き込んでいない』

という点だ。

故に、本当に書き込んだことが現実になっているかは実際に書き込まないと分からない。


「...書き込んでみないんですか?」

カリスは俺に不安げに尋ねる。


正直なところ、怖い。

もし本当に書き込んだことが現実になるのなら、それはとんでもない事なのだから。

だが、同時に強い好奇心もあった。


...決めた。

「書き込むか」

「おぉ〜」

「内容はどうしようか?カリス?」

「まぁ、なるべく検証がしやすいものが良いですよね」



ん〜.....



「...が欲しいかな」

「え?何ですか?」



恥ずかしいが、声のボリュームを上げた。


「お金が欲しいなぁ...と」

「なんか生々しいですね」

「う、うるさい!これが1番わかりやすいだろう」

AIの言うことをこの俺は華麗にあしらい、リトルスターに書き込みを始めた。



「えぇと、[今すぐに1万円が欲しい]...と」

「額の微妙さがウケますね」

このAIシャットダウンさせてやろうか。




...



...



「...行くぞ」






エンターキーを押す。


0001 名無しさん 2020/07/30 15:18:01

今すぐに1万円が欲しい。



リトルスターに書き込まれた。





その時だった。




「...!?」

グラグラと地面が、世界が揺れ始めた。

まるで地震のような感覚だ。

目眩のようにも感じる。


「な、なんだなんだ!?カリス!何が起こってる!?」

「秋葉原全体で地震が起こってるみたいです!」



一体なんなんだ...!?



それに...

「...!!」

頭が痛い。

ズキズキと。痛む。



頭が割れそうだ。





気がつくと地震と頭痛はおさまっていた。

物が落ちてきたりとかは幸い無かった。

「ふぇ〜ビックリしました...」

カリスは安心した様子だが、俺はそうでは無かった。



何かがおかしい。



タイミングが良すぎる。

リトルスターに書き込んだ瞬間だぞ...。

まさか本当に...




そんなわけない。




そんなわけない。




そんなわけは...





「...あ」

その時、気づいた。




マウスパッドの上に。






1万円札が1枚置いてあったことに。

ついさっきまで『影も形も無かった』のに。

あたかも当然と言わんばかりに...。



「お、おいカリス。この...1万円札、ついさっきまで無かったよな?」

戸惑いながら俺はカリスに問う。

口から出た声は少し震えていた。




するとカリスは冷静に答えた。






「え?それはサークルの活動費だ...ってあなたが置いたお金ですよ?」



は?



「い、いや俺にはそんな記憶無いが...」

身体中を巡る。冷たい恐怖。


両手が震える。


動悸が早くなる。



現実のはずなのにまるで夢でも見ているかのようだ...。



「なら、リトルスターは!?俺がついさっき書き込んだだろ?」

「だから、今から書き込むんじゃ...」

「は?な、内容は?」

「内容は思いついたって、ついさっき言ってたじゃないですか?」



今までに味わった事の無い、感覚。


まるで知らない世界に放り出されたような感覚だ。



なんだ...何が起きてる...



「なぁ、カリス」

「はい?」

「俺は今から真実しか言わない。俺の言うことを信じてくれ」

「はいはい、だから何ですか?」

明らかに馬鹿にした態度だ。すぐ分かる。


このポンコツをタコ殴りにしたい所だが、ここは抑える。




「俺はついさっき、リトルスターに書き込んだ。『今すぐに1万円が欲しい』ってな」

「え」

「そして、俺が書いたはずなのに気がついたら『ソレ』は俺が書いたことにはなってなかった。




マジで叶ったんだよ。このリトルスターは、本物だ」


「...」

かなり疑わしい視線を感じる。


そしてカリスは答えた。

「わかりました。信じますよ」

「...なぇ!?」


マジか。


「な、何で信じるんだ?」

「いやそっちが信じろって言ったじゃない...」


カリスは一息つく。

「...まぁ、あなたが嘘をついてないのはわかりましたし」

「どうしてわかったんだ?」

「斗哉って嘘つく時に目が泳ぐからわかりやすいんですよ」

「...そうか」


理由はともあれ信じてくれたのは頼もしい。


「もしあなたの言うことが合ってるとすると、リトルスターはモノホンの『書いたことを実現させるネット掲示板』となり、あなたはリトルスターを用いて『現実改変』をした事になります」


「現実改変...」


なにそれ。ようわからん...。


そとそもこんなのネット小説ぐらいでしか有り得ないだろ...。

だけど、現に1万円は現れた。


ひょっとすると。



やっぱり。



本物なのか。



また、身体を冷たい恐怖が覆う。

嫌な感覚。




「...一旦寝るよ」

とりあえず寝て落ち着く事にした。

もしかしたら夢かもしれない。


カリスは誰か来たら起こすと言った。

なんだかんだ言ってアイツは気が利く。


そんな事を思いながら俺は眠りについた。






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