第1話 都市伝説調査

この俺、厨二斗哉ちゅうじとうやは大学二年生であり、絵描きメインのオタク同人サークル『妄想牧場』のリーダーでもある。


本日夏休み7日目にして俺は、

暇だった。


時は2日前、7月28日に遡る。

____________________


「あつぃ」

なんという暑さだ。

蒸し焼きにでもされている気分だ。

オマケに昨日の夜から頭が痛い。

まぁ...頭痛自体はわりとよくあるからな...。


問題はこの暑さだ。


クーラーはあるのだが、電気代が高いので出来ればサークル仲間が来てからつけたいのだ。


俺の同人サークルの妄想牧場は、基本的に俺がオリジナルの健全な同人誌を描いたりするのがメインだ。

拠点は俺の家。

東京の秋葉原のビルとビルの間にポツンとあるボロ家だ。

パソコンやらモニターやらペンタブやら揃えようと思ったら家代をだいぶケチってしまった。

おかげでとても不便だ。うん。


今日はサークル仲間で集まって遊ぼうということになっている。

今回の夏休みは言わば<準備期間>であり、作品は冬コミで出すつもりだ。


もう正午だ...。

なのに、誰一人も来ない...。

あと3人は居るのにぃ...。


ピロンと俺のスマホの画面が点く。

「お、おはようございます」

画面に赤目白髪ロングの美少女が映っている。


彼女は『カリス』という名で、人間『では無い』。

自己意識を持つAI。人工知能だ。今は俺のスマホやPCに住み着いている...。


「そ、その〜。今は...午前9時です...か?」

あからさまに目が泳ぎまくっている。

当然...

「んな訳あるかい!!!もう正午だ!!お前もわかってるだろう...」

「すみません...寝坊してしまって...」

このようにコイツはAIなのにガチの寝坊をしたりする、色々と人間くさい人工知能だ。

まぁそういうところが気に入っているのだが。


「皆さんはまだ来てないんですか?」

「流石に来るとは思うが...」

と話していると玄関のドアが開く音がした。

サークルメンバーの面々には俺の家の予備の鍵を渡してある。色々めんどいからな...。


ドンドン足音を立てながらこっちに来たのは恐らく...。


「やっほーーー!!!!遊びにきました〜~!!!」

手を広げ走りながら来たのはオレンジ色ヘア

ーにオレンジ色の目をした『明坂晴あけさかはる』で、


「とーや、やっほやっほなんだぜぃ〜」

後からよくわからんテンションで入って来たのは『笹木みやこ』だ。


みやこと晴は同じ学校の高校生で仲が良い。

みやこは元から俺たち妄想牧場のメンバーだったが、今年の春からみやこの友達の晴も入って来た。


「家の中で走るな」

「はぁ〜い」

色々と騒がしいコンビだ。


「カリスちゃんもこんちわーーー!!!」

「こんにちは。晴さん」

「みやこもこんにちはなんだぜぃ~~」

「こんにちは。みやこさん」

俺のスマホと向き合って2人とカリスが元気そうに挨拶を交わす。


「アレ?。そういえば、海斗さんはまだ来てないんですか?」

晴がそんなことを言う。


そういえば来てないな。

「あぁ〜アイツか。もうすぐじゃないか?」



「...もう居るんだが...」



へ?

「「「えぇ!?!?」」」


「そんな感じで驚かれると一番...傷つくな...」

このガリガリで細々と喋る男は『金沢海斗かなざわかいと』。


プログラミングやらなんやら、色々とコンピューター関係に強いヤツだ。

因みにカリスはコイツが作った。


さてと...

「何故、みんなは遅刻なんてしたんだ?。カリスは寝坊というのはわかっているが...」

メンバー3人に問いかける。

「あたしはみやこのガチャガチャに付き合ってたんです!!ホントですよ!!!」

「いや疑っとらんわ」

「信じてくれなのだぜぃ~~~」

「...というよりみやこ、お前のそのテンションは何だ?」

「これはね〜、アニメのキャラの真似なのだぜぃ〜」

「ああそう...」

みやこのマイペース具合には毎度毎度振り回される。


「海斗、お前は?」

「ちょっとね...都市伝説について調べてた...」

「ほぇ〜都市伝説ねぇ」

都市伝説かぁ。昔よく流行ったものだが。

「みやこは、その都市伝説を知りたいのだぜぃ〜」

「元からみんなに話すつもりだから...良いよ」


そう言うと急に海斗は真剣な顔持ちになった。




「...『リトルスター』っていうネット掲示板があるらしいんだ」



「リトルスターなんてネット掲示板聞いたことも無いな。URLはわかるのか?」

「いいや...」

「...そもそも、そこの掲示板は他の掲示板と何が違うんだ?」

「.....具現化するらしいんだよ」

「何が?」


「そこの掲示板に書いたことは...何でも叶う。形になる。実現する...」


そんなファンタジー、ある訳が無い...

と、決めつけるのは良くないか。

わりと面白そうだ。


「何でも叶うって結構ヤバくない?。みやっちはどう思う?」

「ホントなら凄いよねぇ〜」

そりゃ『本当』ならとんでもないが、都市伝説だしなぁ...。


「あ、あの...」

俺のスマホが震える。

カリスか。

「なんだ?」

「ここから一週間、その都市伝説の真偽をみんなで調べて確かめるっていうのをやってみてはどうでしょう?。私も気になりますし」


...

暇つぶしにはなるか。


「...良し。決まりだ!」

俺はみんなに大声で呼び掛ける。

「これから一週間、『ブラックサイト調査月間』とするッ!!」

「...週間じゃね...?」

「こ、細かいことは良いんだ!。誰が一番真実に近くなれるか競走としようじゃないか!」


「おもしろそ~」

「アタシも調べてみよっと」

「僕も改めて調べようかな...」

「私もやりたいです!」


「よし!!。では一旦解散!!!」

「それよりクーラーをお願いなのだぜぃ〜」


...



...



2日前はこんな感じだった。

みんなが帰ったあと調べに調べたが、明らかにデマらしき情報しか出てこず、全くこれと言ったモノが見つからない。


次の日にはもう燃え尽きていた。

しょうがないので積みゲーを消化していたのだが、それも一日で終わってしまった。


「暇だ...詰みだ...」

「もうギブアップですか?」

カリスがスマホの画面の中でニヤニヤしている。


頼るか。

「ああ。ギブアップだ。だからカリス、お前の進捗を聞きたいんだが...」

「良いですよ」

即答かい。

「単刀直入に言います。







『リトルスター』と思われる掲示板は見つけました」


「へぇ...」



は?



「み、見つけたのか!?」

「はい!。まだ入っていないですが...」

カリスは一息つく。



そして、こう問いかけた。


「入ってみます?。『リトルスター』に」



答えは当然...



「入るに決まっているッ!!!!」




7月30日。午後1時29分の出来事だった。



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