稽古六十三日目2

 この日、ちゃんこ鍋を食べた後、皆で寮の風呂に入った。


 臼鴇が、湯の中でくつろぎながら言った。


「いやあ。今日の稽古は疲れましゅた。あれを毎日やっていくのでしゅか?」


 私は軽く頭を下げた。


「申しわけありません。負荷を上げ過ぎていたようです。しかし、やり遂げることで、必殺技を習得できるかもしれませんよ。ところで、お伝えしておかなくてはいけないことがありました。皆様、昨日も言いましたが、私たちのライバルについて覚えてらっしゃいますよね? 『アイツラ』のことです」


 ……………………。


 私達は見つめ合った後、誰もが顔をしかめる。


「覚えているも何も、今度取組をしたらぎったんぎったんにしてやるでゴザイマスよ」


「『アイツラ』は私達を愚弄したでしゅ! 絶対に許さないでしゅ!」


「ああ……ワタクシ……心の奥底から憎悪が甦って参りました。ワタクシを投げ飛ばした後に見せた、あの顔! 忘れることはないでしょう」


「うちもどす。『アイツラ』は礼がまったくないどす」


 一通り怒りの言葉を述べた後、風呂場でみんな、どんよりした。


「うふふふ。なぜそのような話を昨日今日としたのかというと、リベンジのチャンスが生まれました。以前、私が再戦を申し込んだことは御存知ですよね? 昨日、先方からメールが来まして、再戦が決まりました。もっと早く伝えるべきでしたが、メールをもらった昨日当日、私はその内容に憤慨しており、冷静になるまで、一晩の期間が必要だった次第です。なお、再戦は明日なので、今夜はゆっくりと体を休めて英気を蓄えておいてくださいね」


「あ、明日、再戦なのでしゅか?」


「明日とは急でゴザイマス」


「どうして前日の今日、筋肉痛にさせるようなわざわざ稽古をワタクシたちにやらさせたのですか!」


「そうどすそうどす! 三羽黒様のおっしゃる通りどす」


 4人は私に迫ってきた。


 う~ん。ぶっちゃけ考えていなかった。製品が完成したと聞いたので、使ってみたくなっただけである。


「ハ……ハンデですわ。確かに前回は大敗しましたが……私たちは一ヶ月前の私たちでは、既にないのです。パワーアップをしたのです。そう考えれば、ハンデも必要でしょう」


「そ……そうでしゅね。私達、『アイツラ』に勝つためにこれまで厳しい稽古に耐えてきたんでしゅもん」


「たしかに、うちらは以前のうちらではないどすえ。実力ではおそらく、越えているっ!」


「こうなっては後戻りはしないでゴザイマス。つべこべいわずにやるしかないでゴザイマス」


「よーし、皆様、景気づけに円陣を組みませんこと?」


「三羽黒様、今ですか? お風呂の中ですよ?」


「大砲様、今やりましょう! ワタクシたちの気合を高めるのですわ。おほほほ」


「分かりました。では皆様、お立ち上がりください」


 湯の中で立ち上がった私達は、円陣を組んで気合を入れるべく、叫んだ。


 『アイツラ』に目にものをみせてやろう、と。お風呂に入りに来ていた、他のローズガーデンのお姉様方や一般生徒たちが目を点にして、私達を見つめていた。

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