稽古六十二日目2
放課後、私たちは稽古部屋にて、いつもと同じメニューでの稽古を行った。筋肉トレーニングを終えた後に『4種類』と『ぶつかり稽古』を盲目的にひたすら行うことが普段の流れだ。
「ワンツー……どすこーい。ワンツー……どすこーい。ワンツー……どすこーい。ワンツー……どすこーい」
5人で四股を踏みながら、私は皆に言った。
「皆様、もう少し膝を折って、腰を落とした方がよろしいのではないでしょうか」
三羽黒がお嬢様スマイルで答える。
「おほほほ。さすがです、大砲様。ワタクシたちが若干ずつですが、腰を上げ始めていたことを見抜かれましたか。しかしながら、ずっしりと腰を落としますと、ものすごく疲れてしまうのです」
「いやいやいや。稽古なのですから、疲れましょうよ! 意識的に疲れましょう!」
「大砲様! そうすればまた、ワタクシたち、筋肉痛になってしまうではありませんか。せっかく、治り始めてきたというのに、万年筋肉痛はもうこりごりなのですわ!」
と、三羽黒。それに臼鴇も続く。
「そうでしゅ。そうでしゅ! いつも下半身か上半身のどっちかが筋肉痛でしゅ! 筋肉痛じゃない日がないでしゅ! これ、明らかにおかしいでしゅ!」
「臼鴇様、筋肉痛になってもいいのです。というか、なってください! 私達は成長期でありますので、過剰と思えるレベルでの無理は禁物でしょうが、うちの学園にはもっと、運動量の多い部もあるのですよ」
「他は他どす! うちはうちどす!」
「そうでゴザイマス。そうでゴザイマス」
………………。
最近、ダレてきているのかもしれない。今一度、何かしらの対策をしなくてはいけないだろう。
「皆様この前、流した悔し涙は嘘だったのですか! 私は悔しくて悔しくて……溜まりませんでした」
「うっ……」
全員、苦虫でも噛んだような顔をする。
「大事なことなのでもう一度問いかけます! あの時、大敗しました私達が一丸となって『アイツラ』に勝とうと流した涙は、嘘だったのですか! どうなのですかっ!」
私がそう言うと、彼女達は体をプルプルと震わせ始める。
うわぁ~。すごい単純。
「ワタクシ、あの時の光景が脳裏に浮んできました。く、くくく……悔しさが甦って参りましたわ」
「私もでしゅ! 『アイツラ』……私たちを見てせせら笑っていたでしゅ! 許せないでしゅ! プンスカプンスカ!」
「大砲様、強くなりたいでゴザイマス。そして、今度は逆に『アイツラ』を泣かせてやるのでゴザイマスっ!」
「うちは、地べた数ミリのところまで腰をおろして四股を踏むどす。よーし、大砲様、稽古を続けるどす!」
「おぉ~。皆様、やる気になったようですね。相撲の恨みは相撲で晴らす! これしかないのです」
私達はこの日、がっつりと四股を踏んだ。一日を通して、気迫が滾っていた。なお、三羽黒から以前に頼んでいた器具の用意が出来たことも知らされた。
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