一ヶ月前・稽古二十三日目
この日は『4種類』の4つ目――『股割り』を行った。
『股割り』とはストレッチのことだ。これに関しては、特に問題はないと思ったが、問題大ありだった。
女子は誰でも体が柔らかいと思っていたが、3人はめちゃくちゃ固かった。
この股割りの稽古は、どちらかというと、強くなるためというより、怪我防止のための稽古だろう。
座った状態で股を開き、後ろから背中を押してもらい、胸が床にくっつくようになれば良いとされる。
しかし無理やり背中を押すと、身体のメカニズム的に逆に体が硬くなる場合があるらしい。無理をせずに風呂上りなどにも明日以降、股割りを行っていこうと考えた。
私は、みんなに向かっていった。
「さあ、皆様。コップを持ちましたか? 持ったら、コップを持っていない方の手を腰に当ててください」
「あ、あの……これは何なのでゴザイマスか? なんだか、とても嫌な予感がするのでゴザイマス」
「御名答」
「ええー! 御名答しても全然嬉しくないのでゴザイマス。むしろ正解したことに悲しみを覚えたでゴザイマス」
「これは、黒酢です」
「ちょ、ちょっと待ってくださいでしゅ。酢で体を柔らかくするつもりなのでしょうけれど、それは迷信なのでしゅよ」
「はい。知っています」
「だったら……なんでどすか!」
「私も調べました。しかし、こんな名言もあります。信じる者は救われる。病は気から。我々は信じるのです。酢を飲む事で、体が柔らかくなると」
「そんな無茶苦茶なことをおっしゃらないでくださーい。ワタクシ、目ん玉が飛び出そうになりました。たびたび大砲様のお考えに驚かされております! 大砲様、あなたは恐ろしいお方です。デンジャラスウーマンです!」
「いいではありませんか。リンゴジュースと混ぜてあり、とても飲みやすいのですよ。体を柔らかくする話は迷信だとしても、酢は疲労回復に効果があります。というのも疲労の原因となる乳酸を退治してくれるという科学的根拠があるのですから。ただしご注意を! 酢には歯を溶かす成分があるようなので、歯には出来る限り液がかからないように飲みましょう。さあ、いきますよ。せーの」
私たちは酢のジュースをごくりと飲んだ。ま、まずい。
しかし……。
「す……酸っぱいっ。もう一杯っ!」
意外に好評だった。この日は、『4種類』の復習をした。
一通りの練習を終えた私たちは座り込んで息を整えた。
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