一ヶ月前・稽古二十二日目
この日の放課後、『4種類』の3つめ――『四股』を念入りに行った。『四股』とはスクワットの変則型である。相撲部屋で正しいやり方を聞いて、目からうろこが落ちた。アニメDVDの映像を真似て、それまで行っていた四股は四股ではなかったのだ。四股もどきだったのだ。
まず、足を開いて腰を下ろす。そして、腰の位置を上げずに片足に体重を移動させる。体重を乗せた足を真っ直ぐにし、反対の足を上げる。少し静止して、あげた足を下ろすと同時に腰も下ろす。この訓練をする事で、安定性を獲得できる。
当然のように最初、4人は非難した。
「なんという、お股をそんなに大きく開くなんて……。これまでの四股とは随分と違うどすよ!」
「これまでのお手本はインチキDVD&漫画本でした。しかしあなたたちはもうすでに摺り足の際に、お股を存分に開いているではありませんか。これはモデルの方もやっている、素晴らしい美容法なのです。ここだけの話……ヒップサイズも減少させられるのです。確か以前にもご説明したと思いますが?」
「そ、そうなのどすか?」
「それに、相撲は力比べによる勝負と思っている人が多いようですが、実はバランスの崩し合いっこなのです。四股は、そのバランス感覚を高めるのです。だったら、やらなくちゃ! 強くなるのにやらなくちゃいけないと思いませんか!」
「……確かに、強くなるのであれば……やるべきどすな!」
「そうだ! そうだ!」
4人は全員、やる気を見せた。
「さあ、皆様。ご一緒に、ワンツー……どすこーい」
「ワンツー・どすこーい」
「はい、反対の足で、ワンツー……どすこーい」
「ワンツー・どすこーい」
200回から300回を目標にした。しかし、初日はみんな100数回でダウンした。
転ぶ者が多発した。
「き、危険ですわ。四股……危険です」
「いいえ。三羽黒様、あなたにバランスがないだけ。バランス感覚が鍛えられれば、怖れるに足りず!」
この日、私達は延々と四股をやり続けた。
翌日、こりない4人は足の筋肉痛を理由に学校を休んだ。2時間目の前に、私が無理やり登校させにいくも、居留守を使って部屋から出てこない。
知恵をつけたのだ。
私は寮の管理人さんに頼んで、部屋の鍵を空けてもらった。結局4人とも、この日も無理矢理登校させた。
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