なぜ神は残酷な世界を作ったのか?


 俺は神なんか信じちゃいなかったが、よくこんなことを考えてた。

 仮に、この世界を作ったのが神だとしたら、なんでこんなぐちゃぐちゃで血みどろな世界にしちまったんだろうな?

 もう少しまともな世界は作れなかったのかな?


 残念ながら生きている間に答えは得られなかった。が、死んだ後になって神を名乗る野郎が出てきたもんだから、思い切って聞いてみた。


『暇だからだ』


 奴はそう言い切った。

 こいつは確実に偽物だと思った。

 そりゃそうか。俺みたいなチンピラのところに本物の神様が来てくれるわけがねえ。


 すると、そいつは俺の思考を読んだかのように言った。


『お前が考える神とは、そんなに立派な存在なのか?』


 違った。

 つい一般的なイメージで考えてた。

 俺は神のことを、とんでもなく無慈悲で無責任な奴だと思ってたんだ。

 そう考えると、目の前のこいつが神ってのも頷けるような気がしてきた。


『実際、神は無慈悲だ』


 認めるのかよ。

 それじゃあ毎日熱心に祈ってる奴らがバカみてえじゃねえか。


『バカではない。好きでやっていることだ。彼らも暇なのだろう』


 なんてこと言うんだ!

 あんた、正真正銘のクズだな。裏社会でも、あんたほどの悪党は見たことがねえよ。


『神の所業に善悪はない。すべては暇つぶしだ』


 神どんだけ暇なんだよ!

 ちくちょう。なんなんだよ。

 俺の過酷な人生は、すべてこいつの暇つぶしのための茶番でしかなかったってことかよ。前世の罪滅ぼしだとか、人類が進化するための試練だとか、そういった意味すらなかったのかよ。


『大して面白くもなかったがな』


 しかもそれかよ!

 本当に神ってのは、考え得る限り最低最悪の野郎だな。どうやったらそこまでの鬼畜になれるんだよ?


『知りたいか? ならば、お前も神になってみよ。そうすれば分かる』


 は? なんだって?

 俺が神に?

 神って、そんな手軽になれるもんなの?


『なれる。それも全知全能の絶対神にな』


 マジかよ。

 いや、だとしても、俺みたいなのが神になっちまっていいのかよ?


『その方が面白そうだ』


 …うん、もう分かったよ。あんたがそういう奴だってことは。


『勘違いするな。そもそも、人間基準の善悪など神には関係ない。聖人も偉人も凡人も極悪人も、等しく神のオモチャなのだ』


 そこは嘘でも「神の子」とか言えよ!


『神が人間相手に気を遣うとでも?』


 ないわな…。

 けど、そんな力を俺に与えて、あんたに反逆したらどうするつもりだ? 全知全能ってことは、神殺しもできるってことだよな?


『できない。お前が力を受け取るのと同時に、私は完全に消滅する。蘇らせることもできない。それだけは唯一の例外にしておく』


 ずるいな、おい。

 やりたい放題やって、最後は勝ち逃げかよ。


『それが神だ。断言しよう。お前も神になればそうする』



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