第21話 母
母 03・262023
母が電話に出た。
電話に出るなんて、普通のことだ。でも、母は昨年の七月に死んだ。
私はアメリカに住んでいて、母の死に目に会わなかったし葬儀にも出席出来なかった。
母の誕生日の六月に田舎の家に電話を入れた。
田舎の家にはだれも住んではいない。
数度電話の呼び鈴がなった後、「はい」と母の声がした。
「母さん!いきていたの?」私は声を高くしていた。
「すすむ?」私の名前だ。
「そうだよ。アメリカから電話しているんだよ」
「みんな、元気か?」母が言った。
「元気だよ。みんな元気だよ。昨年母さんが亡くなったと聞いたから・・・」私は言葉を失っていた。感情をコントロールできなかった。
「進、泣かなくていいよ。私は元気だよ」母は言った。
そして、電話は切れた。
「母さん、かあさん!」私は、大きな声で母を呼んだ。幼い日の記憶が溢れてきて、私の心は故郷の空に、浮かんでいた。
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