ドラッグストア
あの女子高生は、あの時の女子中学生だ。
一緒にいた男女は何者だろう?唯ならぬ抜け目なさを感じる。
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オレは学生時代から勤めているドラッグストアで、卒業後もフリーターをしていた。
先月からは妹の春子も一緒に勤務し始める。
4月25日、火曜日
16時頃にその女の子は来店した。
女の子の名前は知らない、いや忘れてしまった。
その女の子に会ったのは、まだオレが在学中の話だ。
オレは彼女を助けた。いや、本当は助けたというほど大袈裟な話ではない。
彼女は見かけない顔だったから、たまたま店に寄った一見さんだったのだろう。現に今日まで見かけることはなかった。
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これは昔の話。
その時オレはレジで学生服を着た女学生の接客をしていた。見かけない制服で身長も高く発育も進んでいたから女子高生だと思っていた。
レジに向かって淡々と仕事をしていたオレは、何か気配を感じとって不意に彼女へ顔を向けた。
驚いた、女学生はじっとオレを凝視していたのだ。
目と目が合う、いや彼女の目は焦点が合っていなかった。
『何処を見ているんだ?』とオレがそう思う刹那、女学生がゆっくりと膝から崩れ落ちていく。
それは、本当はゆっくりなのではなくオレにはそう見えただけ。
反射的に手が伸びて彼女を掴み、カウンター越しだが彼女を支えることができた。
気を失った彼女を抱えてレジから薬局コーナーに移動させる少しの間、華奢な身体に不釣り合いな胸の膨らみが微かに腕に当たっていた。
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幸い客は少なく、店内は大騒ぎにはならなかった。
オレも内心は驚いていたが、元々顔に出る質ではなく淡々としていたから周囲もそれに引っ張られて落ち着いたようだ。
苦しそうな様子はなく、貧血だろうと店長が話していた。案の定、直に意識は戻ったが少し朦朧としている。
親御さんに連絡したいから連絡先を教えてほしいと、ゆっくり優しく店長が話しかける。
彼女は学生手帳を取り出して店長に手渡す、それを預かると店長はオレに彼女を見ているように話し事務所に入っていった。
彼女も次第に意識がハッキリとして、15分後に母親が車で迎えに来る頃には、オレと軽く世間話ができるまでには回復していた。
名前は聞いたが流石にもう忘れている、女子高生ではなく女子中学生だということはその時に知った。
後日、母子ともに店に御礼に来たらしい。
オレは勤務ではなかったから会えなかった、同僚には美人の人妻や中学生と知り合いになれるチャンスだったのに残念だったなと揶揄われた。
馬鹿に話を合わせて『いやーマジついてない』などと戯けて見せたことを何故かよく憶えていた。
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これは今の話。
その時の女子中学生は女子高生になって来店した。
比較的近くにある高校の制服に身を包んだ中身は、あの時より背も伸びて胸の膨らみも増していたが、変わらず均整が取れた姿態だった。
美形でシンメトリーな顔立ちは作り物っぽく、身体つきも同じように作り物のような美しさだった。
つまり生っぽくないから艶かしくない。時を経て発育した女性的な特徴も、何か出来過ぎていて空々しい。
まだ中学生の時の方が発育の良さと幼さのアンバランスさで、かえって艶かしく色香を放っていた。
しかし煽情的でなくとも存在感は抜群だ、店内を歩けば目を引き誰しも振り返る。
その美しさに大方の人は、羨望や嫉妬を抱くことを抗えないだろう。
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店内で彼女はチラッとオレを見た。
オレは見逃さなかったが、気づかない風を装う。
何故ならオレは他の視線を感じていたからだ、彼女は狩りのためのデコイだ。
獲物はもちろんオレだろう。
彼女が入店する前から、オレは自分に向けられている視点に気づいていた。オレに関心があるなら、それはヤバイ奴だ。
そう考えたオレはその視線に気づかない風を装い相手の狙いを考えていた、そう考えている時に彼女が入店してきた。
オレは直感を信じて生きている。
直感を蔑ろにすると、その場凌ぎで上手くいっても結果取り返しがつかなくなるケースが多い。
彼女はオレを監視している奴とグルだ、そう直感した。だから両方の視点を無視して気づかない風を装う。
そして棚卸しの仕事でメモをするフリをして『店を出たら女子高生を尾行しろ 他に仲間がいる注意』と書いたメモを、すれ違い様に春子に渡した。
春子は何食わぬ顔で倉庫に下った、裏口から外に出て待機する気だろう。
彼女がレジに並ぶ頃には、オレに向けられた視線は消えていた。とはいえ油断はできない、オレは女子高生が店を出た後も店内で仕事を続けた。
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