第15話 崩壊
無数の光の矢が夢喰花に向かって降り注ぐ。仕留めた、と思ったのだが…身体のあちこちに矢が刺さり、苦しみながらも弦は暴れるのを止めない。それどころが、最後の力を振り絞るかの如く周囲を破壊し続ける。
「おい、止まらねえぞ。どうすんだ?」
「そんなの…最後の手段しかないわよ」
流石は我が師匠、アンジェラ。策があるのかと思いきや。彼女はくるりと踵を返し。
「逃げるのッ!」
有彦の手を引きながらスタコラサッサと逃げ出した。
「はー?!ちょ、まてよ、…おいッ」
ツッコんでたらやられる。俺も彼女に続いて走り出したところ。
有彦が、アンジェラの手を振りほどく。そして夢喰花の正面に独り躍り出た。
「有彦ッ!」
このままでは、有彦は突進してくる花の巨体に轢かれるか、弦に弾き飛ばされる。
慌てて俺が駆け戻ろうとーー…
「お姉ちゃん。独りでいっぱい、苦しんでた人を助けてきたんだね。でも、大丈夫。それは僕の花が引き受けるから。お姉ちゃんはーー…眠って。」
小さな両手を、まるで相手を抱き締めんとするように広げる有彦。
彼の身体がキラキラした目映い光に包まれる。その小さな胸板から、薄く透けた花が現れた。
突進してきた夢喰花は、その花にぶつかる寸前、動きを止め。同じ光に覆われていく。
光の中で。建物と同じぐらいの高さがあった夢喰花が徐々に萎れて。やがて、少女の体だけが残った。彼女は一糸纏わぬ姿でくたり、とアスファルトの上に倒れ寝そべる。
有彦も、倒れた。それは気絶に近い様子で。膝をつき項垂れたかと思うと、前にぱたり、と上体が傾いたため、俺が滑り込んでその身体を支えた。
「有彦、しっかりしろ、有彦ッ!」
目を閉じぐったりした様子の有彦に声をかける。息はしているようだが、意識は戻らない。
アンジェラは花売りの少女を見ていたようだ。彼女は此方に近寄ってきて、首を横に振る。
「…亡くなってる。ううん、あれは随分前に亡くなった遺体だわ…少なくとも一週間は経ってる」
「夢喰花は遺体に寄生してたのか?」
「わからない…それより、有彦に回復の術をかけるわね。聖なる癒し《ホーリーキュア》」
アンジェラが呪文を唱え、有彦の額に触れた。すると彼は薄ら目を開けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます