第14話 力を合わせて

ぽっかり空いた壁の穴から外に連れ出されると、通りも酷いことになっていた。

街灯はひしゃげ、レンガの壁は崩れ。道路もひび割れが激しいし、倒れている人の姿も。


俺を拘束しする以外の、何本かの弦がうねうねと塊となっている。そのてっぺんを束ねるように咲く巨大な花。ピンクの花弁が弓なりに開くその中心には、女性の上半身が生えている。


花売りの少女だ。


変わり果てた姿の彼女は、人間の上半身が本体なのか、巨大な花が本体なのかよくわからない。虚ろな瞳をしている。


「花はッ…いらねえって言ったろ…離しやがれッ!」


渾身の力を込め、頚から弦を引きちぎろうとしたが叶わず。このままでは意識を失う。


「静寂ッ!空気のエアカッター!」


アンジェラが善き精霊の力を借り、空気を刃のように鋭くさせて弦を切り裂く。俺の頚の巻き付きが緩んだ。


「ありがとよッ!」


靴先から飛び出しナイフを出し、夢喰花の花の根元を蹴りあげる。それで漸く俺は解放され、路上に着地した。


アンジェラの横には依頼人の男性はいなかったが、有彦は付き添ったままだ。


「なんで逃げなかった?!」

「あんた独りじゃ無理でしょ…念を合わせて。いくよ!」


彼女の呼び掛けに応じ、素早く十字を切る。


「天にまします我らが父よ、力を貸したまえ。光のライトアロー!」


一瞬だが、天使たちが空から舞い降りてくる。彼らが持つ弓から放たれた聖なる矢が、夢喰花に向かっていく。


「こいつでどうだッ!」

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