第3話 一緒に
訪ねてきたのは身なりのいい中年男性だった。
「貴方がエクソシストの九条静寂さんですか?」
怪訝そうな様子だ。やっぱりもっと厨二臭い服を着ているべきなのか。とにかくソファーに座って貰い、話を聞くことにした。
「実は妻の様子がおかしくて」
彼の話はこう始まった。最近妻が、夜中にこっそり出歩いているのだと。一度尾行したが失敗したという。
「奥さんに事情は聞いてないんですか」
「それは…もし浮気だったらと思うと」
悪霊に取りつかれてフラフラしているより、浮気の方が生命の危機はなさげだが。まあ、人が何を嫌かなんて人それぞれだ。
調べて浮気だったらどう報告したらいいのか?と思いながら。俺は依頼を引き受けることにした。
さて、まずは調査からだ。事実がはっきりしないことには動きようがない。早速出掛けよう。
と。有彦がじっと此方をみている。
「仕事が入ったんだ、いい子で留守番しててくれ。お土産買ってくるから」
「もうお父さんしてんじゃない」
ケラケラと笑うアンジェラを一瞥する。すると有彦はとてとて俺に近付いてきて。
「…一緒、行く」
俺の服の裾をぎゅっと掴んだ。えー…
こうなったら仕方ない。泣こうが喚こうがほっとくのも手だが…俺は、子供に悲しい思いや寂しい思いをさせたくないから。
「わかったよ、ついてこい。ただし、仕事の邪魔すんじゃねえぞ」
「うん!」
元気良く応える有彦。初めて、彼の笑顔をみた気がした。
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