第2話 有彦
助けた少年は日本人で、名を有彦と名乗った。
未成年であるから、当然両親の元へ返してやらねばならない。しかし、彼は頑なに身元を明らかにはしなかった。
「仕方ねえ、警察に連れていくか」俺がため息をついてそう言うと、大きな目に涙をいっぱい貯めて、いやいやをする。
そんな風にされたら、警察に置いてきてはいサヨナラとか出来るわけがない…
「いいじゃない、お父さんしたげれば」
大股開いて椅子に腰掛け、林檎を食べているのは相棒のアンジェラ。今、俺達は有彦を連れて俺のアパートに帰って来ている。結局連中は逃してしまい、証拠も得られなかった。まあ、俺達の仕事は頭のおかしい人間どもをふんじばることでも、子供の保護でもないんだが、本来は。
俺達エクソシストが闘うのは、悪霊とか邪神などと呼ばれる、人ならざる存在だ。
この世界には人間以外が沢山存在する。人間と共存できるもんはいい。が、人間に危害を加えるもんは、放っておくわけにはいかないのだ。
俺とアンジェラは神の力を借り、それらを退治する。つまり、保父さんなんかやってる暇はない。
「俺、お父さんって歳じゃないんだけど?」
「えー歳とか関係ないじゃない。うちの教会で預かってもいいんだけど、静寂に懐いてるじゃん?この子」
確かに、保護してから有彦はずっと俺にべったりだ。怖かったんだろうなと思うから、まとわりつくのを放っておいたが。
「しゃあねえな。じゃあうちに居ていいぜ。そのかわり、シャノンに餌をあげてくれよな」
シャノンは、俺が飼っているシャム猫である。有彦は嬉しそうにとてとて歩いてシャノンのところへ行き、頭を撫でている。
「有彦くんから、逃げたアイツらについて聞き出せたらいいんだけど」
アンジェラが呟くが、どう考えても無理だろう。シャノンにひっくり返され、床でじたばたしている少年を眺めていると、インターホンが鳴り響いた。
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