第8話 middle phase 3 ~ミドルンからの招集~
窓の外では半透明になったミドルンが、必死でハンドサインを送っていた。
――ミドルン……?
一番廊下側の席のるりが目を凝らすが、ミドルンがただただ楽しそうに盆踊りを踊っているようにしか見えなかった。
――何を踊っているのかしら、ミドルンは。授業の邪魔をしないでほしいわ。
ふざけているようにしか見えないミドルンを黙殺し、るりは再び教科書に目を落とした。
一方、窓に近かったしずくとルチルは、しっかりとミドルンのハンドサインを見抜いていた。
『商店街で怪物が暴れているミド! 授業を何とか抜け出して商店街に急ぐミド~!』
口パクではあるがしっかりとミドルンの連絡事項は二人に伝わり、しずくはいつものようにどう授業を抜け出そうかと思案する。
「……先生」
「どうした、吊舟」
おずおずと挙手をしたしずくに、鈴原先生は声をかける。
「すみません。少し、具合が悪くなってしまって……」
「大丈夫か? 無理はしないように」
「少し保健室で休めば大丈夫だと思うんですけど……」
そう言いつつ、しずくはちらりとルチルとるりに目配せする。
「そうか……それなら、誰か付き添いが居た方がいいな」
「なら、私が付いて行きますわ」
ミドルンのハンドサインに気づかなかったるりは、純粋にしずくを心配して付き添いを買って出た。
「ありがとうございます、るりさん」
お腹が痛そうな演技をしながらしずくが立ち上がるが、その直後――。
「あたしもお腹痛い!」
左斜め後ろの席のルチルも勢いよく挙手した。
便乗としか思えないルチルの発言に、鈴原先生をはじめクラス中の頭上に一斉に疑問符が浮かぶ。
「……莟もか」
「うん」
鈴原先生はじっと睨むようにルチルの目を見つめる。
「……分かった。行ってこい」
「はいっ!」
絶対に嘘としか思えないがルチルの眼力に気圧され、鈴原先生は許可を出してしまった。
「あまり保健室の先生に、迷惑をかけないようにするんだぞ」
「は~い。行こうっ! しずくちゃん、るりちゃん!」
完全に二人を名指しして教室を出ていくルチルの後を、しずくが苦笑を隠しながらも付いて行く。
「二人とも本当に具合が悪いのですの?」
少し天然が入ったるりが首を傾げながら尋ねるが、それに二人は黙ったままだった。
「では先生、失礼いたします」
礼儀正しいしずくはドアの前で一礼すると、静かに戸を閉めた。
「何かこの間もこんな事あった気がするな……」
「ま、しょうがないか。調子悪いんだもんね……」
日ごろの行いが良いお陰か、プリズムガールの仕事で何度か授業を抜け出しても、礼儀正しいしずくとるりの周囲からの評価はあまり下がっていなかった。
「けど莟はちょっとよく分かんないね」
「便乗しただけじゃないのかな、アレ……」
それに比べ品行方正とは言い難いルチルは、完全にサボりと思われていたのだった。
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