第11詠唱 鳥と少女と魔法少女と

ー 裏の世界

時は巻き戻り結衣が裏の世界へ行く4日前......


 星が消え始め空は紺色になってくるそんな時、近藤高雪(こんどうたかゆき)は亀のように首を縮め、白い息を吐きながら足早にとある寺に訪れる。


「来たか」


 黒いジャージ姿で鳥居に寄っかかって待っていた礼司は、高雪を見つけると眠たそうに手を振る。


「見せたいものってなんだ?」

「まぁそれはお楽しみだよ」


 彼はへへッと笑いピョンピョンと跳ねる寝癖を揺らす。


 寺の庭は無駄にだだっ広く、左に大きくもなく小さくもないなんとも言えない仏像とお賽銭箱、右にはごく普通の一軒家、そして白タイルに導かれると二階建ての木造の家に着く


「では俺は寝るんで!翠(みどり)ばぁちゃんはいつも通り呼べばくるから」

「まったく清々しいほど正直だな、ありがとう」


 ニコリと笑い彼の背中を見送ると「困ったもんだ」と呟き中に入る、手を3回叩き間を空けてからもう3回叩く、すると長い廊下の向こうからのっそのっそと歩く亀の上に正座する干しぶどうの様なおばあちゃんが暗闇からゆっくりと現れた。


「おはようさん高雪」


 「ハッハッハ!」と笑う彼女に「おはようございます武田さん、見せたいものってなんですか?」と目の前に立つ陸亀の頭を撫でながら聞く。


「チョイとお前に人形を作って欲しくてね」

「人形、というと妖術ドールですか?」

「そうゆう事、これが必要な子が居るからね」


 その言葉に嫌な予感がした高雪は「もしかして」と口を開いた。


「もしかして美羽ちゃんですか?」

「そう、君のカンナから聞いてね、これからあの子には必要になると思うんだよ」

「僕はあの子の記憶を蘇らすのは賛成ですが、戦う術(すべ)もまだ身に付いていないあの子1人に戦わせるのは反対です!」


 すると翠はハァ〜と深いため息をして骨に皮をつけたハリボテの様な体を小さくした。


「あの子は今戦わなくちゃ私たちの求めている様な姿まで復活できない、ずっとあのままだよ」

「しかしそれじゃあ、なる前に死んでしまいますよ」

「大丈夫だよ、これからしばらく礼司を近くにつけるつもりだ、それとそんなに心配ならお前も参戦すればいい話だろ?」

「う......」

「まだあの頃のトラウマが残ってるな?まぁ今のお主にそこら辺を期待してはいないがな」


 長い廊下を進む翠の足が止まり周りのドアより一回り小さな木の扉の前に立つ


「この頃リフォームしてなワシの作業場が出来たんだよ」

「倉庫かと思いました」


 ドアを開けると部屋の中には本物の人間の様なシリコン製の人形からデッサン人形の様ないかにもという操り人間まで幅広い種類の操り人形が天井からぶら下がり、周りには人形を作るための道具や素材があった。


「これだけで人形ショップが建てれそうですね」

「今は独身の陰陽師達の間でリアルドールが需要あるから、

それで一儲けするのもアリだなハッハッハ!」


 木の匂いがフワリと鼻先を優しく撫でる部屋の中、翠は一体の体育座りをしているほぼ完成された人形を台車に乗せて持ってくる。


「シリコン製の子供型人形ですか、なかなか気合いが入っていますねぇ」


 ちょうどリリィと同じぐらいの背だろう女の子の見た目をした人形をプニプニと突っつく。


「だろ?私の全ての技術を入れたからな!コレは脳天を二回押すと鞄に変身するんだよ」


 実際に言われた通りにやると人形から木の箱に変形した。


「ほぼ完成品してますね......私が手を加えるところは無いのでは?」

「そう思うだろ?」


 そう言い彼女は人形の顔をクイッと上げ瞼(まぶた)を指で開くとポッカリと穴が空いていてた。


「もしかして眼を?」

「そういう事、髪の毛は私が作るからお主は目玉を作ってくれ、ほれ、得意だろ?」


 妖術人形は眼が命と言われていて、眼球の仕上がりにより戦う時に人形の性能が変わるのだ


「まぁあの子を守る道具になるのならやりますけど......でも髪の毛はどうやって用意するんですか?最低でも一本は使用する人の髪の毛が必要になりますけど」

「それは大丈夫」


 もう作戦を立てているのか自信満々にニヤリとポケットから2枚の札を出す


「それは変化(へんげ)の札」


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「けんじいってらっしゃーい!」


朝7時、いつも通りリリィは大きく手を振って笑顔で健二を送り出す


「行ってくるよ美羽」


頭を撫でて家を出る。


「いっちゃったぁ......」


寂しそうな表情をしてため息を1つ吐くと

リビングに戻る。


 健二から出されてる宿題をサラサラと問題を解いているとピタリと鉛筆が止まる。


「どうしたんチンチクリン、はよやりぃや」


 リリィは突然聞こえてくる声にビクッと飛び跳ねテーブルの上にチョコンと座ってる守護紙の前を向いて固まる。


「まさかまた”鳥さんだれ?”から始まる訳じゃないやろな」


 ポカーンと口を開けてコクリコクリと頷く彼女に呆れたように溜息をつく


「ウチは守護紙やで、いい加減覚えろやどアホォ」

「ご、ごめんなしゃい」

「一日経つと記憶が無くなるのも問題やな......記憶を消す異術を守る方法は無いものかのぉ」

「きおくが、けされる?」

「お前が一緒に住んでる健二っていう男が記憶を消してるんだ」

「けんじが?そんなことするはずないじゃん」


 なに言ってるんだコイツというような顔をするリリィに「ムカつく顔やな!チンチクリン!」と頭をクチバシでコツコツと突っつく。


「アタタタタ...にゃ〜やめて〜」


 すると何か思いついたのか「せや!」と突っつくのをやめる


「な、なんやぁ〜」

「ウチの喋り方真似するなアホ、そんな事より外に行くで!ココで待ってても仕方がない、ウチらも動くで!」


 渋い顔をし「オソトサムイ」と言おうとしたが守護紙の圧に負けて「わかったよぉ......」と急いで宿題を終わらせてから気だるそうに準備をして外に出た。


「で?しゅごしんさん、どこにいくの?」

「前進あるのみや!行くでー!」


適当にテクテク歩いているとニャーンと深い緑色をした猫が肩の上に乗る


「あ、かわいいネコさん」


 肩から飛び降り一回転して女性の姿に変えると「やっぱり忘れてたか」と眉間に綺麗な川の字を作りチョップする


「おねえさんだぁれ?」

「お姉さんはカンナよ、困ったもんね」

「ご主人こんな所で何してはるの?」

「魑魅(すだま)がいないかのパトロール」

「すだま?すだまってなぁに?」


やれやれとツインテール を揺らす彼女はリリィの方を見る


「魑魅っていうのは悪霊の事で人に取り付くと悪い事をするまぁ妖怪的なヤツ」

「おばけこわい」

「アンタみたいなちびっ子は直ぐにとりつかれちゃうかもね」


中腰になり怖がるリリィのおデコをペチッとデコピンする。


「そんな事よりアンタ達は何してるのよ」

「おさんぽー!」

「せやせや、ただのお散歩です〜

ってどアホ!ウチらはやる事のない老人か!このチンチクリンが毎晩あの男に記憶を消されるから、対策の為に異術師を探してるんです」


 その話にカナデは「なら」と遠くにある豆粒程の教会を指差した。


「あそこに行ってみれば?異術師かどうかは知らないけど、高雪がまえ訪れた時に「なにか感じる」とか言ってたわ」

「へ〜」

「行ってみようチンチクリン」

「うん!いこぉ〜」


 するとカンナはズイッと三枚の札を差し出した。


「もしもの時に使いなさい、体に貼るだけでいいから」

「おねえさんありがと」


 渡された札を大切そうにポケットにしまうとカンナの方を見てニヘラと笑う


「勘違いしないでね!あ、アンタのためじゃないんだから!」


 何故か顔を赤くして風のように走って消えていった。


「どうしたんだろ」

「ご主人も素直じゃないのぉ、とりあえずウチが教会までの道を確かめてくるわ、せやからチンチクリンはそこでまっとって」

「あーい!」


 守護紙は上へ飛んでいくとどうしたのか直ぐに下へ戻って来る


「どうしたの?」

「不自然な歪みが見えたさかい、もしかしたら目と鼻の距離かもしれへんとりあえず行きまひょ」


 コクコクとリリィは頷き守護紙の後を走って追う


 大通りをなぞるように真っ直ぐ行くと、綺麗なレンガの塀に囲まれているわりには木や花が枯れて教会は所々崩れ廃墟になっていた。


「こわ......ぼろぼろだねぇ」

「幻覚妖術か、他にもなんか妖術がかけられてそうやなぁ、勝手に入るなよ」


 保護者の様に忠告するが、聞いていなかったのか引き寄せられるように入っていった。


「アホー!」

「どうしたの?凄くキレイだよ」


 塀の外から見た風景とは違い、中に入るとそこは真冬に咲く花であるクリスマスローズの桜色の海になっていて先を見ると、まだできて間もないのか教会は綺麗で屋根の上のピカピカか十字架は、歓迎するように太陽の光を反射し神々しくまばゆい光を放つ。


「なんかここやな感じがせえへん?ダルくなって来た......」

「そう?わたしはむしろからだがかるくなって、げんきになったよ!」


 体から何かが湧き出るような感覚に懐かしさを覚える彼女はピョコピョコとジャンプする。


「鬱陶しいわ!警戒心ないやつやなぁ」

「はやくきょうかいにはいろ!」

「ちょっ、まてぇや」


 ピョピョイ!とリリィの頭に乗りハァと一息つく


 来た事に気付いたのかドアまで来ると、庭に咲いているクリスマスローズが人間になったような桜色の髪が綺麗なシスター服を纏う女性がドアを開けて出てくる。


「ようこそケルトル大聖堂へ、可愛いお客さんね初めてかな?ふふふ」


 女性は中腰になりリリィと目線を合わせる


 周りの人とは違い鼻が高く掘りのある顔に守護紙は「「なんやこのシスター不気味やな、シスター服を着てるのにあんなメカメカしいゴツいベルトして、怪しいさかい注意しぃや」と耳打ちをする。


 見ると温かみを感じ安心する彼女の微笑みに、リリィは緊張が吹き飛び何を離そうとしてたのか忘れる。


 すると女性はリリィの着けてる変身ペンダントを見ると、どうしたのか抱き上げて走って大聖堂の中に入っていく。


「みんな!ちょっと来て!」


 掃除をしていた3人のシスターは、「どうしたの?」と駆け足で集まるがリリィも見ると

慌てた表情から真顔に戻る。



「...っていつもの病気か、サメロはほんと小さい女の子好きだね、クズロリコン…」

「ほんと、休みの聖堂に連れ込むとか、うわぁひくわ...クズロリコン」

「事件になる前に外に返してあげなさい、私達も暇じゃないのよクズロリコン」


 3人にゴミを見る様な目で見られるサメロを見て、

守護紙は「さんざんな言われ様やな」と呆れた様に言う


「クズロリコンじゃなーい!そうじゃなくてこのペンダントを見て!」


 やれやれとしょうがなくリリィのペンダントに目をやると全員持っていたモップを床に落とす。


「魔導機動隊の変身ペンダント?なんでこの子が......クズロリコンも時には役に立つのね」

「この魔石に掘られた紋章は5地区ね、クズロリコンよく見つけたね」

「この子もゲートに襲われたの?クズゴミロリコンどうなの?」

「いやもうわざとでしょ!ねぇ!絶対わざとだよね!あと1人だけ一言多いし!」


 すると頭の上に乗ってる守護紙がコツコツと突っつきリリィを呼ぶ


「なに?」

「ちょっと聞きたいことがあるさかい、ウチの口になってくれへん?」

「えぇ......」

「 "お姉さん達は異術師やろか?"って聞け、自分の為や」


 ワーワー言い合う4人におどおどしながら「あ、あのぉ...」と 話しかけると全員こちらを向く


「おねえさんたちはいじゅつしやろか?」

「自分しばかれたいのか?ウチの方言までマネしのうてええんや!」

「じぶんしばかれたいのか、ウチのほうげんまでマネしのうてええんや」


 違和感を感じたサメロは「誰かの口になってるのかな?キミ以外に誰かいるの?」と聞く


「うん!しゅごしさんがいるの、あたまのうえに」


 "守護紙"という言葉に「妖術師の子供?」や「魔導機動隊のペンダントは何処かで拾ったとか?」と

袋叩きにするように聞く


「え、いや......」

「おいチンチクリン、"私は記憶を無くしてるんです、だから分かりません"て言いや」


 リリィは3人の圧に少し怖がりながらも言うと、

全員顎に手を添えて「そう言うことだったのかぁ」と赤べこみたいに頷いた。


 話を聞くと向こうの世界からここに転移すると脳に負荷が掛かるんだとか


「まいにちいじゅつで、きおくをけされて......えーと」

「困ってるから助けてって言うんや!」

「あぁそうだった、こまってるからたすけて」


 そう言うとサメロは「可哀想に…ねぇこの子を助けてあげようよ、記憶が消えてるってことは魔導機動隊かも」と3人に言う


「この世界に来たという事は魔法少女に間違えはないだろうけど......こんな小さな子が魔導機動隊に入れるわけがないでしょ」

「私は賛成、異術という事は魔法の事よね、この子があの女に襲われる可能性もあるし助けてあげましょうよ」

「確かにそうだな、守護紙よこの子の情報をもっとくれないか?」

「今知っとる限りじゃ、谷川健二っちゅう男の家に住んでて、魔法陣で記憶に鍵がかけられとる、それとこの子の家に異術で封印された部屋がある、今知っとるんはそれだけやな」


 リリィを通して話を聞くとサメロは「ちょっと頭を出して」と腕まくりをする


「なぁに?」

「いいから」


 リリィは小さな頭を出すと彼女はポンッと手をつけて魔法唱える


「コレは厄介(やっかい)な呪術ねぇ......」


 何が見えているのか、目を瞑る彼女に3人はゴクリと固唾をのむ


「それで?その呪術は解けそう?」

「魔女の扱う上級魔法だから難しいわ、しかも二重にかかってる......でもこの魔法の匂いは嗅いだ事があるわね」

「誰なの?」

「おそらく”あの女”だ」

「しゅごしさんがきおくをけすまほうから、まもるまほうはあるか?だって」


 リリィの頭から手を離し目を開けると「あるわよ、でもまずはこのややこしい魔法を少しでも解きましょ!ヒビを入れる事ならできるから」と立ち上がる、その時だった。


 壁や天井にはめ込まれた鮮やかなステンドガラスがまるで何かを忠告するように真っ赤に染まる。


「強力な魔力が来たみたいみんな警戒を、サメロはその女の子を連れて地下の避難場所へ」


 サメロは頷いてリリィをお姫様抱っこして移動しようとするが、一本の大理石でできた柱が爆発して行く手を阻んだ。


「余計な事はしないでちょうだい」


 大聖堂に響き渡る気の強そうな女の子の声に全員は声の聞こえる方を向くと、壁に飾られた天使の像の頭の上に黄色いリボンで結んだ目の色と同じ赤いツインテール を揺らすトールが頬杖をつきながら腰を下ろしていた。


「今すぐその子をコッチによこしなさい!」


 3人はサメロと怯えるリリィを守るように前に立つ


「おそらく逃げる道は無いでしょ、作戦Bよみんな、持つのは10分その間にどうにかしなさい」

「早めにね」

「まぁ子供に負けるほど弱くないけど」


 そう言い腰に巻いてるベルトのバックルに木のプレートを縦に差し込んで横に倒すと、

桜吹雪が舞いシスター服から着物姿に変わる


「「「魔導機動隊、推して参る!」」」

「まぁそうなるか」


 脇差の刀を抜いて構える3人に、面倒くさそうにため息をつくと指を鳴らして金縁ローブを着た黒灰の魔女を呼んだ。


 静かな大聖堂は一瞬にして戦場に変わり、魔法が飛び交う中サメロは「痛いけど我慢して」と言うとリリィが話す間も無く強引に強く抱きしめ魔法を唱え始める。


 ぼんやりと2人がいる床から緑色に発光する魔法陣が出てくる、緑色の光が強くなるほどリリィの頭が鉄の輪で締め付けられたような脳の芯からキリキリとした痛みが強くなり、我慢できず痛みを紛らわす様に体を動かそうとするが万力のように強く抱きしめられていたため身動き一切出来ず、目を限界まで開いて腹の底から苦痛の叫びをあげた。


「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛!」


 しばらくすると頭痛がピタリと引き突然何かがヒビが入った音が耳の奥から聞こえると、脳裏に風のように勢いよく次々と背景が変わった。


「3人ともコッチは終わった、逃げるわよ!」


戦ってる3人はソメロの声を聞くと攻撃を避けながら懐からクリスタルを出して「ティデイト!882(ハチハチ二)!」と叫び転移する。


「チッ、転移クリスタルなんて持ってたのか......急いで探すよ!」


追うようにトール達も急いで箒で飛び消えていった。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


- とある家(裏の世界)


 リリィ一行の転移した場所は窓が一切付いていない暗い場所だった。


「確かこの辺に......あったあった」


 1人が壁に設置されたスイッチをカチッとオンにすると天井の電気がついてやっと自分が何処にいるか把握した、どうやら地下倉庫にいるみたいで部屋の一角には階段があり、部屋の周りには非常食の置いてある棚がズラリと並んでいる


「どこなの?ここ」

「ここはケルトル大聖堂の地下奥深くにある部屋よ、それよりも何か思い出した?」

「なんかぶわぁー!っていろいろみえたけど…はやすぎてよく見えなかった」

「そう、まぁ魔法陣は破壊できなかったけど割る事は出来たからこれから、これからゆっくりと思い出すかもね」


 サメロはリリィの頭を撫でながら言う


「あと記憶を消す魔法を跳ね返す異術をかけてくれへん?」

「あぁそうだった、あるにはあるけどこれをかけると回復や強化魔法が効かなくなるけど良い?」

「構わへん、記憶を完全に思い出す間だけや」


 「なら」とシスター服の裏ポケットから杖を出してリリィに向けてヒョイっと振る。


「これで平気よ、この魔法はかけた私しか解くか私が死んで自然に解けるかしか方法がないから注意してね」

「うん!ありがと〜、あとひとつだけしつもんいい?」

「どうしたの?」

「おねえさんたちのつけてるベルト、それなぁに?」


 サメロは「あぁこれ?」と腰に着けてるベルトを外して見せる。


「これは魔力を妖術の力に変える機械よ、貴方も記憶が戻って魔力も戻ったら作ってもらうといいかもね」

「へぇ~、どこでつくれるの?」


 そうとう気に入ったのかペタペタと触る


「キョウトって場所だよ」

「なるほどぉ......」

「ナイスやでチンチクリン、これはいい情報や!」

「ありがと!おねえさん」

「ふふふ良いのよ、あともしかしたら別の所に移動してるかもしれないからもし会いたくなったらこの番号に電話してね」


 後ろで聞いてた3人は氷のように冷たい目線で「最後の最後でやっぱクズロリコンね」とドン引きする。


「違うわよ!」


 この後リリィと守護紙は狭く薄暗い裏道から外に出てサメロ達と別れる。


「ねぇしゅごしさん」

「なんや?」

「あさあったあのおねえさんにあうことってできるかなぁ?」

「できるけどなんで?」

「いきたいところがあるの、さっきみたきおくでゆいいつそれだけははっきりとみえたんだ」

「なるほど、ええよちょっとまち」


 守護紙は無言になると軽やかにカンナが屋根を飛び越えて上からやってきた。


「守護紙に呼ばれたけど何?」


相変わらず瓜の様にトゲトゲとしている彼女はリリィの方を見る。


「あ、あのいきたいところがあって......つれてってほしいなって」


何か察したのか「まったく仕方ないわね」と鼻でため息をつく。


「ごめんなさい......」

「別に良いわよ、んで?行きたいところって何処なの?」

「ちいさなじんじゃのあるやま!」


 ザックリとした情報にうーんと眉間に川の字を作り「他に何かないわけ?」と頭を捻る。


「きつねさんのぞうがあった!」


 その言葉にやっとカンナは「あそこかしら」と言い大きなライオンに化ける。


「早く乗りなさい、行くわよ!」


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


- 健二の働く会社


 お昼休憩で外食をしようと、お腹を鳴らしながら外を歩くスーツ姿の健二の前にトールが現れる。


「随分お腹の音を鳴らしてるわね」

「昼なんだから仕方がないよ、お前も食べに行くか?」

「そんな暇ないわよ、リコリスがこの世界に飛ばされた魔法少女と接触したの、阻止しようとしたけど逃げられちゃって今探し中なわけ、もしかしたら何か変わるかもしれないから警戒しときなさい」

「なにか、ね......分かった僕もあの子が寝てる時にでも変わったところがないか見てみるよ」

「そうして」


 背を向けて去ろうとするトールに「あ、ちょっとまって!」と止めた。


「何よ、奢ってとかは無しだから」

「違うわい!有給が取れたからあと3日頼む」

「はいはい、で?旅行場所は決まったの?」

「北海道と千葉かな」

「良いわね、じゃあアンタもヘマしないでよ」

「はいよ」


 砂埃を立てて彼女は空へ飛び上がり消える


「旅行かぁ、どうなることやら」

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