第08詠唱 新大陸を目指す魔法少女達~ オーダー00 ~
「しかし襲う目的は何ですか?」
「目的は魔石や鉄がたくさん採れる山だろう、純正の魔石は結構な額をするからな、人工の魔石でも一個でマンションを一軒買えるほどだ」
第5地区は特別何もなかったのだ。
同じ魔導機動隊だからと言って武器も無料で支給されるのではなく、魔石を加工し武器を製造する第四地区から買わなきゃいけないため魔石の素材料から加工、製造料まですべて取られるのだとか、それに比べ第二地区は素材は自分の地区で取れた物を渡してい為、かなり安く武器が手に入るのだった。
「確かに素材から製造までの金額を出している第5地区ならありえない事でもない...しかしゲート被害を受けているのは向こうも同じでは?」
「同じだが消えた後何処に転移されるか知っているから慌ててるふりをしているだけかもしれない」
話そうとする秘書に「確かに!」と話す隙を与えず続ける。
「これはただの決めつけに過ぎない、私もこんな子供じみた思い込みで数少ない仲間を失いたくない、だけど事情が事情だ、君も見ただろ?ゲートを操る少女の写真そしてその会話を、疑いざるをえない」
今の第2地区の状況を知っているからこそカラリアの考えにも納得が良き何も言えなかった。
「分かりました」
「すまないな、じゃあ君が"オーダー00(ゼロゼロ)"と言ったら待機している子達にアイラとドミニカとイザベルは取り押さえて、その他の魔法少女は"殺す"ように伝えろ、君も一緒に会議に出るからできれば10分以内に頼む」
「分かりました」
そう言うとカラリアは頷き「会議室で待ってる」と秘書の肩を叩き部屋を出た。
パタンとドアが閉まると冷静を保っていた秘書は蛇口をひねった様に汗を流し「やばいやばい!どうしよう」と動揺し部屋内をぐるぐる歩き始めた。
「ただでさえ戦える魔法少女は少ないのに、いま魔法少女同士が争ったらゲートの駆除に成功してもその先他種族に国を襲撃されるんじゃない?......いやそしたら…いやでも本当に5地区がゲートと本当に組んでいたら…」
腕時計をチラッとみるとあっという間に5分を経過していて更に頭が真っ白になる。
「とりあえず......言うしかないか」
腰にぶら下げている鍵を取ると左にあるドアに差し込み秘書専用の部屋に入る。
部屋は狭くパソコンやマイクなどいろんな機材で囲まれていた。
彼女は慣れた手つきで機械を起動させるとスーと深呼吸してからマイクを起動して握る。
「今ゲート駆除をしているチームに告ぐ、直ちに中止しB塔にある五地区へ行く扉の前に変身した状態で集合せよ、直ちに止めB塔にある五地区へ行く扉の前に変身した状態で集合せよ、緊急任務だ......」
その時(本当に言っていいのか)という気持ちが強くなり言葉が途切れた。
目を閉じて何回も深呼吸して気持ちを落ち着かせてから再びゆっくり話し始める。
「合図をしたら第5地区を襲撃し、アイラ・テイラー、イザベル・ブラウン、ドミニカ・デイビスを拘束しその他の隊員は"ルトロモール"でころ…仮死状態にし捕虜にせよ、繰り返す、合図をしたら第5地区を襲撃し、アイラ・テイラー、イザベル・ブラウン、ドミニカ・デイビスを拘束しその他の隊員は"ルトロモール"で仮死状態にし捕虜にせよ、合図コードは"オーダー00"だ、以上」
マイクのスイッチをオフにすると直ぐにカラリアのいる会議室に向かった。
* * * *
秘書が会議室に入るがまだ始まってなくカラリアはコップに入った水を飲んでいた。
「お疲れ、あと5分で始まるぞ」
「分かりました」
会議室は中央に青いガラスでできた円型の大きなテーブルがあり、そのテーブルの前に部隊長と秘書用の卵の様な形をした椅子が二つ置いてある。
「しかし本当に来ますかね、日をまたいだ深夜に」
「どの地区も機動隊員は数える人数しかいないんだ、寝るなんてないだろう...まぁ5地区は違うかもしれないけどな」
この判断があっているのか間違っているのかただその疑問だけが頭の中をぐるぐると駆け巡る秘書は、沈黙が漂う部屋の中ただただ変な汗を垂らしながら心を落ち着かせるようにやけに大きく聞こえるカチコチと時間を刻む秒針に耳を傾けた。
「来たみたいだな」
テーブルの中央に地区の数字が表示されると対面の形で4地区と5地区の部隊長が青白いホログラムで表示された。
やはり時間が時間だからか皆どこか疲れた様子で椅子に座っている。
「アイラとミラベル、夜遅くにすまない、実はこちらの隊員がつい最近目撃したことが興味深くてな、皆に報告したいと思う」
「目撃?何かあったのか?」
アイラは首をかしげる
「まず第5地区のイザベル・ブラウンとドミニカ・デイビスが魔女のオートマトンと接触しシャーベッ島へ向かう所を目撃した」
その時撮った写真をテーブルに置いて見せる。
アイラはもちろんのこと、ミラベルもアイラの任務の事だろうと思い特に驚いた表情を見せなかった。
「次にこれだ、正直私はこの事が一番驚いた、第5地区のサポート妖精とゲートを操る少女が仲間だったことにな」
妖精をかばうようにゲートと結衣が仁王立(におうだ)ちをする写真をみせると、
ミラベルは疲れ切った表情は一瞬で吹き飛び目を見開いて写真をまじまじと見る。
(かかった)と思いニヤリと笑うカラリアは「驚くのはまだ早い」とあの録音機を出して再生した。
「これはこの少女と戦闘になる時の会話を録音したものだ」
ゲートが魔力を持つ者は必ず襲うと思っていた為二人はこの事に驚きを隠せなかった。
「ゲートは魔力のある者を襲うはずなのに第五地区の妖精を守り4地区と2地区の隊員を襲ったんだ、初対面だとしてもこの行動はありえないだろう」
ミラベルも「こ、これは......どういう事ですか?アイラさん」と思わず聞く。
「まてまて私は何も知らない」
何も知らないアイラは否定するが二人は聞く耳を持たずたっだ疑いの眼差しだけを向ける。
「そう言えば写真を見るにイザベルとドミニカが使っていたあの新型の魔動式箒型飛行機体もさぞ良い素材を使っているだろ、今の国から支給される支援金じゃきついんじゃないか?」
魔動式箒型飛行機体とは魔法の箒の正式名書である。
武器は毎月支給される国からの支援金で初めて買えるため、ゲートで人口が減りつつある今、支援金も少ないのだった。
「こっちは道具を使いまわしてるから支援金は貯めていたんだ、あと勘違いしている様だから言うが私はゲートとは手を結んでいない」
「じゃあ何故禁止されている領域に侵入してまで魔女やゲートを操る少女と接触しているんだ?」
「それはゲートの事を知るためだ、実はつい最近入隊したリリィと言う少女には謎が多くてな、それと何か関係すると思ってあの子を助けるついでに探していただけだ、確かに何も言わなかったのはすまないと思っているがこれは今回の件とは関係ない」
「じゃあ何で言わなかったんだ?同じ魔導機動隊だろ?」
「カラリアは死ぬまで拷問して無理やり情報を得ようとしてただろ、リリィと関係してるからもしもの事が無いようにできれば拷問とかは避けたいんだよ」
責められているのにもかかわらずいつまでも冷静で表情を変えないアイラに疑問を持ったミラベルは隣に座っていた秘書に耳打ちをする。
秘書は基本的にホログラムには表示されない為、見えないカラリアは「何を話しているんだ?ミラベル」と首をかしげる。
「すみません、秘書にある物を持ってくるように伝えまして」
「ある物?」
「つい最近こちらで開発しました嘘発見器の様なものです」
駆け足で持ってきた秘書から受け取るとテーブルに置いた。
「つい最近魔族の間で魔力は感情で色が変わるというのが話題になりまして」
アイラはその話に「私も聞いた事がある、怒りだったら赤で疑いだったら黒だっけ?」と相槌をうつ
「そうです、これは相手が嘘をついているかどうかを計る物です」
嘘発見器と呼ばれた機械は実にシンプルで、鉄製の丸い土台に親指程度の太さで人差し指程度しかない長さの六角柱に加工された透明な魔石が着いた手のひらサイズの物だった。
「ほう面白い、早速アイラを試してみよう」
言われた本人も笑顔で「ではお願いしようかな」とミラベルの方を椅子を回転させて向く
「ではやります」
透明の魔石はまるで水面にインクをぽたりと垂らしたように金色の雫が上から尾を帯びてゆらりゆらりと降りてくる、やがて底に着くと色が滲み広がり金色に神々しく光った。
「どうやら今までの話は本当だったようです」
「その道具はまだ公表されてないが試作段階か?」
「何万と試し近いうちに公開もする予定でした」
「と、いう事だこの魔具(まぐ)の故障というのもあり得ないだろう、もうこんなことをしても無意味だ、疑う気持ちは魔法の力が悪い方向に導くだけだ、我々魔法少女...いや覚者は感情と魔力が結びついているから普通の人間よりも悪に染まりやすいんだぞ」
「だからどうだって言うんだ?」
「カラリア、君の地区がどの地区よりもゲートが蔓延(はびこ)っていて隊員が少ないから大変なのはわかる、これからはこちらの地区も手助けするから今はゆっくり休め、私とお前は長い付き合いだ何だってわかる、そちらの指揮も私が執ろう、だからゆっくり休め時期が時期だ助け合おう」
<ミラベル、聞こえるかアイラだ、恐らく5地区は2地区に襲われるだろう、ドミニカとイザベル、そしてそのサポート妖精たちがまだ帰って来てないから奴らに襲われる前に秘書に命令させて救出に迎え、きっとその子達はゲートの事とかいろんな情報を持ってるはずだからいろいろ聞いてみてくれ、リリィの為にもこの世界の為にも、私の事は>
カラリアと話しつつ無声音で伝えたアイラに咳払いして答えると、嘘発見器を返すふりをしてその事を秘書に伝えて動かした。
「時期が時期?助け合い?よくそんな事が言えるな」
肩を震わせ静かな声で言う
「落ち着け」
「お前にとって魔法がどんだけの価値なのか知らないが、私はな魔力が開花したおかげで死ぬと宣告された自分の病も自分で無くすことができ、多くの人の命も助けることができた、私は魔法少女を守りたいんだ」
カラリアはバレない様に"00"と書いた小さくちぎられた紙を横にいる秘書の膝の上に置く
「魔法少女は特別な力を使えるからこそ、この人間族の為に永遠でなければならない」
秘書は紙を受け取ると足音を立てずに廊下へ出た。
「オーダー00を遂行する」
変身して待機していた第2地区の魔法少女たちはいっせいに扉をくぐり第5地区駐屯地へ転移する、やがて会議室でも外のから聞こえる女性の苦しそうな悲鳴や魔法の爆発音が聞こえドタドタと大人数の足音が大きくなって行った。
「私を捕まえても何も解決しないぞ」
「それはどうかな」
捕らえられてもなお、涼し気な表情を崩さないアイラを睨みつけ「では第2地区で会おう」と言い席を外す
* * * *
— 第5地区(上空)/時刻・現在
星は薄くなり黒い空はゆっくりと明るくなって来たそんな時、、会議の事を知らないドミニカとイザベルはコクリコクリと舟をこぎながら静かな空を飛んでいた。
「やっと、あともう少しで、帰れる......もうお尻が壊れそう...お布団に入って寝たい...麺類、甘い物、お肉、お酒......」
ドミニカは抱き枕を抱く様に箒を抱きしめ、眠気のあまり白目を向きながらブツブツと口からつもりに積もった欲を滝のように溢す
「流石に2日間ぶっ通しで飛ぶのは辛いわぁ~こんなの何年ぶりかしら......」
イザベルも下をうつむき大きなため息をついた。
「普通の箒じゃないから早くて直ぐにつくのはいいけど...風がつべたい...凍る...冷凍食品ならぬ冷凍少女になる......」
「あなたもう少女って言える年齢じゃないでしょ...」
すると後方から魔力を感じ「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛」とドミニカは唸りながら背骨が抜けた様にだらけている体を起こし、相手を確かめずに誰かも魔武である双剣を出すとブーメランのように投げた。
「ちょっと!いくら相手の魔力が低いからって適当すぎでしょ!」
「まぁ見てなさいよ」
指を鳴らすと投げた双剣は爆発しこちらに向かってきていた人影は下へ落ちていった。
「あれ?よく見たらあの人影グレーのローブ来てない?第四地区のローブじゃない?」
「え!嘘でしょ?」
一瞬にして背筋が凍り付いたドミニカとイザベルは一瞬で眠気が覚めて急いで真っ逆さまに落ちていく人影の所に向かった。
「すみませーん!」
地面に着く寸前でキャッチしゲートが集まる前に再び上昇する。
落ちていったローブの人はやはり第四地区の人間だった。基本的に第4地区は製造がメインになる為戦闘は苦手で箒の運転なんてもってのほかなのだ。
「本当にウチのドミバカがすみませんでした」
「ちょっと一文字違うんですけど?」
落ちるのが相当怖かったのか、彼女は顔を真っ青にしお姫様抱っこをしているドミニカの胸にしがみつき「よかった~」という
「ごめんな、箒も破壊しちゃったみたいだ」
「そんな事より五地区には行かないでください!今すぐ4地区へ向かって!」
二人は何でか聞こうとしたが、彼女のかなり動揺した表情で相当な事が起きているんだなと察しとりあえず急いで4地区へ向かうことにした。
「ねぇキミ、5地区で何が起きてるんだ?」
ドミニカの問いに小柄な彼女は「じ、実は」と今までの事を話す。
「という事があって、私も実は入隊してまだ間もないので気が動転してしまい......」
「なるほどな」
「大変なことになったわね」
一見落ち着いてるように見える二人だが、魔法少女同士が仲間割れを起こすという悪魔が考えた様なトンデモ内容に頭がついて行かず反応ができなかったのだ
「とりあえず......お手洗いに行ってよくオネンネしてから考えよう」
「そうね......」
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