第29話 ゲート
次の休診日、僕達は王都に向かう事になった。
考えてみれば休日なのに、
わざわざ僕達の為に王様の休みを潰してしまうのだろうか?
直前でそれに気が付き僕は慌てた。
「上の人間には、休みは関係ない。
要人が来れば休日も関係なく公務を行うし、
パーティーだってする。
だから休みたければ、休める日に勝手に休むんだ。」
なるほど。
僕はゲートに向かう道で、
ライアスさんにゲートについて色々と尋ねた。
「ゲートを管理する者も、在中する人間も必要だし、
魔石も老朽化し取り換えが必要だ。
だからゲートを使用する人からは、通行料を取るんだ。」
それはイズガルドに限らず、
各地のゲートも徴収していると言う。
そして行き先によって金額はそれぞれ変わるらしい。
だが、そう安い金額ではないようだ。
「イズガルドの人は、
ゲートを設置してもらっていると言う理由で、
割安にはなっているな。」
「ありがとうございます。」
「デニスの為だけじゃないさ。」
ゲートさえあれば、相手側にゲートが有れば、そこまで簡単に行ける。
近い町でも、遠い町でも、王都にさえ簡単に。
もし目的地にゲートが無くても、
一番近いゲートまで移動して、
そこから馬車に乗ればいい。
この近辺の人はこれから楽が出来る。
「ゲートがとても大きいと感じただろう?
それは馬車ごと移動したり、物資を運んだりするためだ。
それに此処は国境の近く、
これからここに資材を運んで、隣の国への安全な道を作る予定だ。
そうすれば隣の国への移動もここから容易になる。
これからこの辺は栄えるだろうな。」
何か、とんでもない事になりそうだ。
取り合えず僕達がしなければならない事は…。
国王に謁見して、結婚の許しを得る。
それに関しては既に了承済だから、
不安になる必要は無いよとライアスさんは言ってくれた。
後は、教会に行って結婚の儀式を行う。
それから、身近な人に僕を紹介したいって言うけれど、
僕は城で働いていたから、僕を知っている人はかなりいる筈だ。
「それでも、私の妻としてのデニスを紹介したいんだよ。」
そんな物だろうか……。
「残りは買い物かな。
新婚家庭に必要な物をそろえよう。
揃いのカップや、食器。
ベッドも広い物を買おうか。
後はそうだな……。」
「ライアスさん、それらは多分いらないと思います。」
「デニスは欲しくないのか?
私は揃いの物とか…欲しいんだが。」
「欲しいですよ。
でもすでに揃っていると思うんです。
多分今日の夜までには。
何と言っても、不思議な家ですから……。」
そうなんだ。
あの家は、僕が欲しいと思った物は、
知らぬ間に揃えてくれている。
足りなくなった薬草や、薬紙や、あらゆるものを。
寒いと思っただけで、厚手の服などが、
いつの間にかクローゼットに掛かっている。
「揃っているって……。
でもまさか指輪までは有り得ないだろう?」
「さぁ…?」
「それは無いだろう。
私がデニスに送りたいものまで揃ってしまったら、
私の立場が無い。」
「僕が欲しいと思わなければいいのかな。
でも、そんないらない物を貰っても…、
いえ、ライアスさんからのプレゼントなら、どんなものでも嬉しいですよ。」
「だが無い物とは、つまりデニスが欲しいと思っていない物だよな。」
「ち、違いますよきっと。
僕だって、揃えてもらっているばかりでは有りません。
お野菜や薪だって近所の人から買ったりしますよ。
それだからこそ、人付き合いも円滑になりますし、」
「私からの指輪は、野菜や薪と同列なのか……。」
えっ、そ、そうじゃなくてですね。
「冗談だ、慌てるデニスは可愛いな。」
「か、可愛いって。
ライアスさん酷いです、僕は本気で……。」
「すまない。」
そう言ってライアスさんが僕にキスをした。
でもその顔は反省してませんよね。
ゲートでは駐在する人が数人いる。
兵のような人が左右に二人立っていて、
後はゲートの使用料を受け取る人や、手続きなどを受け付ける人が、
小さな建物のカウンターにいた。
今は簡易的なものだが、施設が整ったら、
もっと大きなものを建てるそうだ。
だんだん話が大きくなっていく。
まさかそれが、僕の我儘が発端だったとは思いたくない。
ライアスさんは僕の手を引いたまま、ゲートに向かうけれど、
だめですよ。
僕の料金はちゃんと払わなくちゃ。
ライアスさんは毎日王都に通うのでフリーパスらしいけど、
僕はそう言う訳にはいかないでしょう?
ゲートの使用料は、安い物では無い。
だから払わなければならない物は、きっちり払わなくちゃいけません。
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