第21話 現実を見つめてみよう 

「やっぱり夢だったんだ……。」


窓に掛かったカーテンには、朝の光が揺らめいていた。

ここは診察室の隣の小部屋だ。

疲れてここで寝ちゃったのかな。

ベッドに横たわったまま夢の事を考える。

確か、ライアスさんが会いに来てくれたんだ。

夢で僕の事を知り、イズガルドまで探しに来てくれたんだ。

でもそれが夢だとすると、

夢の中の夢って一体何なんだろう。


「ん~~~。」


「デニス?

起きたのか。」


すぐそばから声がする。

そばと言うか、すぐ耳元で。


恐る恐る振り向くと、とても綺麗な瞳が目に入った。

とても深い緑色のライアスさんの目だ。

ライアスさんは、後ろから僕を抱くように横たわっているようで、

腰に掛かる重みは、きっとライアスさんの腕だろう。


「まだ、夢の続き……。」


まだライアスさんと一緒に居られると言う思いと、

これも夢なのかと言う空しさが混在する。


「デニス、君はまだそんな事………。」


背中で、小刻みにライアスさんの体が揺れる。

何を笑っているんだろう。

僕は真剣になんだけど。


「デニス、君はこれは夢の方がいいのか?

それとも現実の方がいい?」


「決まっている、現実の方がいい!」


「どうして?」


「だって…こうして触れるほど近くにライアスさんがいる。

前みたいに話が出来る。

これが夢だったら、僕は目が覚めた時、きっととても寂しい。」


「そうだな、私もようやく見つけたデニスが夢だったのなら、

悲しいし、やるせない。

だが、君はきっとそう言いながらも、

これを夢にしたいと思う部分が有るんだろうな。

君がそう思いたいと言う気持ちは分かるが、

残念だがこれは現実だ。」


現実なの…?


「だから、いつまでも逃げていないで、

そろそろ本当に私と向き合ってくれないか?」


逃げる?

現実から。

確かにこの夢はどこかおかしいと感じたけど、

やっぱりこの流れは、僕に都合のいい事ばかりで、

現実では有り得ない。


「また考え込んでいるのか?

それなら一度、これを現実として考えてごらん?」


「これが現実として?

でも、夢だと納得している事も有るんだけれど。」


「ふふっ、まあ矛盾している事も有るだろうが、

所詮夢の中の出来事だとして、

気軽に、もしこれが現実としたらどうなるかと考えてごらん。」


気軽に考えられる事じゃ無いけれど、

でも、もしこれが全て現実としたら……。


「ライアスさんが僕を探してここまで会いに来てくれた。」


「あぁ。」


「僕の事を好きだと、愛していると言ってくれた。」


「そうだ、私は君を愛している。

だから、どうしても君に会いたかった。

君が今どうしているのか心配で、

気が狂いそうだった。

デニス、君も私と同じ気持ちだと知り、

とても嬉しい。」


「そう言えば、僕はライアスさんに、

メチャクチャな告白しちゃったんだ。」


「それは…嘘だったのか?

後悔している?」


ある意味後悔している。

ずいぶんと図々しい事言っちゃったな。


「う、嘘じゃないけど…。

でも、ずいぶん大それたこと言っちゃったし。」


「何が?

君の言葉が大それた事とでも?」


違うとでも言うの?

絶対に恐れ多いよ。

確かに僕はライアスさんの事を好き。

では追い付かないぐらい愛しているよ。

でもそんな事を言えば、ライアスさんが困るのは目に見えているし。


「ありがとう。

しかし、私は困るどころか凄く嬉しいのだが。

そして君がもっと素直になってくれればもっともっと嬉しいんだが。」


「えっ、聞こえてた?」


ライアスさんは、あぁと言って頷く。

あ、あ、あ、気持ちが駄々洩れだったんだ。

でも、言った事で少し気持ちが楽になった。


「それからライアスさんは、僕を愛しているって言ってくれて、

確か結婚……。

け、けっこん――――‼」


「そう、私は君にプロポーズをした。

そして君はそれにOKしてくれた。」


「OK—―!?」


た、確かに結婚したいって言った気がする……。


「でも、そんなの夢だし。」


「言っただろう?

現実のつもりで考えてごらんと。」


「……そうだった。」


「デニスは私の求めに応じてくれた。

さて、それが現実としたら、君はどう思う?

私は本気だ。

だが君は夢だったからと断るか?」


「……………。

ライアスさんが本気なら、

僕だって本気だ。

ライアスさんの事が好きだ。

ライアスさんが僕の事を本当に求めていてくれるなら。

僕はそれに応えたい。

いや、僕の方からお願いしたいぐらい。」


ライアスさんは機嫌よさげにニコニコしている。

まあライアスさんが楽しいのなら、僕だって嬉しい。


「でももしこれが現実だったら…だったな。

そうだったら僕は改めて、この話を断るだろうな。

ライアスさんが嫌いと言う訳じゃ無い。

本当に恐れ多いと言うか、

僕なんかじゃライアスさんに相応しく無いから。」


「そうじゃない、資格や格など問題ではない。

デニスの本当の気持ちが大事なんだよ。

デニスは結婚をしたくはない?」


「したいよ。

ライアスさんと別れずに、傍にずっと一緒にいられるし、

好きだって、いつも言う事が出来る。

毎晩こうやってくっ付いて眠れる。」


ぐりぐりとライアスさんの胸に頭をこすりつける。

最高だ。


「デニス………。」


ライアスさんの顔が降ってくる。

とても綺麗な顔。

見とれていると、そのまま唇が塞がれた。


「結婚するなら、こんな事も出来る。」


ニヤッと笑うライアスさんが、なぜかワイルドでカッコいい。

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