第14話 治療院 二人目の患者さん
「ほほ、トーマスさんの嬉しそうなこと、
さて先生、私もお願いしますよ。」
次の患者さんは、品の良さそうなお婆さんだった。
「年のせいか長年膝が痛くて、
とうとう最近では杖が無くては歩けなくなってしまいました。」
「はい分かりました。」
お婆さんからも分かる範囲で話を聞き、
診察台に横になってもらった。
そして痛い方の膝に手をかざす。
あぁ、これは膝に水が溜まっているんだ。
薬での治療なら痛み止めを出す。
だがそれでは、ずっと飲み続けてもあまり効果はあまり期待できない。
外科的な治療も出来るが、
僕なら魔法で、負担なく治療することが出来る。
「では治療しますね。」
僕はテーブルにビーカーを置き、右手をお婆さんの膝に、左手をビーカーに翳す。
「痛みは無い筈ですが、何か異変があったら教えてください。」
僕はそう言ってから両手に魔力を込める。
するとビーカーに少しづつ、透明の水が溜まっていった。
水はビーカーに少しづつ増えて行ったが、
やがて、量に変化が無くなった。
「終わりました。
どうですか?痛くありませんでしたか?」
「いえ、全然。
返って気持ちいいぐらいでしたよ。」
「よかったです。
えっと、これを見てください。これがあなたの…。」
「あら、リディアよ。
そう呼んでちょうだい。」
「分かりました。
これがリディアさんの膝にたまっていた水です。
これさえ抜けば痛みは治まるはずです。
ただ、慢性化する恐れがありますから、時々は通って下さいね。」
「まぁ、こんな水が悪さをしていたの?」
リディアさんは驚いているようだった
「さ、立ってみましょうか。」
僕はリディアさんに手を貸しやはりゆっくりと立たせた。
「先生、痛くありませんよ!すごいわ。」
「それはよかった。ではリディアさん、
これは膝に水をたまりにくくするお薬です。
最低ひと月は続けて飲んで下さい。」
「ありがとうございました。」
「リディアさんは今までかなり無理をしていたのでは有りませんか?」
「無理なんてしていませんよ。
庭仕事や、片付けなど、ちょこちょこと動き回るのが好きなだけですよ。」
「そうですか、でもこれからは足に負担を掛ける事は避け、
頻繁に椅子に座ったり、足に負担を掛けない様、
心がけて下さい。」
「そうなの、せっかく足の痛みが無くなったのに残念だわ。
でも裁縫をしたいと思っていたし、絵を描くのも良いわね。」
「ぜひそうして下さい。」
やはりリディアさんも、トーマスさんと同じく5,000ゼラを払い、帰って行った。
こんなに貰ってもいいのだろうか。
この様子なら、あっという間にお家賃ぐらい稼げてしまう。
その後、次々と診察した人たちも、何の問題もなく治療し終わり、
最後の患者さんが帰る頃は、あたりが夕日で真っ赤になる頃だった。
そう言えばお昼ご飯食べてなかったな。
お腹が空いた。
何か簡単な物でも作ろうと台所に行くと、
そこにはマリアさん料理をしていた。
「忙しそうだから裏から入らせてもらいましたよ。
ダメじゃないの先生。
聞くところによると
お昼も食べずにお仕事していたんですって?」
「マリアさん、いつも通りデニスって呼んで下さい。」
「ダメよ。もう立派な先生なんだからそう呼ばせてね。」
なにかとても気恥ずかしい。
「さ、このマリア様がご飯を作る間、これでも飲んで休んでいてね。」
そう言うと、ミルクたっぷりの紅茶のカップをテーブルに置いた。
「ありがとうございます。
遠慮なくいただきます。」
それを一口飲み、ようやく人心地着いた。
どうやら自分が疲れていた事に気が付く。
「あの、マリアさん。
いつもとても良くしてもらって、すいません。
でも、料理までしていただいては申し訳なくって。
せめて材料費とか請求してもらえると嬉しいんですが……。」
「何言ってるの、逆にルルのお産の代金を請求してくださいな。」
「え、あの、マリアさん達には返せないほどのご恩を頂きました。
それを考えたら、お産の治療費などいただけません。」
「言うと思った。」
マリアさんはため息をつきながら話続ける。
「あのね、先生はちゃんと仕事をしているの。
その仕事に対して報酬を支払わないなんて反対に失礼でしょう。
それはそれ、これはこれ、
治療費はちゃんと請求してちょうだい。」
ウッ、そういうものなのかな。
「分かりました。
請求金額は計算しておきますので、
マリアさんも僕に掛かった必要なお金は言って下さい。」
「そうね、それじゃあ今日のお料理、
野菜はうちに生えすぎて食べ切れない分だから0ゼラ。
お肉は頂き物だから、0ゼラ。
しめて0ゼラね。」
そ、そんな……。
「で、でも、作っていただいた手間とかが。」
「先生、先生は近所の人に買い物を頼まれた時、その手間賃を請求する?
知り合いにお茶を入れてもらって、お金を払うの?」
「いえ………。
ありがとうございます…。」
「そう、そう言っていればいいのよ。」
完敗だった。
マリアさんは満足そうに笑っている。
そう言えば、マリアさんに聞きたい事が有ったんだ。
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