第4話 たびのはじまり
三日後、宿の女将さんや組合の顔見知りに挨拶を済ませた俺はとある場所にある迷宮を目指すことにした。
「目的地までは約三ヶ月の距離か。古文書で見つけた情報が確かなら後四つクリスタルボールを集めれば、これで元の世界に渡ることが出来るはずんなだが、ただ違う世界に飛ばされてしまう可能性も無きにしも非ずなんだよな」
成功か失敗かの不安はあるのだが、ここまで頑張ってきた成果は試してみたい。
ということで、俺は何の未練も残さずに15年過ごした迷宮の街を出立した。
十日後、隣街へと移動した俺は食料の補充と装備の手入れをする為に、この街で三日ほど滞在することにした。
◇◇◇◇◇
「那津さん、ついに行ってしまったわね。宿の常連さんも一様に寂しがっていたわ。
私としても家族の息子が突然一人居なくなったようで寂しいわ。10歳から15年も居たんだもの情も移るからね。さて、いつ帰ってきても良いように部屋の掃除でもしておこうかね」
「もう那津さんたら突然旅に出るなんて言い出すんだから。組合の稼ぎ頭が居なくなってどうするのよ、私のお給料が減っちゃうじゃない。私ミィシャは買取窓口の椅子に座りながら独り言ちるのだった」
◇◇◇◇◇
「ようナッツ。どうしたんだ、この街にいるなんて」
「なんだジェットか。俺か、旅に出る事にしたんだよ。お前こそどうしてこの街に……」
「俺は、商人の護衛だな。明日の朝、迷宮の街に向かって出発するんだよ」
「そうか。お前は傭兵組合にも加入していたんだったな」
「そういう事だ。ナッツ、今夜暇なら酒でもどうだ」
「そうだな、暫くは会わないだろうから付き合うか」
「そうこなくちゃな」
この日の夜は、久しぶりに会った顔なじみのジェットと酒を酌み交わすこととなったのだった。
翌日……。
俺は市場に出向いて食料の補充しておくことにした。
「おっ、品揃えは流石にこっちの街の方が充実しているのな。まぁ迷宮の街は半分はハンターが住人だからな。こちら街は普通の人が大半だからだろう」
一人で納得しながら、俺は市場にある充実した食材や調味料など結構な品数を購入して回った。
そして、この街に着いて三日、当初の目的を達成した俺は予定通り次の街に向けて出発するのだった。
俺が街を出て五日目はあいにくの雨模様となっていた。
次の街まではちょうど中間地点の辺りで周りには村も無いようだった。そこで仕方なく街道沿いの野営地で雨が止むまで過ごすことにした。
この野営地は結構な大きさで、いくつかの商隊と護衛の傭兵らも雨が止むまで過ごすことにしたのか思ったよりも込み合っていた。
俺は一人旅なので他の迷惑にならないような場所を選び手早くテントを設置すると、テントに入り雨宿りを始めた。
「今日はここで明日の朝まで過ごすことになりそうだな。結構な人数が留まっているから野盗等の襲撃も心配ないだろう。ただしここにいる連中も全てが善良とはいかないかもしれないからぐっすりとは寝れないだろうがな」
こうして、雨の中での俺の野営が始まったのだった。
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