第2話 らびっと
目的の階層に転移移動して来た俺はさっそく探索を始める。
「随分と様変わりしたようだな」
毎回思う事だが、誰がこの変化を管理しているんだか。
まぁ、迷宮に文句を言っても仕方の無いことなのだがな。
「さぁ、気を取り直して目的のアイテムを探すとしますか」
俺は所々に仕掛けられている罠に注意を払いながら先へと進んで行く。
足を進めること30分程で一つ目の扉の前へと到達することできた。
ハンターに成り立ての頃は簡単な罠にも引っかかっていたものだが、経験を積んで俺も成長したんだなぁ。
「さて感傷に浸るのはこれぐらいにしておいてと」
俺は目の前の扉に手をかけると、扉を開けて部屋の中へと足を踏み入れた。
部屋の中へと入ると、扉が自動的に閉まり部屋の中が明るくなる。
「ここは、キラー・ラビット……か」
腰に帯刀している剣を鞘から抜いてキラー・ラビットとの戦闘に備える。
キュッキュッ…ギュア~!
鳴き声を発した瞬間に鋭い角を黒光りさせながら、キラー・ラビットは一直線に俺の方へと飛び掛かってくる。
ガキ~ン!
直線的な攻撃なので躱すのは容易なのだが、今回の奴は脚力が強化されていたようでギリギリのタイミングで何とか剣でいなして躱すことに成功した。
舐めて対峙している訳ではないのだが、偶に強化された奴が現れることがあるのだ。
さて、如何対処したものか。
此奴を倒せばドロップされるお宝は良いものが手に入りそうなんだがな。
時間にして数十秒、睨み合った状態にケリをつけるべく俺の方からキラー・ラビットの方へと勢い良く踏み込んだ。
キュッキュッ!
俺の行動に一瞬虚を突かれたのか、脚力の溜が追い付かなかったキラー・ラビットは反応が遅れ俺の突き出した剣先の餌食となった。
ギュ~!
断末の声と共に光の粒子となって消えていくキラー・ラビット、その場には漆黒の石ブラック・ダイアモンドが濃厚な魔力を内包した状態で転がっていた。
「そう簡単には、目的のアイテムはドロップしないか」
床に転がっているブラック・ダイアモンドを拾い上げると、俺は次の部屋へと向かって歩き出した。
◇◇◇◇◇
わたしはハンター組合の買取窓口で働いているミィシャ…20歳です。
15歳からここの窓口でお仕事をしていますが、那津さんだけはその素性を推し量ることが出来ません。
大概のハンターは3~5人位の人達で組んで仕事をこなしているのですが、那津さんは一人で仕事をこなしています。しかも毎回とんでもない量のお宝をゲットして納品してくるのです。
この組合の七不思議の一つです。
今回もドラム型の大きい革製のバッグをパンパンにして戻って来ました。
ですから稼ぎも膨大です。
何処かの国でも買い取るつもりなのでしょうか。
小さい国なら3つ程手に入れられそうですが。
でも宿屋暮らしなんですよね。
不思議な方です。
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