第4話 天海が戻ってくる
「よう!待たせたな」
そう言って天海が現れたのですわ。
獣人村の岩の上に突然現れそう言ったの。テレポートしてきたのでしょうけどなんかカッコイイわね。
夕陽をバックに立ってシルエットになったその感じヒーローっぽいかしら。
ズボンのポケットに手を突っ込んで軽い調子でそう言う天海はあまりヒーローっぽくはありませんわよね。
服装もラフすぎますしね。いつもの白Tにダボッとしたジーパン、ぼさぼさの髪。
でもなんだか楽しそうに笑っていてその顔を見ただけでもう大丈夫な気がしてきますわね。
不思議な感じですが、島のみんなも天海の姿を見て安心したように笑顔になっていますわ。
それだけ天海は信頼されていると言う事ですわね。
でも、なんでそんなに信頼されているの?
過去に助けってもらったことがあるからとか?
経験からくるものでしょうか。前に助けてもらったことがあるのなら信頼するわよね。
天海はあんなだけど意外と優しいところもあるし、ありえなくはないでしょうけど。
島のみんなは歓喜してとても盛り上がっていますわ。
あっ凛ちゃんもいますわね。
天海のとなりに立って不安そうに辺りを見回していますわね。
何が起きているのか分からなくて混乱している様子ですわ。
もしかして天海、何も教えてあげていないのでしょうか?
まあ天海のことだからめんどくさがって話していないのかもしれませんわね。
まったく、それぐらい話してあげたらいいのに。
じゃなきゃ、不安になってしまうのは当然ですわ。
何も分からないのは誰でも不安でしょう。
ほら、暗闇の中が怖いのも何も分からないのが怖いからでしょう。
どうせ凛ちゃんに説明する気はないのでしょうから、わたくしが後で教えてあげましょう。
天海は岩の上からわたくしのところへテレポートしてきましたわ。
「もしかして、あなたがアマビエ猫さん?」
天海と一緒にテレポートしてきた凛ちゃんを見て空がそう話しかけたのですわ。
どこか嬉しそうに、興奮したように。
「えっ?あっうん。そうだけど」
凛ちゃんは戸惑ったようにそう返しましたわ。
まあそうですわよね。凛ちゃんはまだ何も知らないから急に知らない人に話しかけられて驚いたのでしょう。
だって、星ノ島には人間はいないはずなのだから。
「この、これってあなたが作ったものですか?」
空はリュックから例のアマビエ猫の仏像を取り出して凛ちゃんに見せたのですわ。
「あっそれ!うん!それは私が作ったものだよ」
凛ちゃんはアマビエ猫の仏像を見て目をキラキラさせてとびっきりの笑顔になってとても嬉しそうにしていますわ。
「そうなんだ。じゃあ、あなたが凛さん?」
「ええ。そうよ」
そう言って凛ちゃんは優しく笑いましたわ。
「私は天草空です。人間です」
空はそう自己紹介した。今がこんな状況だから自己紹介を短くしたわけではなくいつもこんな感じなのですわ。
「空ちゃんね。って人間?えっどういうこと?」
空が人間だと知って凛ちゃんは驚いていますわね。でも、今更な気はいたしますが。だって人間じゃかったらなんだと思っていたのでしょう?
「いろいろあってね。わたくしは天翔ですわ。女神なのですわ」
わたくしは苦笑いしたあとそう自己紹介したのですわ。
「何があったんですか?」
凛ちゃんが心配そうにわたくしと周りを見てそう聞いてきましたわ。
「そうね。説明しないとね」
そう言ったあと一呼吸おいてから話し始めたのですわ。
「うーん。まず、この天海と同じ顔をした奴らは悪魔ですわ。悪魔がこの島の結界を壊して入って来たのですわ。まあそんな感じかしら」
そう簡単にわたくしは説明しましたわ。
って言ってもわたくしはあまり詳しく知らないんだったわ。
だってわたくしはこの島のことを何も知りませんし。
たぶんこの島のことが関係しているのだと思いますわ。
この島を悪魔が知っていた理由とか。
わたくしだってこの島の事は全然知らなかったと言うのに。なぜ悪魔が知っていたのだろうか?
まあだからわたくしが知っているのはわたくしがこの島に来てからのことしか知らないのですわ。
ってことはまあ見たら分かる事しか知らないってことですわ。
「そうなんですねー。でも、なんでこの島に人間の女の子がいるんですか?」
凛ちゃんはなんとなく状況を理解していたのでしょう。あまり驚いた様子もなくそう言ったのですわ。
悪魔がいることは分かっていたけどまさか人間がいるとが思っていなかったのか不思議そうな顔で空のことを見つめていたのですわ。
「まあなんていうか悪魔にこの島に連れて来られたのよ。まだ理由は分かっていないのだけど、おそらく囮として連れて来られたんじゃないかしら。注目を空たちに集めてその間に何かをしていたのかもしれないわね」
わたくしは顔に手を当てて考えてそう答えたのですわ。
「そうですか。なら、空ちゃん。私と同じだね。私も悪魔に神様をおびき出す餌に使われちゃったんだよねー」
そう言って凛ちゃんは明るく笑ったのですわ。
「ケガもなさそうだし安心しました。あなたに会いたくて探していたんです。やっと会えた」
空はそう言ってとても嬉しそうにしているわ。表情は相変わらず無表情だけどとても喜んでいるのがわたくしには分かる。
でも、凛ちゃんにもそれが分かっているみたい。心の中を呼んでいると言うよりは心の声が聞こえる感じなのかしら?
言葉までは分からないけど感情は分かるらしいですわ。
「うふふ。ありがとう」
凛ちゃんは口元を手で隠しおしとやかに笑ってそう嬉しそうに言いましたわ。
空が無表情だけど、本当は凄く嬉しいんだと分かって凛ちゃんも嬉しくなったのでしょう。
どちらも可愛くていいですわね。眼福ですわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます