2 天海の覚悟

「天翔。ありがとな。守ってくれて」

天海は獣人村の周りの岩の上からわたくしのところにテレポートしてきてそう言ったのですわ。

わたくしの方は見ないでまっすぐ夕陽を見つめてズボンのポケットに両手を突っ込んだまま。

正直その態度はどうなんだろうと思いましたが、まあそれが天海なのですから何も言わないことにいたしましたわ。

「守っているのは天海でしょう」

天海はわたくしより2歩ほど前にいるのでその後ろ姿を横目で見てそう聞いたのですわ。

少し顔が笑ってしまっていたかもしれませんわ。

だって。つい。

「はあ?何のことだ」

天海は不機嫌そうにわたくしの方を振り向いてそう言ったのですわ。

「まさむねさんがケガしたはずなのにケガをしていなかったの。天海が何かしたんじゃないの?」

「知るか」

そう言って天海はまた夕陽の方を向いてしまいましたわ。

「言わないつもり?」

天海に近づいていって背後から天海に近づき天海を覗き込んでそう笑顔で聞いたのですわ。

「あー。分かった。まあ簡単に説明すると、俺はこの島の全員と名前で繋がっているんだ。もう分かるだろ」

天海はわたくしから逃げるようにしてわたくしから距離を取ってそう答えてくれたのですわ。

「そういうこと。やっぱり。でも、天海がそこまでするなんてねぇ。この島はそんなに価値のあるものなの?」

わたくしの予想は見事に的中していましたわ。でも、それは天海らしくない感じがいたしますわね。

わたくしの記憶では彼は縛られるのを嫌い、自由を愛していた。

そもそも1つの島に留まるだなんて本当に驚いたわ。

それがそこまでするだなんて。どういう事?

「あぁ」

そう言うと天海はどこかに行ってしまった。

照れくさいのだろうか?

そのことは島の人たちには言っていないみたいだけど。


あぁそうそう。で、どういう事かと言うと。

きっとこうゆうことなのですわ。

テレパスのことから分かるように天海とこの島の住人は名前で繋がっている。

詳しく説明すると天海が名前を付けることで真名で繋がる感じかしら。

それでそのことでテレパスが使えるようになるだけではないらしい。

そのことで副作用があるってことかしら。

繋がっている代償にテレパスだけでなく体まで繋がって感覚を共用していると言う事なのでしょう。

でも、感覚を共有しているだけで普通ケガを治したりは出来ないはず。

だから、たぶん天海が身代りになるようにしているのだろう。

それでまさむねさんはケガをしたはずなのにケガをしていなかった。

ってことはまさむねさんの代わりに天海がまさむねさんがケガしたはずのケガを受けたことになるのでしょう。

なんでそんな危険なことをしたのでしょう。

だってこの島に住んでいる人がどれだけいると思っているのでしょう。そのすべてのケガをすべて天海が受けることになってしまうのですよ。

そこまでしてこの島の人たちのことを守りたいのでしょうか。

神だし、ケガをしてもすぐ治せるし死ぬことはないけど痛みはあるはずなのに。

神とは言えど痛みを消すことは出来ない。だって痛みを感じる事が出来なければ肉体が崩壊してしまうことに気が付けなくなってしまうから。

わたくしたちは下界にいて肉体を持っていますから。もしこの肉体を壊してしまったら天界に戻らないといけなくなってしまうと言うのに。

それにそのことは島の人たちは知らないみたいだし。

どうして何も言わないのでしょうか?別にそれぐらい言ったらいいのに。

秘かにみんなのことを守っている。

なんだろう?かっこつけているのだろうか?

それは別にかっこよくないと思うけど。


とりあえず、天海の秘密を知ることが出来た。

それはまあ良かったかな。

あれから天海はずいぶん丸くなったものですわね。

本当にこの島とこの島の人たちのことを大切に思っているのですわね。

それが天海の覚悟ってことなのでしょうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る