6 エピローグ

わたくしが天海と大広間に向かうと空たちは別の部屋に行ってしまいましたわ。

なにやら話し合いたいことがあるらしい。

ちなみに空たちはすでに個別の部屋を用意してもらっていたのですわ。

さやこさんとまさむねさんが掃除をして部屋を使えるようにしてくれたみたい。

いつまでいるか分からないからって。

それで夏海人さんの部屋に向かったみたいですが。

わたくしも天海と話したいことがあったのでちょうど良かったのですが。

でも、何を話し合うと言うのでしょうか?

天海との話を終わり、天海も寝てしまって暇になってそのことを思い出して気になっていたら大広間の扉が開き空たちが入って来たのですわ。

「どうかしたの?」

空たちが入ってくるのを見て驚いてわたくしはそう聞いたのですわ。

だって空たちの顔が何か覚悟を決めたような顔だったから。

「神様にお話があるの」

さやこさんがそう優しい声で言ったのですわ。

そして、空たちが大広間に入ってきてわたくしと天海の前に座ったのですわ。

「天海。起きなさい」

わたくしは隣で寝ている天海にそう言ったのですわ。

「あぁなんだ。俺はつかれているんだ。寝かせてくれ」

天海は目をこすって凄く眠そうにあくびをしながらそう言いましたわ。

「天海殿。大切な話があるんだ」

夏海人さんが真剣な顔でそう言ったのですわ。

なんか娘さんをくださいって妻のお父さんに言うみたい。

「はあ?俺に娘はいないぞ」

天海は夏海人さんの顔を見てそう言ったのですわ。

「あはは。確かに。妻のお父さんに結婚を許してもらうみたいだ」

そう言って海星は自分の父親のことを見て笑ったのですわ。

それに正座までしているから余計そう見えてしまいますわね。

「そうじゃないでしょう。神様。私たちはあなたにお願いがあって来たの」

自分の父親を見て笑う海星を軽くたしなめてそう改めて天海に向かって言ったのですわ。

「お願いってなんだ。なんどくさいことはやらないからな」

天海はやっと起き上がって、胡坐を組んで座ってさやこさんに向き合ったのですわ。

「私たちをこの島に置いてほしいの」

さやこさんは天海の事をまっすぐ見つめてそう言いましたわ。

「なんだ。そんなことか。それなら勝手にしたらいい」

さやこさんのお願いを聞いて肩の力を抜いて息を吐いてそう言ったあと、天海はまた寝転がってしまったのですわ。

それにしても何を言われると思ってそんなに緊張していたのでしょうか?

「ほんと?」

海星が目をキラキラさせて子供みたいに喜んでいますわ。

「いいのか?」

夏海人さんも疑心暗鬼ながら喜んでいるようですわ。

「ありがとう」

さやこさんは素直に喜んで天海にお礼まで言っていますわね。

「ありがとう」

空は無表情だけど嬉しそうですわね。

「そんなに簡単に。本当にいいの?」

わたくしは驚いて天海を見てそう聞いてしまったのですわ。

そんなに簡単にこの島の住人になることを許してもいいものなのでしょうか?

そもそもこの島は内緒の誰も知らない島のはずじゃないの?

なのにそんなに簡単に許していいのでしょうか。

それに空たちは人間なのに。人間がこの島に入るなんて許されることなの?

神聖な場所のはずでしょ。だって神の島なのだから。

この島に住めるのは天海に選ばれたものだけとかじゃないの。

「別に構わん。この島に住みたいというなら住めばいいだろ。この島はそう言う場所なんだ。この島を必要とするやつの」

そう気楽に天海は言いましたわ。

「それにお前たちには俺からもお願いがあるんだ」

そう言って天海はニヤリと嫌な笑い方をしたのですわ。何かを企む嫌な顔。

「なんですか?私たちに出来る事ならなんでもしますよ」

さやこさんは一切の曇りのない笑顔でそう返したのですわ。天海のあの悪い顔が見えていないのでしょうか?

「手伝ってほしいんだ。悪魔が2度とこの島を襲わないようにするために」

天海は寝転んだまま空たちのことを見てそう言ったのですわ。

「それは勿論、喜んで協力させてもらうが。1度家に帰っていろいろ準備をしたい。だから、今すぐには無理だ」

夏海人さんは天海の顔を見てそう言ったのですわ。

夏海人さんは誠実な人だからそういう事ちゃんとしたいのでしょう。

ってことはこの島に住むと言うのはちゃんと真剣に考えて出した答えなのでしょう。

それはきっと仕事もやめると言う事なのだから。

それを聞いて天海も驚いたように片方の眉を上げ、目を少し見開いたのですわ。

「あぁ。いいだろう。それにまだ俺にも分からないことがある。お前らがこの島に移住してくるころまでに調べておく。今分かっているのは、次の舞台は豪華客船ってことだ。その準備もしておけ」

寝転んだまま天海はそう言ったのですわ。でも、天海が自ら調べるだなんてね。

相当今回の事が頭に来たらしい。

この島に残れることわたくしもとても嬉しいですわ。

この島での生活、悪魔との戦い。

どれも刺激があって凄く楽しそう。

それを考えるとワクワクしてしまいますわね。

天海の顔を見てみると天海も同じようにワクワクしているようですわ。

だってとても楽しそうに笑っているから。

笑っているのはわたくしたちだけでなくさやこさんたちも楽しそうに笑っていますわ。

それに空も。

少しだけ口角を上げて。なんだかとても楽しそう。

少しだけど空の笑顔が見られて良かった。

この島でなら空が普通に笑う日が来るかもしれませんわね。

それも楽しみにしていましょう。


窓から外を見てみたらそこには青い空が広がっていて、まるでわたくしたちを歓迎してくれているようですわ。

「楽しくなりそうね」

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救いの楽園に迷い込んだ人の子 遥 かなた @haruka4869

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