5 悪魔が結界を壊す
空を再び見上げるとさらにひどいことになっていましたわ。
わたくしは本を読む空をずっと見つめていたのですが、ふと思い出して顔を上げて見てみたのですわ。
そしたら、結界に天海と同じ顔の悪魔が張り付いていますわ。
それもおびただしい数の悪魔が。
結界一面悪魔だらけでしたわ。
それは虫のようで寒気がいたしますわね。
これは結界が壊れるのも時間の問題かもしれないですわ。
そもそもこの結界はそんなに人が乗るように出来ていませんから確実に重量オーバーですわ。
周りの人たちもその光景を見てざわつきはじめていますわね。
こんなにみんながそれを見てざわついていたというのにわたくしが空に夢中で気が付かなかったみたいですわね。
でも、空も小説を読むのに夢中になっていて全然気づいている様子はありませんわ。
悪魔たちが光を遮っているせいで暗くなっているというのに。
「あっ」
空を見上げてわたくしはついそう声が漏れていた。
だって結界が壊れて悪魔が降って来たから。
いやーこれは怖いですわね。
いろんなところから悲鳴が聞こえてきますわね。
これはやっぱり戦わなければいけなくなってしまったわけですわよね。
どうしましょう。天海。早く来てよね。まったく。
とりあえず、悪魔が誰にも当たらないようにしておいたわ。
もし当たっていたらけが人が出ていたかもしれませんから。
結界の上にたくさんの悪魔が乗っていたからそれが落ちてきたら大変なことになるから。なかなかの高さがあるもの。
もはや凶器だから。
「天翔さん。悪魔が入ってきましいましたね」
空が本を読むのをやめてわたくしの近くに来てそう言ってきたのですわ。
やっと気が付いたみたい。空を見上げて結界が消えてしまったのを残念そうにしていますわ。
結界はキラキラ星になって消えた。ってそうじゃなくてキラキラ砂のように消えていったのですわ。
「そうね」
わたくしも空を見上げてそう言った。結界があった頃を懐かしむように。
「戦うんですか」
空は心配そうにそう聞いて来ましたわ。そりゃそうですわよね。いきなりこの島に連れて来られて神だとか悪魔だとか言われて、そのうえ悪魔と戦うだなんて言われても困りますし混乱するわよね。
「大丈夫よ。空はわたくしが守りますから。空が戦う必要はないわ」
安心させるためにそう言って空に向かって笑顔を見せたのですわ。これで空も安心ですわよね。
「?私は守ってくれなくて大丈夫。私には天翔さんの力が使えるんでしょ。なら、私も戦うから」
空はわたくしの方を振り向いて後ろで手を組んでそう言ったのですわ。何を言っているのか分からないといった顔で、首を傾げて。
半身で振り向いてこちらを見て、風で髪とスカートがなびいて夕陽の光を背にそう言ったのですわ。長い美しい黒髪をなびかせて。
相変わらず空は美しい。
はぁー好きだな。愛している。
守りたい。でも、空は守られるだけの存在ではないのは理解しているつもり。
「そうですわよね」
わたくしはなんか寂しくなって無理やり笑顔を作って空にそう返したのですわ。
ちゃんと笑えているでしょうか。
「うん。ずっと考えていたの。この力のこと。この力は私の力じゃなくて天翔さんの力だけど、それでも私にも力を使う事が出来るようになった。なら、その力を何に使うべきなのかなって。力があるものは力のないものに力を使うべきなのではないかなと思って。だから、私は自分の事は自分で守りたいし出来る事なら誰かを助けたりしたい」
空は夕陽を眺めながらそう言ったのですわ。
ちゃんと考えてくれていたのね。
それは嬉しいことなのですが、なんでこんな状況で?
周りには天海と同じ顔の悪魔がうじゃうじゃいてゾンビの様に島の人たちを襲おうとしているというのに。
ほら、目の前に悪魔が!
「空。危ないですわ」
悪魔が空の目の前まで来ていて空の事を襲おうとしていたのですわ。大きな斧を振りかぶって空を襲おうとしていた。
それをついわたくしは守ろうと空の前に出てしまいましたわ。
さすがにこれは空がケガをしてしまいますわ。ケガをしてもわたくしがいれば、すぐに直せるのですが。痛みはあるのでそんな痛みを空に味あわせたくはないんですわ。
でも、咄嗟の事でわたくしはバリアを張る事が出来なかったのですわ。
このままではわたくしが怪我をしてしまいますわ。
まあいいか。死なないし、ケガは直せばいい。痛みも消せばいい。
「天翔さん!」
もういいかと諦めていたら横からまさむねさんの声が聞こえてきたのですわ。
まさむねさんはその悪魔に足を引っ掛けて転ばせましたわ。
でも、そのはずみでまさむねさんの腕が切れてしまったのですわ。
「まさむねさん。大丈夫?」
わたくしのせいでまさむねさんをケガをしてしまって心配になってまさむねさんに駆け寄りましたわ。
でも、確かにケガをしたはずなのにまさむねさんの腕を見てみたらなぜか血は出ていなくてケガをしたようすはありませんでしたわ。
えっ?どういう事?
わたくしはまだ何もしていないのに。
空も心配そうにまさむねさんに駆け寄ってきましたわ。そして、空も同じく不思議そうにまさむねさんの腕を見つめていますわ。
それにまさむねさん自身も驚いて自分の腕を見つけていたのですわ。
ってことは吸血鬼がそうだとかそう言うことではないらしい。
一体どういう事なのでしょうか。
もしかしたら天海の仕業なのでしょうか。だとしたら、どんな力?
「まさむねさんの能力ってわけじゃないのですか?吸血鬼はケガが治るのが早いとか」
吸血鬼なのですから天海は関係なくそんなこともありえそうでしたから念のため確認してみることにしたのですわ。
「いえ。まあ確かに普通の人間よりはケガが治るのは早いですが。でも、これはケガしてないじゃないですか。だからそれは関係ないのではないですか?」
まさむねさんはわたくしの顔を見てそう不思議そうに首を傾げましたわ。
「確かにケガしたあとに治ったわけではないでしたね」
改めてまさむねさんの腕を見つめてそう言ったのですわ。
「そういえば、この島に来てからケガしてないですね」
まさむねさんも自分の腕を見つめて思いついたように顔を上げてわたくしのことを見つめてそう言いましたわ。
「へぇー。そうなの」
わたくしはそのことを知ってニヤリと笑ったのですわ。ついつい顔がニヤケてしまったのですわ。だって、分かってしまったから。なんとなく理解したのですわ。
なんか天海の秘密を知った感じで楽しくなったのですわ。
天海の秘密を知れる機会なんてそうそうないですもの。
まあでも、まだ確信があるわけではないですが。
だからあとで聞いてみることにいたしましょう。でも、正直に話してくれるでしょうか?
だったら、どんな手を使ってでも聞き出すことにしよう。
他の所でも戦いが始まってしまったようね。獣人村のあちこちから悪魔が襲い掛かる声や音。それからそれに応戦する声と音が聞こえてきますわ。
まさむねさんが言っていたとおりこの島の人たちはなかなかの力を持っているのですね。
妖怪さんも多いですものね。
天狗さんには神通力を持っていますし、吸血鬼は空を飛べたりしますし。あとは九尾の狐もなんか強そうですし。
人魚さんは海の中では無敵でしょうけど、地上ではどうなのでしょう。あと獣人さんたちは普通に腕がたつみたいですし。
農業をやっているから筋肉がついていてごつごつしていて見た目も強そうですわ。
それに天狗の神山さんからいろいろ武道を教わっているらしい。剣道とか柔道とか。
獣人の中には刀を持っているひともいますわね。
それと天狗の神山さんも大きな黒い刀を腰にさしていますわ。
だからまあそんなに心配することがないのかもしれませんわね。
この島の人たちも空と同じで守ってもらうタイプではないのかもしれませんわ。
ずっと自分の身は自分で守ってきたのでしょう。
このままではケガ人が増えてしまいますわ。
だから早く来てなんとかして。天海。
わたくしには限界があるの。
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