4 天海と凛
どうやら星ノ島で何かあったみたい。
あの女神様から神様に何か連絡があったみたい。テレパスでだから私には聞こえなかったけど、どんどん神様の顔が曇っていったから何かあったのかなって。
神様は私達とは違ってテレパスで会話するとき声に出したりしないんだよね。
「何かあったんですか?神様」
心配になって神様の顔を覗き込んでそう聞きました。
神様は急に起き上がって何やら真剣な顔になったから心配になったの。だって神様のこんな真剣な顔初めて見たから。
「どうやら、星ノ島に悪魔が現れたらしい」
そう言うと神様は立ち上がって結界の方に向かっていった。
「悪魔?」
「あぁ。それに一瞬だが嫌なものを見た」
そう言って神様は顔をしかめた。相当、嫌なものを見てしまったらしい。
一体何を見たんだろう。なんか苦虫を噛み潰したような顔だけど。立ち上がり結界の方に向かって歩いている時、私の前を通ったの。その時一瞬神様の顔が見えたの。
「何を見たの?神様」
その顔が気になって私は神様に聞いてみた。私は座っているから神様の事を見上げて後ろ姿に向かってね。
「あー。いや、まあ説明するのめんどくさいし行けば分かるだろ」
なんか神様イライラしているみたい。と言うか怒ってる?なんでなんだろう?その見えたものが原因だろうか。何を見たらそんなに怒るのかな?悪魔が島の住人に手を出したりしたのだろうか。怪我をさせらとか。だとしたら神様が怒るのも分かるけど。でも、神様ってそんな人だったっけ?そんな優しくなかったはずだけど。
「そうなんだ。ならまあいっか。それでどうするんです?この島に閉じ込められちゃってるんだよね?」
神様を見上げてそう聞いた。神様はなにやら結界に手を当てている。何してるんだろう。
「この結界を壊す」
そう端的に私を見ずに吐き捨てるように言った。神様は島中の結界を触れて何かを探しているみたい。
「結界って壊せるものなの?」
「まあなんとかなる。結界と言っても完璧なわけじゃない。どこかに必ず亀裂のようなものが存在する。そこをつけば簡単に壊れる。何にだって核が存在するものだからな」
そう言うと神様は結界をコンコンとノックし始めた。
それで核とやらを探しているのだろうか。核ってなんなのだろう。
うーん。よくわからないけど何となく分かったかな。
たぶん亀裂がどうのって言ってたしトランプを何段も重ねたトランプタワーだとするとその中の1枚を抜くと全部崩れてしまう。みたいなこと?かな。たぶん。
「まあそんな感じだ」
「えっ?あっ。そう。で、結界壊せそう?」
神様のところまでピョンピョン飛んで近づいて行き神様が何をしているのか気になって覗き込んでそう聞いた。
「どうだろうな。少し時間が掛かるかもな」
珍しく神様は自身なさそうにそう言った。結界を壊すなんてことはしたことがないのだろうか。
神様は大昔から星ノ島に居る。その前に何をしていたのかは知らないけど、少なくとも星ノ島に居る時は結界を壊しているところなんて見たことがないし。
初めてのことだからやったことがないからどうなるのか分からないから自信がなさそうに見えるのかも。
それから結界のあちこちを手で触れたり、叩いたりして回っていた。
何となく気になって私も神様について回った。
「ちっ」
約1時間ぐらい経った頃、神様がそう舌打ちして顔を歪めた。
何だろうと神様の方を見てみると腕から血が出ていた。
それはむしろあふれ出ると言った方がいいくらい出血していた。
「どうしたんですか?大丈夫ですか!大変。血を早く止めないと!」
その血を見て私は動揺して焦って右往左往してしまった。何かないかと辺りを見渡したのだ。血を止められそうな包帯とかハンカチとか落ちてないかと思って。
「あーこれか。これくらいどうってことはない」
神様は自分の腕を見てなんてことないようにそう言った。
「どうってことないって大丈夫なんですか。凄い血が出てますけど」
私は神様の腕から目を逸らして心配そうに聞いた。
だって血って苦手なんだもん。
なんか落ち着かなくなって心がざわざわしてしまうのだ。だから私は両腕を手のひらでさすって落ち着かせようとした。
「あぁ。大丈夫だ」
そう言うと本当に血が止まり、傷もいつの間にか消えていた。そうか。神様って神様だったね。そうだよね。神様なんだしそのくらいの傷治せちゃうよね。
「それよりこれはまずいぞ。早くしないとマジでやばいかもな」
傷は治ったと言うのに神様はなんだか焦っているみたい。どうしてなんだろう?
血止まったし、ケガ治ったよ?
何をそんなに焦っているんだろう。
それに1つ疑問があるんだけど。なんで神様はケガをしたんだろう?ここには何もないしそれなのに急に腕から血が出てケガをした。
どうやって?
「何があったんですか?」
ケガのことも気になるけどまずは何が知りたい。
こんなに神様が焦るなんて絶対何かあったんだよね。
「もしかしたら、悪魔との戦いが始まったのかもしれん」
神様は深刻な顔でさっきケガした腕を見つめてそう言った。
「どういう事?」
何のことなのかさっぱり分からない。
「いや、今はとりあえず早くこの結界を壊して星ノ島に戻るぞ」
そう言うと神様は再び結界に向き直り集中し始めた。そうなると私はもう神様に話しかけられなくなった。
だってすごく真剣な顔をしているんだもん。
今まで見たことのない顔だったからつい神様の横顔に見とれてしまった。
あー。私は神様の事が好きだなー。
異性としてなのかそうじゃないのか私にもよく分からないけど、とにかく好き。
私は神様の左側に立っているので左の顔が見える。
左目の青い瞳がなんだかキラキラと輝いている。集中しているからなのか力を使っているからなのか。でも、いつもは力を使っていても瞳がこんな風にキラキラと海や川や池のように水面がキラキラ輝いているように神様の瞳が光っているのだ。
なんて美しいのだろう。
「見つけた」
ボーっと神様の事を見つめていたら急に神様はそう言って悪い顔で笑ったから驚いた。どう見ても神様には見えない笑いかた。
でも、こっちの方がいつもの神様っぽい。
ニヤリと右の口の端をつりあげて笑っている神様はどちらかと言えば悪魔っぽい。
「凛。離れていろ」
神様はそうぶっきらぼうに私の方を見もしないで言った。
そう言われたので私は素直に従う事にして、私は海のところから出て砂浜の方に避難した。
「あーここだな。よし!」
そう言うと神様は結界に向かって拳を突き出した。と言っても軽く、拳同士を合わせて挨拶をするように結界に当てた。
まあ結界は私には見えないから何もない空中に向かって拳を突き出すちょっと痛い人みたい。
そして、軽く拳を突き出すと結界が音を立てて壊れた。
ガシャガシャガシャという音が聞こえて何かが崩れる音がした。
そして何かが頭の上から落ちてくる音が聞こえてつい手で頭を守るように隠して体を丸めてしまっていた。
でも、それは気のせいだったみたい。
つい情景反射で守ろうとしてしまったのだ。
「結界壊れたの?」
私には結界が見えないから本当に壊れたのか分からないのだ。
だから恐る恐る顔を上げて空を見上げてそう聞いた。
「ああ。結界は壊れる時砂のように消えるから怪我したりすることはない」
神様は私の事を呆れたように見ながらそう言った。
ため息でもつきそうなくらい。でも、仕方ないじゃん。そんなこと知らないんだから。
「そうなんだ」
とりあえず、そう返しておいた。というか他にどう返していいのか分からない。
「早く星ノ島に戻るぞ」
そう言うと神様は私の方に歩いてきて私に向かって手を差し出してきた。
なんかドキドキしちゃう。
って違うかただテレポートするためか。
他の人をテレポートさせるにはどこかが触れていなければ出来ないから。
なんかガッカリ。期待したのにー。
いや、そんな場合じゃないか。今、星ノ島が大変なことになっているみたいだし。
でも詳しく教えてくれないから何が起きているのかは知らないけど。とにかく何か大変な事が起きていることだけは分かる。
だから早く行ってあげないと。
私じゃなく神様が早く星ノ島に戻らないと。
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