3 神様が来るまで

島のみんなが獣人村に集まりましたわ。

なので、わたくしたちは獣人村の村長さんが居るところに向かったのですわ。

村長のいるところが獣人村の中心なのですわ。


島のみんなが獣人村に集まるころには島に悪魔たちが上陸してきていましたわ。

その光景はなかなか圧巻ですわ。

何人もの天海と同じ顔をした悪魔が島のあちらこちらから列をなしてこちらに向かってきているのですから。

なかなか気持ち悪い。

なんだかうじゃうじゃしている感じ。


「神様が帰ってくるまで私たちでなんとかしましょう」

まさむねさんがみんなの前に立ってそう叫んだのですわ。

拳を握り、天高く突き上げて。

なんだか政治家のようですわね。

「この獣人村に結界を張って悪魔が入れないようにいたします。それで天海が戻ってくるまでなんとか耐えましょう」

わたくしもまさむねさんの隣に立ちそうみんなに向かって言ったのですわ。

テレパスの応用であまり大きな声ではなくてもみんなに声が届くようにしましたわ。

あまり大声とか出したくありませんもの。

そしてわたくしは手を天高く掲げて獣人村に結界を張ったのですわ。

温かな光がわたくしの手から現れてそれが獣人村を包みましたわ。

獣人村は大きないくつもの岩に囲われていてその岩の中に獣人村が存在します。

これはもともとあったものらしいですわ。

この星ノ島は大昔、地図にも載っていた無人島だったものでそれに目を付けた天海がこの島を自分の島にして地図から抹殺したのだそうだ。

だからこの島はもともとあったものをすべてそのまま使っているみたい。

この獣人村を囲んでいる岩ももともとあってその中を村ということにしたらしい。

それをやったのは天海ではなくこの島の最初に来た人たちらしい。

天海は何もやらないから勝手に自分たちで決めたのだと聞きましたわ。


その岩に沿ってわたくしは結界を張ったのですわ。ちょうど目印になっていいですわね。

わたくしが結界を張るのを見て島の人たちは歓喜しました。

みな口々に美しいと称えたのですわ。

普通結界は目に見えないものですが、この結界は目に見えないようにはしていないのですわ。

なぜなら、この島の人たちは結界の事を知っていますし隠す必要がないですもの。それに理由はもう1つありますわ。それはより強度を高めるため余計な力を使わないようにしたのですわ。

これなら何とかなりかもしれませんわ。

結界を張ってしまったのでわたくしたちもここから出られないと言う事ですわ。

つまりは籠城戦ってことでしょうか。

ここならまあ寝るところもありますし、食べ物もなんとかなるでしょう。

と言ってもたぶんそんなに持たないでしょうね。

思っている以上に敵の数が多いですし、それに1人1人の力もなかなかある。

神憑きとなった今のわたくしの力ではそれほど強い結界は造れない。

神憑きとなると常に力が空たちに流れてしまっていますからわたくし本来の力を出す事は出来ませんわね。

なんとしてでも天海が来るまでは耐えて欲しいのですが。

それにしても、暇ですわね。

何もすることがないですわ。何しようかしら。


「海星さ~ん。暇だからお話しません」

九尾の狐のあげはさんが海星を見つけて手を振っていますわ。妖艶に胸を突き出して大きな胸を強調するかのように。

誘っているのだろうか。

まあそれがともかく、海星は手を振り返しあげはさんの方に小走りで近づいて行ったわ。

わたくしはあげはさんと喋ったことはないのですが、島の住人は全員把握していますわ。

笑顔で走って行ったということは海星は好意があると言う事かしら。

海星はなんだかんだ女の子が好きだよね。

男なら当然かしら。

まあそれにあげはさんですものね。惚れないほうがおかしいのかもしれませんわね。

九尾の狐ってそういう妖怪でもありますしね。

その美貌で権力者に取り入り国を崩壊させた。

なかなか恐ろしい妖怪ですわよね。

でも、美しく妖艶でその危険そうな雰囲気も彼女の魅力なのでしょうね。

九尾の狐。わたくしは好きなのですわ。もちろん、妖怪としてですわよ。女として好きだとかタイプだとかじゃないですわよ。たぶん。

そして2人はなにやら楽しそうに話をしていますわ。

なんかその楽しそうな顔を見ていると少し嫉妬してしまいますわ。

2人は立ったまま楽しそうに笑顔で談笑していますわ。

その光景を見ているととても悪魔が現れて襲われそうになっているとは思えませんね。


「夏海人。凄いな、この結界。結界の事はこの島にもあるので知ってはいましたが、見るのは初めてなんだ」

天狗の神山さんが夏海人さんにそう言って話しかけてきたのですわ。神山さんは空を見上げてわたくしの張った結界を見上げてなんだか嬉しそうにしていますわ。

「そうだな。凄く神秘的で美しいな」

夏海人さんも同じように空を見上げてそう呟いたのですわ。

なんだか星空を眺めているみたいですわね。

とても平和的でのんきな感じですわ。

本当に悪魔が居るのですわよね。

もしかしたら、悪魔なんていなくてただこの島に遊びに来ただけなのではないかと期待を込めて結界の外を見てみたけどやっぱり悪魔はいた。

天海と同じ顔の悪魔が何100匹も外にいてうじゃうじゃしていた。

そして、その悪魔たちは結界を壊そうと躍起になっているようですわ。

そうだよね。これは紛れもない現実。

悪魔がいて、この島に入ってきていてこの島の住人を襲おうとしている。

それから守るためにわたくしはこの結界を造った。決して見世物として造ったわけじゃない。

でも、多くの人がわたくしの結界を見て喜んでいますわ。

まあ確かに美しく綺麗ですわよね。

わたくしも空を見上げて結界を見てみたのですわ。

うん。温かな黄金色に輝いてわたくしたちを包むように覆われている。それはとても美しい。

夏海人さんと神山さんは近くの岩に座って話始めましたわ。

とても楽しそうに。

それにお弁当まで広げて食べ始めましたわ。

それはまるでピクニックのようでとても平和的でのほほんとしていて楽しそう。

これまた悪魔が現れた非常事態とは思えない光景ですわね。


「さやこさーん」

今度はさやこさんのもとに人魚の子達が元気よく手を大きく振って近づいてきたのですわ。

色とりどりの美味しそうな子達。

人魚さんはとっても可愛くていいですわよね。

人魚はいるとなんか楽園っぽい気がするのはなんでなのでしょう。

まあそれもどうでもいいことですわ。

人魚の子達とは1度だけアマビエ様を探している時、さやこさんと一緒に居るところに出くわして会っているのですわ。

あの時は少ししか話せませんでしたが。でも、とてもいい子たちだってことは分かりましたわ。見た目は派手な子ばかりですが、中身はとても仲間思い出優しい子達なのですわ。

「あら、どうしたの?」

さやこさんは人魚の子たちを見て不思議そうな顔でそう聞きましたわ。

「ほら今、暇でしょ。悪魔が入ってくるまでは何もすることないしー」

「悪魔が入ってきちゃったら戦わなきゃいけなくなるけど、それまでは私たち何もすることないんだよねー」

「それに神様が戻ってくるのを待っているんでしょー。結界が壊れるまでに神様が帰ってきたらあとは神様が全部やってくれるから、私たちはただ見ていればいいだけだし」

そう人魚の子達が口々にさやこさんに向かって言ったのですわ。

天海の事を信用しているのね。

天海が戻ってきてくれさえすれば何とかしてくれるのだと思っているってことですもの。

さやこさんは人魚の子達に連れていかれてしまいましたわ。

そして、水のあるところにいきそこで座って雑談を始めたの。

こっちも楽しそうで平和的。


「お母さんたち楽しそう」

なんだかうらやましそうにさやこさんたちの事を空が見てそう言ったのですわ。

「そうね」

わたくしはそんな空の事を見てニヤニヤしながらそう返しましたわ。

だって空が可愛いんですもの。

「でも、ちょっとのんき過ぎ」

そう言ってふてくされたように腕を組んでみんなの事を眺めていますわ。

「まあいいんじゃない。あまり深刻になっても待つ時間は同じですし、どうせなら楽しんだ方が有意義に過ごせるわよ」

わたくしも空と同じようにみんなを眺めながらそう言いましたわ。

「まあ確かにそうですけど」

空は友達を作ったりするのが苦手なんですわ。

学校でもいつも1人でいますもの。

表情がうまく作れなくなってからコミュニケーションが上手くいかなくなったみたいですわ。

それに空は可愛くて綺麗だから男子にはモテるのですが、そのせいで女の子からは妬まれてしまって友達が出来ないらしいの。

なかなか人間の世界はめんどくさくて難しいわよね。

「はぁ。とりあえず私も座って待っていよう」

そう言って空は近くの岩に腰を掛けて、リュックから小説を取り出して読み始めましたわ。

こういう時の時間のつぶし方を心得ていますわね。

普段から空は1人の時間が多いから慣れているのでしょう。

それに空は本を読むのが好きだし1人の時間も嫌いではないのでしょうね。

本を読んでいる空はなんだかとても楽しそうですしね。

その横顔はとても美しく愛おしい。

小説を読んでいるときはいつもより表情が豊かで時々笑っていることもあるのですわ。

だからわたくしは空が本を読んでいるのを見るのが好きなの。


「ってこれはさすがにちょっと引きますわ。それに少しまずいですわ。天海、早く来て。じゃないとちょっとやばいかも」









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