2 天海が動く
『天海様。聞こえますか。聞こえたら返事をください。神様。聞こえないのですか』
まさむねさんが天海にテレパスで話しかけてくれているがどうやら返事がないようですわね。まさむねさん自身がテレパスを使えるわけではなく天海の名前を呼ぶことで天海と連絡を取る事が出来るようなのですが。まさむねさんの名前は天海が付けたものらしくその名前で天海と繋がっているらしい。
「返事がないですね。何かあったのでしょうか」
天海からの返事がない事で不安になったのか心配そうにわたくしの顔を見てそう言ったのですわ。
「もしかしたら、距離が遠すぎるのかもしれないですわ」
この島の外に天海がいるのくだとしたら、まさむねさんでは届かなかったのかもしれないですわ。おそらくこの島の中での連絡を想定したものなはずですから、この島の外と連絡を取れるようには出来ていないのかもしれませんわ。
まあわたくしはよくは知らないので、予想でしかありませんが。
「そうなんですか」
「わたくしがやってみますわ」
「お願いします」
まさむねさんは真剣な顔でわたくしに向かってそう言ったのですわ。
『天海。どこにいるの?大変なの。早く星ノ島に戻ってきて』
海の果てを見つめてそう天海にテレパスで呼びかけたのですわ。
さっき島の全員にテレパスで連絡出来ましたし、あまりに遠いのでなければ可能なはずですわ。
『天、翔か。な、に、か、あった、のか?』
天海と連絡を取ることが出来ましたがなにやら雑音がひどくて少し聞き取りずらいわね。
『えぇ。島に悪魔が現れたの。早く来てちょうだい』
『わか、った。すぐ、行く』
こちらが雑音がひどいってことは向こうもわたくしの声に雑音が混ざっているのでしょうか?それにしてもなんでこんなに雑音がひどいのでしょう?
もしかしたら、何かフィルターが掛かっているのかもしれませんわね。たとえば結界のような。悪魔に結界を張られてどこからか出られなくされてしまったのかもしれませんわね。
「どうでしたか?」
不安そうな顔でわたくしの顔を見てそうまさむねさんが聞いてきたのですわ。
まさむねさんたちと違ってわたくしは声を出さなくてもテレパスを使うことが出来るので何を話しているのか分からないのですわ。
「天海と連絡がつきましたわ。すぐ来るそうよ」
結界に閉じ込められたくらい天海なら破壊することは出来るでしょうけど、でも結界を壊すのにどれぐらい時間が掛かるのか分かりませんわよね。そこが心配ですわね。それまでなんとしてでも持ちこたえなければいけません。
「どれぐらいで来れるのですか?」
「それが、悪魔に閉じ込められているらしいから。どれぐらいかかるか分からないの。天海の事だから結界を破ることは可能でしょうけど」
「そうですか。分かりました」
「まさむねさん。お願いがあるのだけど」
「なんですか?」
「獣人村にみんなを集めてくれない。一か所に集まっていた方が守りやすいから」
「分かりました。すぐに島のみんなに連絡します」
そう言うとまさむねさんは後ろを向いてテレパスで連絡をしていますわ。
まさむねさんはテレパスで島の全員に一斉に連絡を取ることは出来ませんが、島にいる各種族の長のような人物に連絡をしてその人から同じ種族の全員に連絡をして島の全員に連絡がいきわたるようにするようですわ。
同じ種族同士には何かしらの連絡手段を持っているみたいですから。
人魚や吸血鬼はイルカやコウモリと同じエコーロケーションという能力を持っているのでそれぞれは連絡を取り合う事が可能らしいですわ。
他の種族も島の中ぐらいなら連絡を取り合う事ぐらいなら出来るとのことですわ。
数人とならテレパスを使えるようにしているのかしら。あれは基本天海としか使えないはずなのですが。テレパシーを使えるのは神様だけなはず。
『まさむねです。獣人村に集まってください。島の住人全員です。みんなへの伝達よろしくお願いします』
そう言うとまさむねさんは再びわたくしの方を見たのですわ。
獣人村ならほぼ島の真ん中ですから。海岸から攻めてきているのですから出来るだけ真ん中にいるのがいいのですわ。
「それじゃあ、わたくしたちも獣人村に行きましょう。空たちも一緒に行きますわよ」
空たちのいる方を振り返りそう言ったのですわ。
「天翔さん。私にもテレポートって使えたりするの?」
さやこさんが好奇心いっぱいの顔でわたくしを見つめて手を胸の前で組んで聞いてきたのですわ。
そう言えばさやこさんはすでにテレパスを使っていましたわね。わたくしの力を使っているのですからもちろん力を使えば分かるのですわ。それにしても順応するのが早いですわね。
「えぇ。もちろん使えますわよ。さやこさんだけじゃなく、空も海星も夏海人さんも使えますわよ」
さやこさんたちを見回してそう笑顔で答えたのですわ。こんなに力を使うのに前向きな人はそうそういないわよね。怖くないのでしょうか。得体のしれない力が。
「おう!まじか。俺も使ってみてぇな。で、どうやるんだ?」
海星がワクワクした顔でそうわたくしに聞いてきたのですわ。海星も好奇心いっぱいの顔でとても楽しそうですわね。
「まず、行先の獣人村をイメージしてそのあとそこに飛んでいくイメージをする感じかしら」
わたくしは感覚でなんとなくやっているだけですから説明するとなると難しいですわ。
「なるほど。じゃあ、やってみるか」
そう言うと海星は目を閉じてわたくしが言った通り獣人村を頭の中でイメージしていますわ。
「よし!」
そう海星が叫ぶと、海星は次の瞬間消えていたのですわ。
どうやら成功したみたいですわ。獣人村を見たらちゃんといましたわ。あっでも、少し着地に失敗したみたいね。
頭から着地して頭をぶつけていますわ。
「じゃあ、今度は私がやってみよう」
そう言うと夏海人さんも目を閉じ獣人村をイメージしていますわ。
2人ともなかなか記憶力がいいですわね。ちゃんと獣人村の地形を把握していてちゃんとそれをイメージ出来ていますわ。
「おりゃ!」
そう叫ぶと夏海人さんも獣人村にテレポートしたのですわ。
夏海人さんは海星とは違って無事に着地出来たようですわ。でも、なぜか夏海人さんはバランスを取るように両手を広げていますわ。
「なら、次は私ね。空ちゃんは私が一緒に連れてってあげる」
そう言うとさやこさんは空を手を掴んで、海星や夏海人さんと同じように獣人村をイメージしたのですわ。
「よいしょっと!」
おばあさんのようにゆっくりとした口調でそう叫んだあと、さやこさんと空は獣人村にテレポートしていきましたわ。
あーでも、どうやら失敗したみたいですわ。
「って早く行って助けてあげないと」
わたくしはのんきにそう言ったあとテレポートでさやこさんと空のもとに向かいましたわ。
「さやこさん、空。大丈夫?」
さやこさんと空は獣人村の上空にテレポートしてしまったみたいですわ。テレポートするときのイメージは上空からのものだったみたいだから距離感を間違えてしまったのでしょうね。
「あっ天翔さん。どうしましょう?」
さやこさんは全然困っていない感じでそうわたくしに向かって聞いてきたのですわ。なんだかさやこさん、楽しそう。絶賛空から落ちていると言うのにねぇ。体を丸めて白いワンピースを風でなびかせながら落ちているのですわ。それでもさやこさんはとても楽しそうに笑っていますわ。
「天翔さん。なんとかなりますか」
空は空で黒いワンピースを風でなびかせながら落ちているのですが、空は相変わらずの無表情で冷静にそうわたくしに向かって聞いて来ましたわ。
ちなみにわたくしは空とさやこさんの間にテレポートしてそのままわたくしも2人の間にいて一緒に落ちていますわ。
わたくしはいつもテレポート先を透視や千里眼を使って確認したあとテレポートするので心配することはないのですが。
それを言っておくべきだったかしら?でも、時間がなかったから。
だから、まあいいか。わたくしが助ければいいだけの事ですしね。
「飛べばいいんですよ。取りのように」
なんかめんどくさくなってきてしまいましたわ。それになんかわたくしも楽しくなっちゃって。まあいいかなって。それに空たちならなんとかするでしょう。わたくしの力を使えることですし。
「なるほど。やってみます」
そう言うと空は体を丸めて目を閉じ集中したのですわ。そして、目を開け体を広げた時にはその背に綺麗な白い羽が生えていましたわ。白い羽は丸く空を顔を包むようになっていたのがバサッッという音と共に翼を広げ、大きく羽ばたきましたわ。
この羽は天使の羽ですわね。とても美しい。女神のようですわね。
ってわたくしが女神でしたわね。そういえば。わたくしは女神でしたわね。時々忘れてしまうんですわよね。自分が女神だってことなんか不思議で受け入れられていないのかもしれませんわ。でも、女神になって結構経つのですが。元人間ですから、その時の感覚が今でも忘れられないみたいですわ。
「お母さん。つかまって」
そう言って空はさやこさんに向かって手を伸ばしたのですわ。そんなにすぐに出来ちゃう空は凄いね。というか怖いレベルですわね。
「ありがとう!空ちゃん。それとごめんね」
さやこさんはそう言って笑ったのですわ。最後は少し反省したように笑顔を曇らせて。
「別にいいですよ。こうゆうの好きだから」
空は無表情でさやこさんに向かってそう言いましたわ。空もさやこさんと同じで高いところとか好きですものね。ジェットコースターとか観覧車とか遊園地が好きだからね。
でも、だからと言ってこの状況で楽しめるのはおかしいですわよね。
「ありがとう。空ちゃん」
そう言ってさやこさんは満面の笑みで嬉しそうに笑ったのですわ。
そうして無事に地上に降り立つことが出来ましたわ。
わたくしも天使の羽を使って空を飛び、無事地上に降り立ちましたわ。
ふわりと地上に降りたち、ワンピースの裾がふわりと舞い上がるのを抑える2人。その光景はとても美しく、後光が差していて天使か天女のようでしたわ。
ちなみに下には海星と夏海人さんが2人を受け止めようと両手を構えていましたわ。
そして、地上に降り立った2人をボーっと見とれるように見つめていたのですわ。
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